集英社『残酷な王と悲しみの王妃』を読了しました。
あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
【目次】
はじめに
第一章 メアリー・スチュワート(スコットランド女王)
第二章 マルガリータ・テレサ(スペイン・ハプスブルク家)
第三章 イワン雷帝の七人の妃(ロシア)
第四章 ゾフィア・ドロテア(ドイツ)
第五章 アン・ブーリン(ヘンリー八世妃)
あとがき
【あらすじ】
王国の結婚は外交上の重要な切り札なので、恋愛などとはほど遠い関係性である。王女たちは幼い頃から未来の夫はすでに決められており、異国へ嫁げば二度と親兄弟と会うこともなく、王子を産むことが「義務」であり「仕事」であった。
【あらすじ】
王国の結婚は外交上の重要な切り札なので、恋愛などとはほど遠い関係性である。王女たちは幼い頃から未来の夫はすでに決められており、異国へ嫁げば二度と親兄弟と会うこともなく、王子を産むことが「義務」であり「仕事」であった。
単純に現代の尺度ではかることはできないが、そこに時代や文化、価値観の相違を超えた悲劇と悲しみがある。
ここでは五人の王とその王妃たちを取り上げている。
【感想】
それぞれ国は違うが、彼女たちの辿った道は、どれもあまりにも悲しく残酷で涙を禁じえない。自分の意志とはかけ離れたところで、実家や婚家、夫である王に翻弄され続けた人生。とても「平等」を謳う現代に生きる者には理解できない世界だ。
メアリー・スチュワートは「ブラッディ・メアリー」と呼ばれて、宗教の違いから徹底的に弾圧をしたことでも有名だ。カクテルの名前にもなっているのが皮肉と言えば皮肉かもしれない。
もし、(歴史にもしはないのだが…。)彼女がフランス王妃だったときに違う手立てをこうじていれば、歴史は大きく変わっていたのだろうか?
マルガリータは伯父であるオーストリア・ハプスブルク家のレオポルト一世妃となったのだが、彼女に流れる「ハプスブルク家の青い血」は平凡な人生を許さなかった。貴族の血を「青い血」と呼ぶのである。
スペイン・ハプスブルク家の王朝を、存続させるための妄執には背筋が寒くなる。近親結婚を繰り返した末に、心身共に問題の多いカルロス二世のような王を生み出してしまう。
カレーニョ・デ・ミランダ の描いた王の絵は、贔屓目に観てもどこか異様なものを感じる。
イワン雷帝は恐ろしい癇癪持ちの暴力的な王であった。クラシックバレエの題材にもなっているし、画家イリヤ・レーピンは怒りのために我を忘れて実の息子を殺してしまい、その亡骸を抱きながら茫然自失とするイワン雷帝を描いている。『イワン雷帝とその息子』だ。
ゾフィア・ドロテアは一生の三分の二を幽閉されて果てた。夫である王が策略を巡らし、美しい妃と将校の恋から死体が発見されない殺人事件が起こった。
アン・ブーリンは悪名高いヘンリー八世の二番目の妻である。彼女が王妃になりたいがために、正妃を陥れて妃になったと言われているが、本当にそうだろうか?
ヘンリー八世のその後の妃の娶り方、捨て方をみていると、どうもそうではないだろうと思う。最後は淫乱な悪女として、断頭台の露と消えるアン・ブーリン。
「これから皆はわたしのことを、首無しアンと呼ぶのだわ」と斬首が決まったときにつぶやいたという…。
「これから皆はわたしのことを、首無しアンと呼ぶのだわ」と斬首が決まったときにつぶやいたという…。
どの妃も運命に翻弄され続けた悲しい妃たちばかりである。彼女たちの夫:王とは一体、なんだったのか?
なにが怖いといって、人間ほど怖いものはないと再認識してしまう一冊だ。
でも、おもしろいのでおすすめしたい。
表紙はディエゴ・ベラスケスの描いた『ラス・メニーナス』。スペイン王家フェリペ四世の王女マルガリータを囲む宮廷の人たちが描かれており、絵の左端には巨大なカンバスに向かい、絵筆を持つベラスケス自身も描かれている。