新潮文庫 宮部みゆき『あかんべえ(上)』を読了しました。
あらすじと感想をざっくりと備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。
【目次】
あかんべえ 上巻
【あらすじ】
江戸は深川の料理屋「ふね屋」では、店の船出を飾る宴も終ろうとしていた。主人の太一郎が胸を撫で下ろした矢先、突然、抜き身の刀が暴れ出し、座敷を滅茶苦茶にしてしまう。亡者の姿は誰にも見えなかった。
しかし、ふね屋の十二歳の娘おりんにとっては、高熱を発して彼岸に渡りかけて以来、亡者は身近な存在だったー。この屋敷には一体、どんな悪しき因縁が絡みついているのだろうか?
【感想】
これは上下巻のうちの上巻なので、結末はまだわからないが、とりあえず上巻を読了した感想を記しておく。
宮部みゆきのお得意の江戸時代物、活発な女の子が活躍するのも鉄板。
作品名の「あかんべえ」はおそらく、ふね屋に出没するお梅という赤い着物を着た女の子の幽霊が、おりんに向かっていつも「あかんべえ」をしていることに関係していると思われる。お梅は井戸に転落して亡くなってしまったらしい。哀れな最後だ…。
ほかにも、笑い坊という按摩さん、玄之介という色男の若侍、おどろ髪という酒臭い乱暴をはたらく浪人風の男、おみつという色っぽい美しい女がいる。それぞれに言うに言われぬ事情があって、こうしてふね屋に亡者として居座っているのだろうが、まだそのへんはぼんやりとしている。おそらく、下巻できっちりと伏線が回収されて胸がすっきりとするのだろう。
最後のくだりで新たに出てきた疑惑、おどろ髪と料理人島次は本当に実の兄弟を殺したのか?どんどん闇が深くなっていく気がする。
相変わらず「宮部節」が全開。人の心の機微が時にほろり、時にぐさりとしっかり描かれている。これが作品に引き込まれる要因だと思う。
余談だが、このへんがきちんと描けていない他の作家の作品を読むと、「この作者は一体、何を書きたかったんだろう?」と思ってしまう。薄っぺらかったり、自己満足だったり、独りよがりだったりしていて、せめて世界観や風情くらいは感じさせて欲しいなぁ…としみじみ思う。