知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「ルポ 原発作業員2」

2014年08月11日 06時55分05秒 | 原発
ルポ 原発作業員2 ~事故から3年 それぞれの選択~
NHK ETV特集、2014.8.2放映



番組紹介
 40年ともいわれる「廃炉」への道を歩み出した福島第一原発。その現場を支えているのは 1日あたり5,000人といわれる原発作業員たち。しかし、その日常が報道されることは少ない。
 彼らは、いまどんな思いで、それぞれの仕事に向き合っているのだろうか。
 ETV特集では、2年前に「ルポ 原発作業員~福島原発事故・2年目の夏~」を放送。
 その後も、地元福島の下請け企業の協力を得ながら、彼らの日常を記録し続けてきた。
 事故から3年たったといえ、現場には高線量の汚染エリアがある。作業員の被ばく限度は5年で100ミリシーベルト。増え続ける線量をいかに抑えるか、困難な試行錯誤が続いている。
 一方、コスト削減圧力の中で下請企業の経営環境は厳しくなり、作業員の待遇はじわじわ悪化しているという。原発を避け、割のいい除染などの仕事に切り替える作業員たちも出てきた。
 ことし4月に放送したNHKスペシャル「シリーズ廃炉への道 第2回 誰が作業を担うのか」で放送した内容に、作業員たちへの長期密着ルポの映像を加え、廃炉現場の実態に迫る。




 前項はチェルノブイリの作業員の話でしたが、今回は日本の1F(いちえふ:福島第一原発を指すスラング)で働く作業員に焦点を当てた番組です。

 「あっ、この人達見たことがある」

 前回の「2年目の夏」を私は見ていたのでした。
 その時の作業員の表情は明るく鼻歌交じり。
 不思議に思って観察していると、どうやら報酬がよいらしい。
 1日数時間以内の作業で月給40万越えなので顔がほころんでいるのだと思わざるを得ない展開でした。

 しかし今回の番組では、その表情が曇り、原発での仕事を辞めていく若者も出てきたという内容に変化していました。
 理由は報酬の減額。
 国と東電は廃炉作業の費用を節約するために競争入札制度を一部導入しました。
 すると価格競争が発生して安く請け負う下請け会社に発注することになり、末端作業員の賃金は低く抑えられる傾向になります。
 マンパワー確保が難しくなってきて国は競争入札制度を縮小し、さらに1日の報酬を1万円上乗せすると発表しました。
 しかし、受注金額に組み込まれるため、一次・二次下請けで吸収・拡散し末端作業員に回るのは1000円の上乗せのみ。
 「90%ピンハネされるなんて、バカバカしくてやってらんない!」
 今や原発作業員の報酬は除染作業とあまり変わらなくなり、被曝のリスクを冒してまで選択するメリットがなくなったのです。

 番組の中で、ひたすら「お金」の事が取りあげられました。
 廃炉作業の本質、“やりがいを感じにくい仕事”ということが見え隠れします。
 当初あった「社会の役に立っている」というささやかなプライドは消え去り、何も生みださず、自分の体が汚染される仕事に、心が疲弊してしまう様子が見て取れました。

 石原環境大臣が「最後は金目でしょう」とコメントして物議を醸しましたが、悲しいかな現実はその通りなんだ、と感じました。

 チェルノブイリでは今でも作業員の報酬は高額で、地域の他の仕事の2倍程度と前の番組で知りました。
 「お金のためにここで働いている」と開き直る作業員達。
 日本と違うところは、女性が多いことと、ウクライナ国内だけでなくポルトガルやドイツなどの外国からの出稼ぎ労働者がいること。

 30年後の日本も同じ状況になっているかもしれません。
コメント
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