10代は休養“週3日”しっかり 宮崎隆司さんに聞く
2018年10月5日・東京新聞
◆サッカー強豪国・伊の実情
長すぎる練習時間が問題視されている中学・高校の運動部部活動。成長期の十代の体に過度な負荷となり、けがのリスクも高まる。過熱気味の部活動に、スポーツ庁も三月、「部活動は平日二時間、休日三時間程度」と上限を示した。一方、休養日をしっかり確保し、練習時間も短いのに成果を出している国もある。サッカーの強豪国イタリアの実情を著作で紹介したサッカージャーナリストの宮崎隆司さん(49)に、日伊の違いを聞いた。 (今川綾音)
宮崎さんは二十年前にイタリアに移住。八月に同国の子どもたちのサッカー環境を紹介した「カルチョの休日 イタリアのサッカー少年は蹴球3日でグングン伸びる」(内外出版社)を刊行した。練習内容、休養やけが防止の考え方、選手と指導者の関係など、日本とは違うイタリアの事情を詳しく紹介している。
イタリアには学校単位の「部活」がなく、サッカーは「街クラブ」と呼ばれる地域のチームで行う。六~十九歳までが参加でき、チームは一歳刻みで構成されている。
練習は試合も含め週三、四日で、休養日は週三日を確保。一日の練習時間も二時間に満たない。練習前には前回の疲れや、痛む部分の有無などチェックを徹底している。プロチームの下部組織も、十代のうちは週二、三日の休養日がある。これは、成長期の過度な練習はけがのリスクを高め、健全な発達を阻害するとして、「休養こそ最高の練習である」との考えが浸透しているためだ。
イタリアの子どもたちからは「もっとやりたい」「練習が物足りない」という思いがあふれ出ているという。宮崎さんは「長時間練習で疲弊していない分、集中して、頭を使って一つ一つの練習に臨める」とメリットを話す。
日本の部活でおなじみの走り込みもイタリアでは見られない。「試合で必要なのは考えながら走ること。一定の速度で走る力は試合では全く役に立たない」と宮崎さんはバッサリ。練習だけで体に相当な負荷がかかっているため、筋トレなども控えるという。
◆日本の部活動 週16時間超は控えて
日本スポーツ協会の認定スポーツドクターで、サッカー日本女子代表に帯同歴もある松田貴雄さん(55)は「中高生の段階のけがで、競技を続けることを断念する子は多い」と指摘する。練習のしすぎによる疲労骨折や、競技復帰のため手術が必要な膝前十字靱帯(じんたい)断裂などが典型例という。
国内では現在、中学生に「疲労骨折のリスクが高まるため、週十六時間以上の練習は控えてほしい」との指針がスポーツ庁から出ている。しかし、運動部に所属する公立校(国立をのぞく)の中学生をみると、男子は十六時間一分、女子は十六時間十四分(同庁・二〇一七年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果)と、十六時間を超えて活動する実態が分かっている。
海外では、中学生は一週間あたり、年齢と同じ時間(十三歳は十三時間)を超えての練習は、けがのリスクが高いため規制している国もある。また、体の同じ部位を長時間使い続けることを懸念し、カナダのように中学生に複数競技を行うよう義務付ける国もある。
松田さんは「単一競技を長時間やり続けることが最もけがのリスクを高める。けがなく競技を続けるには、長時間の練習をやめ、休養日を週二日は設ける必要がある」と話している。
2018年10月5日・東京新聞
◆サッカー強豪国・伊の実情
長すぎる練習時間が問題視されている中学・高校の運動部部活動。成長期の十代の体に過度な負荷となり、けがのリスクも高まる。過熱気味の部活動に、スポーツ庁も三月、「部活動は平日二時間、休日三時間程度」と上限を示した。一方、休養日をしっかり確保し、練習時間も短いのに成果を出している国もある。サッカーの強豪国イタリアの実情を著作で紹介したサッカージャーナリストの宮崎隆司さん(49)に、日伊の違いを聞いた。 (今川綾音)
宮崎さんは二十年前にイタリアに移住。八月に同国の子どもたちのサッカー環境を紹介した「カルチョの休日 イタリアのサッカー少年は蹴球3日でグングン伸びる」(内外出版社)を刊行した。練習内容、休養やけが防止の考え方、選手と指導者の関係など、日本とは違うイタリアの事情を詳しく紹介している。
イタリアには学校単位の「部活」がなく、サッカーは「街クラブ」と呼ばれる地域のチームで行う。六~十九歳までが参加でき、チームは一歳刻みで構成されている。
練習は試合も含め週三、四日で、休養日は週三日を確保。一日の練習時間も二時間に満たない。練習前には前回の疲れや、痛む部分の有無などチェックを徹底している。プロチームの下部組織も、十代のうちは週二、三日の休養日がある。これは、成長期の過度な練習はけがのリスクを高め、健全な発達を阻害するとして、「休養こそ最高の練習である」との考えが浸透しているためだ。
イタリアの子どもたちからは「もっとやりたい」「練習が物足りない」という思いがあふれ出ているという。宮崎さんは「長時間練習で疲弊していない分、集中して、頭を使って一つ一つの練習に臨める」とメリットを話す。
日本の部活でおなじみの走り込みもイタリアでは見られない。「試合で必要なのは考えながら走ること。一定の速度で走る力は試合では全く役に立たない」と宮崎さんはバッサリ。練習だけで体に相当な負荷がかかっているため、筋トレなども控えるという。
◆日本の部活動 週16時間超は控えて
日本スポーツ協会の認定スポーツドクターで、サッカー日本女子代表に帯同歴もある松田貴雄さん(55)は「中高生の段階のけがで、競技を続けることを断念する子は多い」と指摘する。練習のしすぎによる疲労骨折や、競技復帰のため手術が必要な膝前十字靱帯(じんたい)断裂などが典型例という。
国内では現在、中学生に「疲労骨折のリスクが高まるため、週十六時間以上の練習は控えてほしい」との指針がスポーツ庁から出ている。しかし、運動部に所属する公立校(国立をのぞく)の中学生をみると、男子は十六時間一分、女子は十六時間十四分(同庁・二〇一七年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果)と、十六時間を超えて活動する実態が分かっている。
海外では、中学生は一週間あたり、年齢と同じ時間(十三歳は十三時間)を超えての練習は、けがのリスクが高いため規制している国もある。また、体の同じ部位を長時間使い続けることを懸念し、カナダのように中学生に複数競技を行うよう義務付ける国もある。
松田さんは「単一競技を長時間やり続けることが最もけがのリスクを高める。けがなく競技を続けるには、長時間の練習をやめ、休養日を週二日は設ける必要がある」と話している。