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「クッハッハッ……! なんと愉快な……。本当にこの大地は、可笑しくて飽きない」
司祭様だった。暗闇に笑いが全て吸い込まれると、司祭様は僕に改めて向き直った。
「お好きなように、トルヴェール殿。悪魔しか参加できないという決まりはありません。誰も参加したがらないだけですから。……エクレア、あなたも気になっているのでしょう。手伝って差し上げなさい」
これまで動揺も恐怖もなく、黙って成り行きを見守っていたエクレアさんがハッと息をのんだ。
「ただし、私は引率しません。そんな親切心はありませんよ」
獣人の顔を見慣れない僕でも分かった。このとき司祭様は笑っていた。
とても気持ち悪く、笑っていた。
そして山羊の悪魔は今度こそ、祭へ出かけていった。
「……エクレアさん、君はあの人が悪魔だと知っていたのかい?」
少しの沈黙のあと、僕はいつの間にかかいていた汗を拭ってエクレアさんに尋ねた。
「はい。拾われてすぐぐらいには、教えていただきました。けど私は、忌み嫌われる悪魔の行為を、司祭様が誰かにしているところを見たことがありません。せいぜい、悪さをする子どもに説教をする時に迫力あるなあと思うぐらいでしょうか」
彼女は空になったお皿を回収して重ね、今度は逆に僕に問うてきた。曰く、本当に参加するのかと。