何年前だったか、アサリの産地偽装が問題になったことがある。韓国産を国産として販売していた事件だ。 わが国におけるアサリの生産量は35,000トンといわれている。それに対し輸入量は2倍以上の77,000トン。しかし、スーパーなどに並べられているアサリのほとんどが、「国産」と表示されているのを見ると、その裏になにかカラクリがあるのだろうとの想像はつく。おそらく輸入したものを出荷調整するため、一時的に日本のどこかの浜で畜養していたのだろう。アサリにとって「浜」は「倉庫」のようなものだ。これを「国産」というには、あまりにも無理がある。 流通業界のイメージ戦略といってしまえばそれまでだが、アサリのような二枚貝はその育った時期と場所によっては体内に毒を持つことがあるので、この問題を簡単に済ましてしまうわけにはいかない。業界は正確な情報開示をしていく義務があるはずだ。一方、我々も産地ブランドに目を奪われず、ことの本質を見極めていく必要があるだろう。 BSE事件を発端にさまざまな食材で「産地偽装」が表面化してきたが、この時期注目したいのは、やはり鶏肉である。かつて、普通の鶏肉を「伊達鶏」とか「比内鶏」として偽って卸してきた業者はこんなことを言っていた。 「12月には鶏モモの需要が多くなり、比内鶏の供給が追いつかない。欠品にするわけにいかないので、産地を偽装して出荷した」 その背景には消費者のブランド信仰がある。自分の眼を、舌を信じて選ぶのではなく、皆がいいと言うから、あるいは、ラベルに書いてあるからという理由で選択しているのだ。 それと、もうひとつ問題がある。12月に鶏モモ肉の需要が高まるのは、クリスマスの関係だろう。言うまでもなく、クリスマスとは「キリスト」の「ミサ」のことで、キリスト教徒がイエスの誕生を祝う行事である。 日本では、「好きな男性に愛を告白する日」として、チョコレート業界に仕組まれたバレンタインデーも、名前だけはキリスト教に由来している。2月14日は、ローマ皇帝に迫害されて270年に殉教した聖バレンチノ司祭を偲ぶ日なのである。この司祭にお祈りすると、破れた恋も元に戻るという言い伝えがコマーシャリズムと結びついて、こんな日本的行事ができあがったのだろう。 いずれにしても、キリスト教徒ではない多くの日本人が、鶏モモ焼き・チョコレートといった食料を《買わされ》て、キリスト教に由来する国民的イベントに受動的に参加しているのだ。キリスト教信仰ではなく、ブランド信仰というところに日本の悲しさがある。 さて、産地偽装の話はこれくらいにして、今日は正真正銘・小田原産コジュケイのモモ焼きの話をしよう。 あれは、まだ28か29歳の頃だった。ある日、仕事上の先輩からコジュケイを2羽もらった。それは鉄砲打ちの彼が小田原の山林で獲ったものだった。空を飛ばず地面を歩いている鳥だけあって、スケートの清水選手のようなモモをしていた。 さっそく解体方法を調べるため図書館に向かった。そこで借りた明治5年発行の『西洋料理指南』には、こう書かれていた。 「…咽を半ば剪り、血を絞り、熱湯を注ぎ羽毛を去り、胴の際より首を絶ち気管を余し置き、肛門を断却し上部下部の断却せし所より指を差し入れて、胃腸肝肺等の諸部分を脱し去り…云々」 こりゃあ、私には無理だと思い、できそうな応援を呼ぶことにした。電話をすると、信州の山奥に住む作治さんがすぐに来てくれた。 ところが意に反して、彼は鳥を捌いたことがないと言うのだ。結局なにもせず、松原商店街で買ってきた肴でたらふく呑んで帰っていった。 ひとり残された私は仕方なくお湯を沸かし羽毛の除去に取りかかった。熱湯に漬けると小さな羽根は簡単に抜けるのだが、大きいのはなかなか難しい。ちょっと引っ張ったくらいでは、鳥皮がグニュっと伸びるだけで非常に気持ち悪い。 結局、すべての毛をむしるのは諦めて、モモを切断することにした。これは関節の部分に出刃包丁を入れ、思いっきりぶったたいたら、意外と簡単にとれた。 続いてモモと足首を切り離さなければならない。しかし、これが難しい。出刃でいくら叩いても切断できないのだ。仕方なく足首・指付きのままローストすることに。 午前1時頃、コジュケイのモモ焼きが完成した。1本はその場で食し、残りは翌日の弁当箱に入れた。ところが足首・指が邪魔してちゃんと収まらない。蓋から爪が出たまま持っていったら、まわりの人たちがビックリしていた。 胴体の方は、切り裂くことがどうしてもできなかったので、鶏好きのオバさんにあげた。彼女は「あらあ! 美味しそう!」と大喜び。自宅に持ち帰り解剖して丸焼きにしたそうだ。 胴体の方を食べられなかったのは残念だった。こんど入手する機会があったら、きれいに解体して調理しようと思っている。 ←素晴らしき横浜中華街にクリックしてね |
どうも鶏さんの解体は…。
うちにオカマインコ(笑)がいますので、
もみじの料理を見るだけでぎゃ~~~!(爆)
昨日も父ちゃんがクリスマスにローストチキンを作ると言い出したので
ビーフの方が私してには姿を想像しなくて良いんだけど~って言ったら、
クリスマスにはチキンだろ~!
オカメインコの横でチキン食べるの~?
私…パス!
そうでするなぁ。。。
こんな世相を反映してか、中華街の「広東飯店」では、その日使う野菜類の原産地を書いた紙を玄関に貼り出していまする。
感じたままに少し失礼します。
日本より食にこだわりそうな(?)台湾では実はスーパーマーケットが非常に少ないです。
発展途上なのではなく、あまり人気が無いようです。
昔ダイエーもヤオハンも進出したことがありますが、
すべて撤退しています(今は地元資本とカルフールが店舗展開しています)
ほとんどの台湾の主婦のみなさんは市場で買い物をします。どの家庭にも「馴染み」の八百屋さん・魚屋さんがいて、丁々発止値切りの応酬をしながら毎日の食材をそろえています。同じ種類の魚や野菜でも、個体によって質はバラバラです。ですから「騙されまい」ということで、食材に対する目利きの能力は自然と磨かれていくわけで。
対する日本はスーパー王国です。
IYとかイオンとか企業を信頼しているので主婦のみなさんは食材個々の良し悪しよりも文字で書かれた表示のみ見て購入しがちです。しかも親から子へ目利きの知恵が受け継がれないため、トンチンカンな購入をする方々も多いです。
たとえば無着色のタラコを「色褪せている」と敬遠してわざわざ赤く着色されたタラコを選んだり、保存料無添加の肉製品を「すぐ腐る」と言ってクレームつけたり。また、農薬に対する意識は高くても、有機栽培野菜に寄生虫のいる可能性については全く無頓着の人も見受けられます。
もうちょっと消費者自身が賢くなれば、業者側が偽装したくてもできない世の中になっていくと思います。
そういえば昔、高島屋の物産展で「天然クロマグロ」のトロを食べたお客さんが偽者(高島屋も騙された養殖物だった)を見破ったことがありましたね。報道に実名は出ませんでしたが、私は彼を尊敬します(笑)
また、たとえマルのままで売っていても、イワシとサバの違いが分からなかったりする若い女性もいるようで…
困ったもんだ。