今では普通の自転車を上回る販売台数を記録している電動アシスト自転車ですが、これまで個人的には極力避けて来た自転車でした。というにも、自転車は自分の脚とハートで走る物という意識が強いためでした。
且つてファビアン・カンチェラーラというスイスのロードレーサーがいました。彼があまりに速く走ったため、バイクにモーターが仕込まれているという噂がまことしやかに囁かれたことがありました。以降、UCIはバイクのX線検査をするようになっている程だったのです。
こうした経緯もありロードバイク乗りの矜持が、電動アシスト自転車を拒んでいたのです。今では国内の街乗りだけでなく、世界の一流メーカーからもクロスバイクやMTBタイプの電動アシスト自転車が続々と発売されるようになっています。私も試乗会などで度々目にするようになりましたが、意図して試乗はしないようにして来ました。
電動アシスト自転車のメリットは十分に理解しています。登りが苦手な私が一度手にしてしまえば、モーターの無いロードバイクには戻れなくなるかも知れいないという意識が強くあるからでした。ただ、私が一度も電動アシスト自転車に乗ったことが無いかといえば、そうではなく、ロードバイクに乗るきっかけを作ってくれたのが、実は電動アシスト自転車だったのです。今から十数年前のことでした。
当時、自転車通勤仲間が買ったPanasonicのJeterという電動アシスト自転車に一度乗せてもらったことがあるのです。当時としては珍しいクロスバイクタイプの電動アシスト自転車で、タイヤも32Cを履いていたと思います。当時28Cタイヤを履かせたクロスバイクより軽く走れたことを今でもハッキリと覚えています。それだけ強烈な走り心地だったのでしょう。
当時、Jeterに魅力は感じたものの、その時は30万円を超える電動アシスト自転車の魅力というより、30Cのタイヤでこの走りなら、タイヤが23Cのロードバイクならどんな走りができるのだろうというものだったのです。ロードバイクなら10万円ほどで買えるという気持ちもあったと思います。結局、一冬考えに考えてGIANTのロードバイクTCR2を購入したのです。
ロードバイクに乗り始めると、電動アシスト自転車は眼中に無くなりました。どんなに登りが苦しくてもモーターのアシストがあればと考えることもありませんでした。それだけロードバイクは私にとって軽快で魅力的な乗り物だったのです。苦しい坂も諦めなければいつか登り切れると思えたからですし、実際にそうして来られたのです。