迷路と運命
枝を張り出して
迷路をつくっている
その森は
いのちのしきたりで
すべてがつくりあげられていた
少年と少女は
おたがいの名前も知らなかった
少年は少女の手をとって
その森のなかへはいっていった
おびただしい湿気が
ふたりをおそった
しばらく霧のような空気がただよい
みとおしはだんだん不透明になっていった
てもとだけはあかるかったので
少年はきれいな字で少女に書いた
「一緒にきてくれるか」と
それをみて少女は口にした
「どこへ」と
とうとつに森にひかりがさっとはいってきて
霧は霧散してふたりをスポットライトのように
うきたたせた
迷路の枝はなくなり
ひろいみちができていた
そうして年月がたち
草原のようになったその森と
いのちのしきたりは
童話のようにたのしくへんかし
多くの少年少女たちに
まえをむかせた
ふりむくことも少しまじえて