明日から開幕するドーフィネ・リベレのディフェンディングチャンピオン、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)が、ドーピングスキャンダルのオペラシオン・プエルトへの関与によって全世界で2年間の出場停止処分を科せられることが決まりました。これによってバルベルデは、2011年12月31日までレースに出場できなくなります。この制裁はスポーツ仲裁裁判所(CAS)によって言い渡され、2010年1月1日からの適用となるということのようです。
当初、バルベルデの出場停止は、イタリア国内のレースのみが対象でしたが、UCIはこの処分に関しての声明をすぐに発表し「CASの決定によって、バルベルデは、2011年12月31日までいかなる自転車レースに出場することが許されなくなった。それに加え、(処分の適用が今年の1月1日からの為)今シーズン開幕から彼が出場してきたレースは全て失格扱いとなり、UCIポイントも剥奪される。そして、バルベルデは、今年のレースで得た全ての賞金を返却する必要がある。UCI世界ランキングも修正されている」と述べています。
バルベルデは、最初に出場停止を下されてから、ずっと異議申し立てを行いながらレース参加を続けていましたので、実質的に彼がレースに出場できないのは19ヶ月ということになります。しかし、UCIは、今シーズンに彼が達成したツール・ド・ロマンディ総合優勝、パリ~ニースの総合2位といった栄誉を奪う予定です。また、バルベルデは1位だったUCI世界ランキングからも除外され、代わりにカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)が首位に浮上しています。
オペラシオン・プエルト(Operacion Puerto ”港”作戦)は、2006年にスペイン国家警察が行ったドーピング摘発作戦のコードネームです。この事件は2006年のツール・ド・フランス直前に勃発し、今年のジロ・デ・イタリアの優勝者イヴァン・バッソやヤン・ウルリッヒといった有力選手が揃って出場辞退を余儀なくされ、ロードレース界に多大な影響を与えました。
事件は2006年5月23日、スペイン人の医師エウフェミアノ・フエンテスを始めとする数名が国家警察に拘束されたことに始まります。容疑はドーピング。報道によれば、フエンテス医師らはスポーツ選手の血液を事前に採取しておいて競技直前に選手の身体に戻す、いわゆる血液ドーピングを行っていたとされ、フエンテス医師のアパートから200個ほどのサンプルが発見されたというのです。そして、この医師と関係があったとされたロードレースの選手の名前が50以上も公表される(押収された試験管、資料には選手の名前ではなくコードネームが書かれていた)とになります。この中にアルベルト・コンタドールの名前もあったのです。
この結果、ツール・ド・フランスの主催者はこれらの選手の出場を拒否。ヤン・ウルリッヒやイヴァン・バッソら優勝候補が出場出来なくなるという異常事態となったわけです。ところが事件の捜査はその後ぱったりと進捗を見せなくなり、事態は更に混迷の度を深めてゆくことになりました。時間経過とともに明らかとなったのは捜査態勢のずさんさや、そうした情報を鵜呑みにした競技団体の場当たり的な姿勢であした。また国家警察が名前を公表した選手たちについても、容疑を固めるには証拠が不足していることから、30人前後が競技に復帰しました(勿論、この中にコンタドールも含まれています)。一方でヤン・ウルリッヒは現役引退に追い込まれることになりました。
あれから4年の歳月が流れ、UICから出場停止処分を受けたバッソはレースに復帰し、今年のジロ・デ・イタリアで2度目の総合優勝を果したことは記憶に新しいところです。また、今年のジロ・デ・イタリアで途中までマリアローザを来ていたヴィノクロフも2007年のツール・ド・フランス期間中に血液ドーピングが発覚し2年間の出場停止から復帰したひとりでした。そして今年はバルベルデまでもが出場停止処分を受けることになってしまいました。
6月11日付けのAFPが伝えたところによると、「ベルギーの自転車プロロードレース選手、トム・ボーネン(Tom Boonen)は10日、コカインの陽性反応が検出されたことを受け、14日に開幕する第72回ツール・ド・スイス(72nd Tour de Suisse)の主催者から同大会への出場が禁止された」ようだ。
今年はここまでドーピングの大きな問題もなく、自転車ロードレース界のドーピング問題も下火に向かっているように見えていた時期だけに大きなショックを受けることになってしまった。
それもコカインの陽性反応というのだから、事実ならとんでもない話だ!!
昨今はレースや大会以外での抜き打ち的なドーピング検査が平然と行われる風潮にあるようで、選手のプライバシーを考えると同情もしたくなる状況なのだが、事実こうした結果が出てしまうと、抜き打ちドーピングもやむなしという風潮になることは間違いない。
サブタモールのような治療薬ではなくコカインというのだから、ボーネンの選手生命もここまでだろうと思っていたら、レース外ドーピング検査での陽性反応のため、UCI(国際自転車競技連盟)やWADA(世界アンチドーピング機構)による処分は無いとのこと・・・
クイックステップのパトリック・ルフェーブル監督はボーネンを擁護する姿勢を見せ、2008年末で切れるボーネンの契約を3年間延長することを発表している。
謝罪記者会見には顔を見せたボーネンだが、コカインを摂取については一切言及しなかった。
ベルギーではコカイン摂取は違法ではないのか?あるいは現行犯でなければ裁かれないのか?
青少年の薬物使用が世界的に問題になっていることを考えればこんな形式的な謝罪記者会見でお茶を濁せる問題とは思えないのだが・・・
ASOがこの問題を受けボーネンのツール・ド・フランスへの出場を禁止した。こうした措置ならファンは納得するのだが、アスタナの参加拒否は未だに納得ができずにいる。
ドーピング問題で無関係な選手にまでその類が及ぶような措置は取るべきではない。チームとしての責任を問うのなら選手にではなく管理者に問うべきだ。
高校野球で選手の暴力問題があるとそのチーム自体が出場できないのと同じだ。他の選手には何の罪もないのに・・・
それにしてもテストステロン、血液ドーピングの次はコカインとは・・・ボーネンの愚考のために迷惑を蒙る自転車ロードレーサーはいったいどのくらいになるのだろうか?
個人的にはこうした選手こそ問答無用で切り捨てる決断をしなければ、失墜した自転車ロードレース界の信頼を取り戻すことなどできはしない!!