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人に望みの喜びあらば囁こう
月に隠れた木立の影から
燭火(しょっか)に隠れた部屋の隅から
心の奥の奥、裏の裏の裏の影
誘い込むのよ、そうここへ
飢えた欲こそ燃え上がらせよう
誰かではなく自分の為に
時来るまで、心ゆくまで
踊るといいわ、そうここで
祈りも途絶える真夜の樹下
冥(くら)い瞳の幽かな私
寄る辺無き者たちが惹かれ合う
立てば見渡す千里の彼方
座れば沈む甘い虚ろの夢の底
歩く姿は真っ赤な毒の花
口吸うように魅入られて
呼ばずとも小さな光は集い行く
月に隠れた木立の影から
燭火(しょっか)に隠れた部屋の隅から
心の奥の奥、裏の裏の裏の影
誘い込むのよ、そうここへ
飢えた欲こそ燃え上がらせよう
誰かではなく自分の為に
時来るまで、心ゆくまで
踊るといいわ、そうここで
祈りも途絶える真夜の樹下
冥(くら)い瞳の幽かな私
寄る辺無き者たちが惹かれ合う
立てば見渡す千里の彼方
座れば沈む甘い虚ろの夢の底
歩く姿は真っ赤な毒の花
口吸うように魅入られて
呼ばずとも小さな光は集い行く
『お前の望みはなぁに?』
これは耳からじゃない。頭の中に直接響く感じの甘い声だ。どれだけ頭を振っても消えてはくれない。
『何を探しているのぉ?』
こいつらの声は、僕にしか聞こえてないみたいだ。
『手伝ってあげよぉか?』
僕の右にも左にも、上にも下にも、どこにも悪魔はいない。何度も何度も確認した。遠くで腹が立つほど優雅に憩んでいるだけだ。
『ほぉら、言ってみて』
なのに、すぐ傍から剥き出しの心に触られる不快さと、奇妙に痺れる心地良さがある。
『ねぇってば』
危険だ。まずい。駄目だ。
『我慢なんかしないでよ』
聞いてはいけない。考えてはいけない。
『どぉしたの?』
蒼い月夜の彼女だけを探せ。
『何か知りたいんだろぉ?』
銀の髪、翡翠の瞳、風と遊んでいた青いドレス。
『大変なんでしょぉ?』
露よりも柔らかく、涙よりも澄んで、山中の泉よりも清らかだった声。
『ほぉらぁ、照れないで』
そうだ。この世の何よりも美しい。