DREAM-BALLOON

夢風船って
地球なのかな?って思ったりする...

ブログ開設から4000日!

102:鷦鷯(ミソサザイ)

2012-02-22 01:04:43 | ★DAILYLIFE★(acco小説)
 背の順で。下から、タツ、僕、真悟。民家の角で顔を縦に並べる。後は、ゆっくりと体重を前に傾けひょっこりと顔を出し、美声の持ち主を拝ませて頂くだけである。
“ピピピチュイ!チリリリリ・・・!”
移動せずにさえずりを続けているようだ。それにしても、かなり特徴的なさえずりだと思うが・・・。
「ねぇゴリラ。何の鳴き声かわからんの?」
「う~ん。こんだけ大きくて綺麗な声やしね~。聞いたことあれば覚えちょると思うんやけど、聞き覚えない。」
真上からの返事。真悟が喋るたび、顎がコツコツと僕の頭に当たって痛い。
「お~!そりゃ期待出来る。」
「あんさ~。早く見てみようぜ!中腰つらいしさ、この状態であっくんが喋ると、俺の賢い頭にダメージが蓄積するよね。」
「あっごめん。」
おっと、そうか。僕の下にいるタツもまた然りだった。真悟が少しずつ、僕とタツに体重を乗せていく。
「そんじゃタツがこれ以上バカにならんうちに・・・

拝見うっほぃ!!」

確認だが、ここに重なっている3人は、絶賛球拾い中である。

 1羽の鳥が、比較的大きな庭石の上にいた。見つけるのはなんとも簡単だった。あっちを向きこっちを向き、庭石の上でせわしなく動いているから、すぐに目に留まる。でも・・・本当にあの鳥が声の主なのか!?
“ピピピチュイ!”
ほ!今確実に鳴いた!!て事は本当に・・・信じられない出来事だ。

こんな声量と美声の持ち主が、スズメより遥かに小さく見える小鳥だとは!!

「・・・げっ!見つかった!?」
その小鳥と目が合った気がしたのは、気のせいではなかったようだ。その小鳥は慌てたように、上手く庭木の枝を掻き分けながらどこかへ飛び去った。3人とも緊張感が抜け、崩れる。
「あぁ~ん!!行ってしまわれた・・・。」
タツはかなり残念そうだが・・・真悟の方は姿を見られただけでも十分に。っと言った所だろうか。
 最近は少しずつだが経験を積み、あれくらいの短い観察時間にも慣れてきた。以前より、鳥の特徴が頭に残る。色は全体的に茶色で、丸いシルエット・・・というか今回の場合、サイズが特徴的過ぎる!目視でスズメより小さく感じる鳥なんていうのは、日本に何種かしかいない。さらにあの鳴き声!!図鑑で見た『そのサイズからは想像もつかないような美しい声でさえずる』っという情報とも完全一致。これはレア鳥だったんじゃないか?

「ゴリラさっきの、ミソサザイ?」

「おっ!あっくん!ほんとに最近詳しくなったよね!」
よっしゃ正解!
「そりゃゴリラ師匠のお陰やし。まぁあの声とサイズやもん。そんなに識別難しくないやろ。ただあのさえずりは反則。図鑑でさえずり声が綺麗で大きいのは知っちょったけど、あそこまでとは思わんかった。」
「なるほど。そっかそっか。確かに図鑑見れば、見た目、サイズとかはある程度正確にわかるけどさ、鳴き声って文字にされても想像するの難しいよね。そぉいや、観察パークには、機械を使って鳴き声も聞ける最新の図鑑があるらしいよ。俺もまだ使ったことないけど、ミソサザイみたいな野鳥に対しては、実用的よね。」
僕の発言から、図鑑の問題点を見事にあぶり出し、それを解決する術すらも、何気なくまとめる真悟。さらりとやってのけるが、案外難しい事だと思う。やっぱ真悟には学力以上の賢さがある。

「あのさあのさ、俺もどうにか話に加えて~や。」

「あ・・・ごめん。」
おっとっと。ついつい鳥の話となると夢中になってしまう。タツの存在を忘れかけていた。いや、すでに忘れていた。真悟が慌ててタツにも説明する。僕が説明するより、ちょっと知識が深い。
「さっきのはミソサザイって鳥でね。山に入って、渓流とかに多いけ、この辺りじゃ結構珍しいんよ?俺も初めて見たし。で、なんと言ってもバードウォッチャーから見た魅力はね。あのサイズに似合わない圧巻のさえずり!こんな場所で聞けるとは!あ~そうそう!!実はなんと!!日本で2番目に小さい鳥・・・ってのも考えたら凄い事よ!?ウホィ!!」
「ふ~むふむ。」
真悟の熱弁に、わざとらしくうなずくタツ。まぁ、日の山のバードウォッチングすら覚えてなかった奴だから、鳥の話なんてタツにとってはこんなもんか・・・と思ったらだ。
「うぬ??あっくん、ゴリラ、小さいっていうとさ・・・」
「うん?」

「ヤブサメも小さかったよね?」

ヤブサメ??・・・タツから飛び出したその名前を思い出すのに、多少の時間がかかった。
「・・・ぅあぁ!!懐かし!!」
 あれは・・・そう!去年の夏休み最後の事だ。僕、ゴリラ、タツ、オッキー、ウッチンの5人で霜降り山に出かけた。あの時は、長~い尾羽がチャーミングなサンコウチョウを探しに出かけたはずなのだが・・・
“なんか鳴きよらん!?”
“真上だ!!”
思いもよらず見つかったのは、ヤブサメというなかなかのレア鳥だったのだ。姿が見えたのはほんの一瞬だったが・・・そういえばあの鳥もめちゃくちゃ小さかった!
「えっと・・・。」
「・・・ゴリラ?ね?小さかったやろ?ね?」
「おっおぅ。ヤブサメはねぇ、日本で3番目に小さい鳥なんよ。ちなみに1番小さいのはキクイタダキってやつね。いや~!!タツがヤブサメを覚えちょるとは思わんかったわ!失礼ながら・・・。」
僕も全くの同感!!
「そこよね。正直ビックリ・・・。」
「え~!!ちょっと!!俺って周りにどんな人間やと思われよんや!!」
「結構なバカ?だってさ、初日の出の時も日の山登ったの覚えてなかったし・・・ねぇゴリラ。」
「そぉそぉ。あれはショックやった。持参した竹輪落としたもん。」
「そっちかぃ。」
2人の自分に対するイメージを聞き、呆れた顔でタツが答える。
「はぁ。あれはさぁ、ネタやん!!さっきも言った気がするけどさ、俺って意外と賢いからね。ほんとは日の山行った事も覚えちょるよ?鳥おらんやったけどさ、ゴリラがカラスの羽の解説してくれたやん?」
「そいやそんな話聞いたかも。」
・・・ほんとだ。予想以上に細かい所まで。
「それだけじゃないし!!初めてバードウォッチング行った日の事もちゃんとよ。ハクセキレイの幼鳥とか、めっっっちゃ可愛かったしさ・・・あんときに気付いたよね?

バードウォッチングがちょ~楽しいって事に!」

あれ。満面の笑みで断言するタツから、何だか真悟に似た賢さを感じた気がしたが・・・いやいやいやいや!!気のせいに違いない。間違ってもそんな事は有り得ない。ただ、1つわかった事がある。

タツはバードウォッチングに興味がない訳じゃない!

どうやら、自称ネタのキャラ設定やウッチン騒動もあってか、完全に誤解していたようだ。思えば、オッキー、ウッチン、おだちゃんと違って、タツからはバードウォッチングに対する気持ちをこれまで直接聞いた事がなかった。これほどバードウォッチングを気に入っていたなんて。それこそ、僕のバードウォッチング生活だって・・・
“今日の帰り道、3人でバードウォッチングしながら帰らん??”
図書館での何気ないタツの思いつきから始まったのだ。そう。ちょうど今ここにいる3人で。

「またさ。3人で行こうね。バードウォッチング。」

ここ最近は、僕と2人ですら鳥を見に行く機会が少なかったから、真悟にとっても嬉しい提案に違いない。
「・・・ぉおぅ!あっくん、いい事言うわぁ!タツ!木曜日は!?」
「あいにく予定がね。」
「う~ん。残念。」
そういえば、家族旅行とか言ってたな。
「まっ!また時間つくってさ!!絶対行こうや!!」
久しぶりのタツを加えてのバードウォッチングか・・・。実現すれば盛り上がることは間違いなさそうだ!
「さて、そろそろね。俺は球探しに戻ろ~。じゃぁまた後で。」
緑に消える真悟。真悟の一言が、僕とタツを一気に現実へと引き戻す。ラスト1球。かったるいが、そろそろ見つけないと、コウジの激怒が避けられなくなる。
「おぃ!あっくん!どっちがさきに見つけるか、勝負再開ぞ!」
ずんずんと、不法侵入の民家の庭をいくタツ。そういえばそんな話してたな!よっしゃ負けない!!っと気合を入れた・・・途端に勝負がついた。
「おっ!やっぱ俺の“ロストボールサーチング”すげぇ!!」
タツが庭石の影から、まぎれもなくテニスボールをがっしり掴み、勝ち誇った顔で僕に向けてボールを突き出す。・・・あら?その庭石は・・・。
「ねぇタツ。僕の負けでいいけどさ、その必殺技は譲ったら?」
「誰に!?」

「さっきのミソサザイ。」

その庭石の上であれほどの美声を響かせて、ボールの場所を教えてくれていたのだから。

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4 Comments

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Unknown (acco)
2012-02-22 01:11:42
第102回投稿。ぎゃぁ。何日もこんな考え込んで書くのは久しぶりや。内容は決めてあるんやけどね。何か納得した文章にならんっていうか。結局、この文章も納得いってないけど妥協なんよね~。流れがないっていうか、笑いの意味じゃなくて面白くないよね~。

次頑張るわ!
ミソサザイ懐かしいw

★次回予告★
ひょんな事からじいちゃんの病気がバレて・・・みたいな感じと思う!
余裕があれば、観察パークのお祭り突入!!
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Unknown (tama)
2012-02-22 01:30:07
この絵いい!
なんか聴こえてくる感がいい!

1話から読み直すんで
文はおあずけ
すまぬ...
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Unknown (しんご)
2012-02-22 22:57:11
どれくらい実話なんか実は俺にはよーわからんのやけど、毎回キャラがたっとてあっくん観察力すごいんやなぁーと思う^^
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Unknown (acco)
2012-02-23 00:50:59
ほんと?
目標は、鳥だけじゃなくて、その1話だけのマンガあったとして表紙になるような絵なんやけどね… 不可能そうなもので(笑)

いうてどの話も実話が元よ
ミソサザイを球拾い中の民家で見たのも本当やし(笑)
事実の連続を関連づけして物語に変えるイメージやな~

てか実家 今日工事して光にはなったんやけど設定が上手くいかんもんでしばらくネット使えんくなったんよ
小説も書きたいんやけど… っていう携帯からのコメント欄が日記みたいに長くなってしまった…
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