12/27 ヴェルナー・パントン展


@東京オペラシティアートギャラリー


「北欧・デンマークのプロダクトデザイナーでありながら、なんだか北欧らしくない」というのが、私がパントンに対して持っているイメージ。結構いるのではないでしょうか、そう思っている人は。

 たとえばウェグナーのように、天然素材を利用し、機能的で無駄をそぎ落とした家具などが、北欧デザインを代表するイメージなのがきっとそれでしょう。シンプルでナチュラルで、どこまでも自然に溶け込むかのようなプロダクトたち。

 パントンは、時代に合わせた素材をフルに活用して、そこから想像力を限りなく膨らませてモノをデザインしていました。そして、ランプや椅子、オーディオ家具、テキスタイルパターン、それだけに留まらず、人が生活する住空間全てを出来る限りのアイデアを尽くしてプロデュースしていったのでしょう。そんな彼のデザインに触れることの出来た今回の企画展では、プロダクトだけの展示ではなく、彼のデザインが形になった空間で彼の映像を見ることができ、そして何より、あのファンタジーランドスケープまで体験することが出来たのですから、日本国内で彼の作品に対するニーズは、以前からきっときっとかなりあったのでしょう。

 老若男女…というか、中でも若い男子たちが、まるで子どものようにランドスケープ内を嬉しそうに見て・座って・寝転んで、堪能している姿が印象的でした。

 企画展も終わりに近づいたブースで、70年代のパントンが映像で私たちに語りかけていました。

 「すごいと思うデザイナーはたくさんいるよ。でも、手本とする人はいないね」と。そして、北欧的というよりもむしろ、バウハウスを引き合いに出される彼に、インタビュアーはダイレクトにそのことについてどう思うか聞いていました。もちろん、彼はすごいとは思っても、意識したり手本にすることはない、と一言。デザイナーたるもの、何かを手本にする…なんてことはないでしょうし、何かの影響を受けていることについてどう思うか…なんて聞かれることだって、一体どうなのかしら?と思いながら見ていましたが、終始彼は笑顔。そして淡々と自分の考えについて語っていました。

 自分の作品についてあれこれ語る以前に、そのデザインを前にみんながどう感じてくれるか、プロダクトについてあれこれ議論が交わされることが何よりも興味のあることなのだと。「自分の作品を一瞬でもいいと思うこと」。これが彼がデザインすることにおける何よりの喜び。長く長く愛されるものを生み出すことよりも、(機能性は全てのベースにあることが前提で)よりユニークで、それまでの「モノ」に対する固定観念をいかに覆すことが出来るモノを生み出すことが出来るかというところに執着し続けた、非常にエキセントリックで同時代に生きたデザイナーよりも頭ひとつ飛び出した異端児。

 デザインのベースにこういう面が見え隠れしたパントンは、やはり北欧デザインの枠にとらわれない唯一無二のプロダクトデザイナーだったのでしょうね

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