『ポガチャルのトリプルクラウン考える』という記事を書き進めている間に世界選手権のメンバーが発表されています。最初はベルギーでしたが、スロべニアが驚きの代表メンバーを発表しました。何と今年Wツールを征したポガチャルに加え、先日ブエルタで4度目の総合優勝を挙げたばかりのログリッジの名前があったのです。
今年のスロベニアのメンバーはプリモッシュ・ログリッチ(Red Bull-BORA-hansgrohe)、タデイ・ポガチャル(UAE Team Emirates)、ドメン・ノヴァク(UAE Team Emirates)、マテイ・モホリッチ(Bahrain Victorious)、マテヴジュ・ゴヴェカル(Bahrain Victorious)、ルカ・メズゲッツ(Team Jayco AlUla)、ヤン・トラトニク(Team Visma | Lease a Bike)の7人です。
これは強烈なメンバーです。UCI世界ランクのTOP10にエヴェネプール、フィリップセン、ファンアールトがいるベルギーですが、ワウトはブエルタの怪我で出場しませんし、コース適正を考えてフィリップセンが選ばれていませんから、世界1位のポガチャルと5位のログリッジが揃うスロベニアは一気に有利な状況になりました。ログリッジは個人TTがメインになるのかもしれませんが、ロードのメンバーにログリッジがいるのといないのとでは全く状況が変わってくると思っています。
グランツールで勝利できるエースが2枚もいるのですから、他国のメンバーとしてはポガチャルのマンマークが出来なくなってしまうからです。ベルギーもティシュー・べノート(Team Visma | Lease a Bike)、ティム・ウェレンス(UAE Team Emirates)のようなアシストはいますが、ワウトを欠く今回の大会はオリンピックのようにはいかないと思っています。
エヴェネプールVSポガチャルという構図がログリッジの参加で成立しなくなりました。ログリッジがアシストに徹するのであれば、ポガチャルの優勝の確率は相当高くなるはずです。アシストもポガチャルのチームメイトのノヴァクに加え、ヴィスマのトラトニックにバーレーンのモホリッチと揃っているので、強力です。
スロベニアとしてはオリンピックにポガチャルとログリッジ抜きで戦い惨敗したことを受けてのメンバー構成になったと思います。エヴェネプールに金メダルを独占されたままでは終わらせないという覚悟か感じられます。
個人TTでエヴェネプールを負かすのは容易ではありませんが、これでロードレースでのスロベニアの勝利はかなり近づいたのではないでしょうか。ただ、ログリッジはブエルタからの間隔があまり無いので、コンディションの問題はあるでしょう。ここへ出て来るというのはポガチャルのアシストに徹する覚悟があるということなのかもしれません。
2020年はコロナ禍で当初予定されていたスイスで開催が出来ず、代替えでイタリア開催になった大会でしたが、ポガチャルとログリッジが揃って出場した直近の大会でした。ただ、新型コロナの影響でツールの開催が8月末に延期されたことで、ツールで総合優勝を飾っていたポガチャルは中1週という厳しいスケジュールとなり大敗しているのです。この大会はアラフィリップが勝ち、ログリッジは6位でした。
あれから4年の歳月を経て、ジロとツールで4度の総合優勝しているポガチャルと、ジロとブエルタで5度の総合優勝しているログリッジが久々に一緒に走ることになります。ツールではライバルでしたが、今回はチームメイト。ログリッジの経験はポガチャルにとっても非常に大きく頼もしいものだと思います。
スロベニア人として初めてグランツールのブエルタを征したログリッジの背中を追いかけるように、自身も初参加のブエルタで3位表彰台、翌年はそのログリッジを最後の個人TTで大逆転してマイヨジョーヌを手にすることになったポガチャルですが、「彼の最初のレースから、私はログリッチのファンだった。15歳から20歳の間、私は彼が勝つためにテレビの前で叫んでいた。」というのです。
ポガチャルが初めてマイヨジョーヌを獲得した時はスロベニアではログリッジがスターでした。母国のスターを負かしてしまった若干20歳のポガチャルは複雑な心境だったのではではないでしょうか?ただ、この二人は共にモナコに住み、一緒にトレーニングをすることもあるそうです。
そんなスター交代のドラマの直後に行われた世界選手権ではポガチャルが果敢なアタックを見せ、厳しいレース展開に持ち込むもツールからのレース間隔が無かったこともあり、結果は残せませんでしたが、今年はポガチャルがジロとツールを、ログリッジがブエルタを征しているスロベニア勢は強烈です。ツールでビッグ4と呼ばれた二人が同じチームにいるのですから。