小中高の算数や数学の文章題を解くとき、いや普通に実生活上の計算問題を解くときにうっかりすると単位を間違えてしまうことがあります。これは大学以上での物理学や化学でも同じですし、経済学などの社会学系になると、やたらに色々な量を作っていて単位がよくわかりません(爆)。これを防ぐ良い方法は、計算式を書くときに全ての数値に単位を正しく付けることです。例えば、
60km/sec×60sec=3600km
10m×20m=200m^2
30個/皿×7皿=210個
200円/本×7本=1400円
km/sec(キロメートル毎秒、キロメートルパーセコンド)の代わりにkm.sec^(-1)と指数表現にすると、もっとたくさんの単位が重なったときに何かとわかりやすくて便利です。
もう少し複雑な例を挙げておきます。互いに平行な電線にそれぞれ1A(アンペア)の電流が流れているとき、電線1m(メートル)当たりに働く力の計算式です。電磁気単位にはいくつもの単位系がありますが、MKSA単位系では次のようになります。
力/長さ=1N.A^(-2)×1A×1A/1m=1N./m(ニュートン毎メートル)
=1kgms^(-2)m^(-1)=1kg.s^(-2)
何のことはない1m(メートル)離れていて1N./m(ニュートン毎メートル)の力を受けるような電流を1A(アンペア)と定義しているのですが、ここで比例定数の単位をN.A^(-2)と表記するのはあまり一般的な方法ではないことは断っておきます。(注)
ここで単位同士でも四則演算ができる、いやしなくてはならない、という事実がポイントです。困ったことに日本の初等教育では文章題を解くのに単位抜きの式を立てる方法が使われているため、この事実をきちんと飲み込んでいない人が生み出されているようです。嘆いている人の論文をどうぞ。
「上越教育大学研究紀要(ISSN 0915-8162)」第17巻第1号 平成9年9月pp. 365-375(1997)]
http://repository.lib.juen.ac.jp/dspace/handle/10513/284 抄録
このように量には必ず単位を付けるようにすれば、次の原則がわかるようになります。
1.和と差は同じ種類の量同士でしかできない
2.積と商の結果は異なる種類の量になる
特に2は数学における数の世界とは大きく違う点です。有理数同士の積や商はやはり有理数であり、実数同士、複素数同士でも同じです。このことを有理数や実数や複素数は積の演算に関して「閉じている」と言います。和や積のような演算の定義された集合を抽象化したものが群や体ですが、群や体の定義には演算に関して閉じていることが第一義的に含まれています。それゆえ単一の演算だけ考えたときは、和も積も群としての数学的な構造は区別がつきません。このことを利用して積の計算を和に置き換えて計算しやすくしたのが対数です。
しかし量の世界は積に関して閉じてはいません。この現実世界の性質が数学世界の積演算へと抽象化される時に捨て去られてしまったのです。2の原則の唯一とも言える例外が同じ量の繰り返しによる量、例えば5mの棒3本をつないだ長さが、
5m×3=15m
であると思うでしょうが、どっこい、これは、
5m/本×3本=15m
と考えるのが適切です。"m/本"でなくては間違いとまでは言いませんが、この考えの方が統一が取れることは確かです。実際、1本の棒の長さも何本かつないだ棒の長さも同じ長さという量であるには違いありません。が、時には物体が違えば同じ長さも量として異なると考えるのが良い場面もあるのです。みかんとりんごの値段がどちらも同じ価格という量であるとしても、現実世界では異なる量と考えるべき局面もあるわけです。
-- 続く --
注) この点については、この「量とは」シリーズの中で後ほど触れるつもりです。
60km/sec×60sec=3600km
10m×20m=200m^2
30個/皿×7皿=210個
200円/本×7本=1400円
km/sec(キロメートル毎秒、キロメートルパーセコンド)の代わりにkm.sec^(-1)と指数表現にすると、もっとたくさんの単位が重なったときに何かとわかりやすくて便利です。
もう少し複雑な例を挙げておきます。互いに平行な電線にそれぞれ1A(アンペア)の電流が流れているとき、電線1m(メートル)当たりに働く力の計算式です。電磁気単位にはいくつもの単位系がありますが、MKSA単位系では次のようになります。
力/長さ=1N.A^(-2)×1A×1A/1m=1N./m(ニュートン毎メートル)
=1kgms^(-2)m^(-1)=1kg.s^(-2)
何のことはない1m(メートル)離れていて1N./m(ニュートン毎メートル)の力を受けるような電流を1A(アンペア)と定義しているのですが、ここで比例定数の単位をN.A^(-2)と表記するのはあまり一般的な方法ではないことは断っておきます。(注)
ここで単位同士でも四則演算ができる、いやしなくてはならない、という事実がポイントです。困ったことに日本の初等教育では文章題を解くのに単位抜きの式を立てる方法が使われているため、この事実をきちんと飲み込んでいない人が生み出されているようです。嘆いている人の論文をどうぞ。
「上越教育大学研究紀要(ISSN 0915-8162)」第17巻第1号 平成9年9月pp. 365-375(1997)]
http://repository.lib.juen.ac.jp/dspace/handle/10513/284 抄録
このように量には必ず単位を付けるようにすれば、次の原則がわかるようになります。
1.和と差は同じ種類の量同士でしかできない
2.積と商の結果は異なる種類の量になる
特に2は数学における数の世界とは大きく違う点です。有理数同士の積や商はやはり有理数であり、実数同士、複素数同士でも同じです。このことを有理数や実数や複素数は積の演算に関して「閉じている」と言います。和や積のような演算の定義された集合を抽象化したものが群や体ですが、群や体の定義には演算に関して閉じていることが第一義的に含まれています。それゆえ単一の演算だけ考えたときは、和も積も群としての数学的な構造は区別がつきません。このことを利用して積の計算を和に置き換えて計算しやすくしたのが対数です。
しかし量の世界は積に関して閉じてはいません。この現実世界の性質が数学世界の積演算へと抽象化される時に捨て去られてしまったのです。2の原則の唯一とも言える例外が同じ量の繰り返しによる量、例えば5mの棒3本をつないだ長さが、
5m×3=15m
であると思うでしょうが、どっこい、これは、
5m/本×3本=15m
と考えるのが適切です。"m/本"でなくては間違いとまでは言いませんが、この考えの方が統一が取れることは確かです。実際、1本の棒の長さも何本かつないだ棒の長さも同じ長さという量であるには違いありません。が、時には物体が違えば同じ長さも量として異なると考えるのが良い場面もあるのです。みかんとりんごの値段がどちらも同じ価格という量であるとしても、現実世界では異なる量と考えるべき局面もあるわけです。
-- 続く --
注) この点については、この「量とは」シリーズの中で後ほど触れるつもりです。
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