居間塵(imagine)

居間塵、と書いて、イマジン。その日その時、流れゆく時の川から、思いつくままに掬いあげる。絵図とポエムの棚

電車道

2012-11-10 19:58:50 | ポエム

電車道

 

夜の9時頃に
なんとなく散歩する
人通りのない電車道
空気が冷えてくると
よれよれのアスファルトに
だんだん近づいてくる
ハイヒール
コンなのかカンなのかケンなのか
若い歩幅がおいついてくる
コンコン カンカン ケンケン
昔 戀をしていた時
待ち焦がれたおとだ

戀をおいてきぼりにした今
コンカンケンをあつめて
コツコツ コツコツにビブラートがついて
いい音がするものだと
ほれぼれしていると
しせいのいい赤い薔薇が
おいこしていった

たちどまって
星の少ない夜空をみて
またビブラート付きのコツコツコツに
傾聴する

電車はこない電車道を
かたちだけ残っていた戀の手をひいて
道連れにしてあるく
ベートーヴェン・ピアノソナタ「月光」が
いいねえ きれいだねえ 

ほんとうにそうでしょうかねえ


白いゆび

2012-11-07 14:45:29 | ポエム

白いゆび

 

へやがくらいので
ゆびがかがやいて

いつものうえで
よこのほうこうにひかる今夜のほしたちが
へやのかべのうえで
つめたいエアーのちぶさになる

それからすこしのあいだ
とりたちがベッドのうえで
はしやいで
ひとすじのしせんをくぎづけにする

あさまでのひとりぼっちのページのうえでも
はねまわる

そらのいちばんふかいところは
いまたくさんのひえた溶岩が
いってんをめざして
ふりそそいでいるとしたら
その光年のながさは
こんなちいさなひとりぼっちのへやまでは
とどくこともないが
たったいちどでおわる
いきもののいのちのまえにでてきて
もえつきるのが
見たい

ひとりぼっちの空間に
なにかが
ただよってくるけれど
めにはみえない

幻影はないほうがきらくだ
強力脱臭剤でも撒こう


家族

2012-10-31 16:21:17 | ポエム

家族

 

一軒の家にすんでいるとはかぎらない
一軒の家からはじまったともいえない
二軒の家からはじまることもある
誰か一人がでていってかえってこない
するとまたもうひとりがもんくをいい
そいつもでていってしまった
それでもまだ家族は居残りして
おマンマをたべるためにはたらいている
クリスチャンは規律があるので
そうかんたんにはでていかないが
佛さんはいっさい平等だからなにもとがめない
だいいちこの世はクウなんだから
みえているものもみえないものも
ふたつもみっつもかさねても
あるけれどもないし
ないけれどもあるし
ゼロよりもおおきくてもちいさくても
すべてはゼロだという
そんなせかいには家族ははじめからいないのだ

家族のひとかずがへるとそのぶんだけ
新しい家が必要
いたるところに
マンションとかアパートとかハウスとか
新種のものがどっさりことできすぎて
空き家がふえる

家族はどこにすんでいるのか
不動産屋さんがよくしっているらしい
お店の前に
ペーパー・ファミリーが
一杯貼りだしてあるよ


世界

2012-10-09 11:21:54 | ポエム

世界

 

目の前で
物質が
かたまったり
とけたり
おいそがしい事実という
やっかいなものができて
それも美しい絵とか
優しい食べ物とか
きぶんが晴れる高層気流とか
そういうものなら
ヒマラヤのように
ユングフラウのように
うずたかく積もるほどあってもいいが
動乱 無視 破壊 
秘密 薄情 陰謀
みんな裾野をひろげてはびこるものは
なんとかしてなくなれ
なんとかしてちぎれとべ
きれいなオフィスの深々とした
羊の皮の椅子にすわって
窓越しにちいさくみえる路上の困っている人々を
だれからの贈り物かもわからない豪華な花とまぜあわせて
視線をあそばせている
燈ともし前にはいなくなる人類は
余所の世界でやってくれ

 

 

 


バージョン・アップ

2012-10-06 21:37:14 | ポエム

バージョン・アップ

 

パソコンの操作を
ひと時やすんでいたら
幽霊みたいに
スーッとポップアップして
ここをクリックせよと
誘惑するフレーズがあらわれる
底の無い海のような世界だが
いつもヒタヒタと揺らいでいて
いつも油断が出来ないネットワーク
いまやネットを信用するしかない
この世界の情報の巣窟
豊堯の海の真相は
明暗こもごもの
何?
バージョン・アップの正体は
淑女紳士とはかぎらない
何?
機能主義が
館の主?
停電世界の
一本の蝋燭こそが
永遠の

とは
寒い話だが
・・・・・・・

 

 


2011-06-11 13:44:35 | ポエム

 

 

そんなに 陽気でもない日に

ぼくは 旅にでた

古い駅についた

人は見当たらないちいさな街

たとえであえたとしても

こんにちは

おはようございます

こんばんは

なんて いいっこないだろう

 

さいしょに 見つけた のはらで

ゆっくり あおむけにねころんで

ゆめ まぼろし それから なにをみるのだろう

スクラップをひらいて

はりつけた 一日 一日 をはがして

みのまわりを 紙の数いっぱいの世界に変え

すずしい顔をしてたちさるだろう

 

すきな音楽だけを聴いて

目をとじて

音の底に自分を鎮める

 

ふらふらと 手と足が

むなそこで ゆらめいて きもちがいい

スローモーションの映像をみているようだ

 

月にのって

空のおくまでつれてゆかれ

ドンドン底のない空に

じぶんを

ゆっくり とかしてゆく

そういう旅なら いくらでも

 


One Drop

2011-04-21 18:55:39 | ポエム

One Drop

 

きみは

突然

ぼくの前に

おちてきた

 

なんの

てらいもなく

ただ 当然の様に

 

きみは

散崋のように

ひらひら舞わずに

なにか素っ頓狂に

着地した

 

ぼくは思わず

踏みつけるところだった

 

そっと

崩れないように拾い上げた

それからぼく

きみをどうすればいいのか

かんがえた

わかるはずはないのだった

 

きみはちっておちた

さくらのはなで

ぼくはとおりかゝったにんげんで

なんのかんけいもないのだから

 

でも、ひろいあげたということは

かんけいがあるということではないか

 

ぼくはきみのすがたをスキャンしてほぞんした

でも

もうそのすがたは

きみであってきみでないそんざいになり

ふくざつにおれまがった現実であり

世界としては

一歩前進したことになる

 

こんな小さな前進が

人間が誕生していらい

芋蔓式にとぎれぬ時間の

正体なのかもしれない

 

 

 


夜更けて

2011-04-12 11:34:41 | ポエム

 (絵をクリックすると拡大します)

冬の夜 ひとりでいる

冬の夜 ひっきりなしに

冬の夜 ひえてくる

冬の夜 しんしんとはきこえぬ

冬の夜 むごんのくうき

冬の夜 むかしよりもさむざむと

冬の夜 ねむりたくないきがする

冬の夜 いつまでおきているつもり

冬の夜 ちゃわんをあらうきがしない

冬の夜 へやはちらけたままでよい

冬の夜 パソコンはオンラインでもメールはこない

冬の夜 オーディオのでんげんライトのブルーてんとう

冬の夜 テレビのでんげんライトのレッドてんとう

冬の夜 にわきのえだにやみがまきつくきりきりと

冬の夜 けいたいにちゃくしんはない

冬の夜 まだいちじだからねむくない

冬の夜 ひとりでいる 

冬の夜 しだいしだいにしずかになる

冬の夜 さめているひとのかずは

冬の夜 かぞえるてだてもなく

冬の夜 パソコンのキーをうつ

冬の夜 かすかなおんりょうでポップスをきく

冬の夜 そとはくもりかまたはれか

冬の夜 エアコンさんがいてくれて

冬の夜 さむくはないのにひえてきた

冬の夜 そろりそろり

冬の夜 ちんもくとせいじゃくと

冬の夜 ふたつあわせで

冬の夜 そのすきまに

冬の夜 ちょうどからだがはいりこむ

 


花瓶の仕業

2011-04-11 00:30:05 | ポエム

 (絵をクリックすると、拡大します)

 

 

言葉を

花瓶にいけて 

ラブ・ミー流

ライティングは

あなたしだいで

ほのかでも

かんかんでりでも

それはどうぞすきにしてください

 

そんなメロディーっぽい

きもちばかりを

バッグにいつもひそませて

ときどきひもとくきみ

 

めのなかのふうけいから

いちばんとおい

まつ毛のかげがよぎるあたりの

ヒコーキ雲が

きえていくと

いそいでかえってしまう

 

どうにかならないのだろうか

その花瓶の花

みつめられると弱そうだけれど

いつまでも

しおれそうもない

ほんに

美しい造花であったのか


紙と、ほっといてくれ

2011-04-08 01:45:10 | ポエム

 (絵をクリックすると拡大します)

 しばらくは

呆けのタイムを活用し

ゆうぜんとしてぼける

こころをうごかさないで

視覚

聴覚

味覚

といったような

ものを楽しくさせるマシーンで

ロボットよりはすこし生き物のさまで

 

そんな居心地のいい場所を

くまなく探しているうちに

目の前の壁に気が付かず

ガシャンとゴンとぶつかった

 

どこをいためたかというと

表面のおうとつがなくなって

ずんべらぼうになっちゃった

 

 

これはヤバい とおもったが

ときすでに間に合わず

そのずんべらぼうを引きずってかくれたが

 

おい おい 君 君 と、みつかって

君は一体

紙かいな

ほっといてくれかいな

 


連絡船

2011-03-29 12:11:29 | ポエム

 

 

 

 

バダバダン

しい曲線

どうしたら

あらわれるのだろう

その美しさの輪郭のなかか

そとからのながめなのか

人はよくばりだから

その両方を手にしたいと思ってしまう

 

トントントン

叩くおと

そのおとは

気持ちのいいおとだとしたら

その向こう側からやってくるのは

人にとって

最高に幸せなものを

いっぱいつんできてくれる

絶海の孤島にくる

連絡船にちがいない

 

人は人と

連絡することで

生きていけるもの

だから孤島にも生きられる

 

ザザザザザ

連絡船のスクリューがおちついて力強い回転音で

ちかづいてくるのがかすかに聞こえる


一瞬

2011-03-10 14:00:04 | ポエム

あっ と

あっ と

 

時のしゃくとりむしは

どんなまがりや とっき も

しらずしらずのうちに

のっそりと

こえてゆく

 

あなた

回路不明の

ほんとうは

出鱈目か

 

賽をふる なげる 

過去になるのが

ルからタにまたがる回路

瞬間をつくる回路

 

幾世紀もかけて

きずきあげたものも

回路の迷路のなかで

きえる

 

そして

同じ回路のなかで

再生する

 

きえても

いつまでも再生を続けよう

いくばくかの

前進のファッションで

 

 

 


ノイズ

2011-03-10 01:31:24 | ポエム

しずかに
ノイズをきいている
なんだろう
このふしぎなおもさのある
確かな音
ヘビーな夜の
隠された意味を
しらせている

このまま続く夜のノイズが
めくれあがっていくとき
静寂が支配するのは
世界が交錯する瞬間

めくれたあとのひどい傷を
なんとかして
へいたんなものにしないと
おちつけないという
贅沢

それができたら最高の贅沢だ

問題は
月が静かに消えてくれないと
人は眠りから覚めないだろう

そして永遠がちらっと通り過ぎるのだ


2011-03-08 16:17:23 | ポエム

竹が生えている

大量の辞書の

意味の世界のように

地下茎をべったりと張り巡らせて

繁殖している

 

地上にのびていくのは

言葉の記憶

それとも

言葉の混乱

いや、みためには混乱はない

 

断絶を寸時も許されないもの

たとえば

心臓の鼓動

自分という手づくりの標本

風にふかれてもたおれない芯

ひときわ背の高い目的

 

いうならば

高さの弱点をカバーする意志

時々

風雪でたおれそうになっても

しなやかに

まがるだけで決して折れないもの

(ふし)(ふし)とをその気にさせるあざやかな愛着

竹はそういう世界の生き物にちがいない