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「おお……!」
眼下に広がる光景に、僕は思わず息をのんだ。まさに圧巻の一言に尽きる。
「あれが噂に名高い階段と迷路の街か……」
「そんなふうに呼ぶのは人間ぐらいぞ。我らはあの場所を『オス・モルガーン』と呼んでいるゆえ、おぬしもそうするがよい」
「オス・モルガーン? どういう意味だ?」
「『東の裂け目』という意味よ。分かりやすかろ?」
「へえ、じゃあ『西の裂け目(ベンス・モルガーン)』というのもあるのか?」
「……さあ、あるのではないか? 我は見たことないがな」
「お前も見たことがないなんて、それは探しに行く甲斐がありそうなところだな。……まあ、とりあえずは東から行ってみるとしよう」
僕は荷物を担ぎ直すと、街道に拵えられた階段を下りはじめた。
巨大な谷を埋めるように下へ下へと造られた、一風変わった街を目指して。
「人間とはまた珍しい。一体何の用だ?」
街道から直接街へ入れる唯一の入り口で僕らを出迎えたのは、煙管を吹かせたゴブリンだった。
「人探しを兼ねた観光で」
「物好きな奴だな。ここがどう言われているか、知らん訳じゃねえだろ?」