3/31 エンディング・ノート

 アップリンクで見逃してしまっていたのですが、あのコアな映画館で上映中!とのことで、さっそく見てきました。

 段取り命!な、営業畑一筋だったお父さん。リタイアしてほどなく受けた健康診断で、まさかの末期癌の告知。余命は半年…。

 普通の人(偏見かもですが、特に男性)だったら、突然幕を落とすことになった自分の人生に落胆して、自暴自棄になるかなんかしてしまいそうなもの。しかし、お父さんは、残された自分の人生と、残していく家族のために、人生の幕引きを段取り始める。遺書のように効力も堅さもないそれは、エンディング・ノートと呼ばれる終末期の備忘録。

 ドキュメンタリーなんだけど、カメラをまわす監督はお父さんの娘さん。ということで、お父さんとのカメラごしのトークは、現実を目の当たりにした厳しさを持ちつつ、ときにユーモラス。絶望の淵にいてもおかしくなさそうな状況なのに、段取りを家族と確認したりして。

 癌発覚時にすでにターミナルステージだったお父さんの身体は、季節の移ろいと共に、みるみる衰弱していって、ものすごく痛々しい。でも、エンディングを段取るため、もう一度孫に会うため、気力を奮い立たせて、カメラの中でしっかりと生きている。


 フィクションよりも、ノンフィクションのほうが、時にドラマティックでファンタスティック。どんな絶望的な状況におかれても、思わず笑ってしまうような言動がスクリーンから零れ落ちて、すすり泣きの声が聞こえてた客席から、クスッと笑い声。

 すべての人のエンディングが、この一家のようにはいくわけではない。でも、誰にでも、どこの家族にも訪れる死。

 それが、明日突然かもしれないし、お父さんのように告知後半年かもしれない。もしかすると、死までの道のりが、気の遠くなるほどじわじわ長くてしんどいものかもしれない。

 それは、誰にもわからない。

 でも、こういった作品を通して、毎日をきちんと生きることが大切で、その積み重ねが、自分やまわりの大切な人達の記憶や気持ちを豊かにしてくれるんだろうな、と思ったのでした。

エンディングノート
 
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