私を選ぶか、それとも私を取り除いた全世界を選ぶか?
そんなキチガイじみた二者択一を、ある人たちは突きつけられている。
この感覚は、まさに出産以前の胎児の感覚である。
なぜなら胎児は母体なくしては、存在し得ないからだ。
実は胎児がお産によって母体外に排出され、自発呼吸を始めるときに、この選択を否応なしに迫られるのだと思う。
これは、物理的な母子分離である。
そして、思春期に恋や友情を経験するときに、この選択を迫られる。
家族という疑似母胎を離れて、ギャングエイジの頃の子供集団を経て、気の合う親友や恋愛の相手と、二人の世界を作るか否やの選択の時にである。
このときに精神的な母子分離を経験するのである。
実はここで対象移行が行われるのである。
母親と結んだ排他的契約を家族に移行させ、それを子供集団に移行させ、さらに親友や恋人に移行させる。
この排他的契約の移行に際して、健常者は無意識下で静かに行われる。
が、ある人々にとっては、それを意識の上にのぼせて、シンボル操作をしなければならない。
あまり結合が強力である場合は、物理的な親殺しも起こるであろう。
この結合対象の移行は、ウィニコットの著作に詳しい
とりあえず、何やら、私と世界のどちらを選ぶ?
などという、けったいな人間関係の選択に悩んでいる人に向けて、この文章を書いてみた。
以上である。