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アダムが飲んでいた水を吐き出す勢いで問い直した。僕がそれはなんだと聞く間もない。これほど取り乱しているアダムもまた、珍しかった。
「おや、アダム殿はエクリプスの夜をご存知でしたか」
「当たり前であろう。我は千年を生きておるのだぞ!」
「ですが、詳しい日付までは知らなかったと」
「そうだ! 知っておれば、こんな最悪のタイミングをわざわざ重ねはせん! まさか、エクリプスの夜にオス・モルガーンへ来てしまうとは……」
そしてさらに、ギロリとアダムは司祭様を睨みつけた。
「いや、もうひとつ最悪なことがあったな。貴様のようなモノがいるここへ来てしまったことだ」
「こら、アダム! 失礼だぞ!」
「いいや、トルル。こやつが敵であるかどうかはしっかりと問いただしておくべきことだぞ」
パン屑ひとつ、スープ一滴残さず食べておいて今更何を言う?
僕のそんな目に気づいたアダムは、ここは開き直った。
「うむ、美味であった! ごちそうさま!」
「お粗末様です」
エクレアさんはこんな状況でも律儀に頭を下げた。
僕はといえば食事を続けようにも続けにくく、所在なさげに目をうろうろさせたあげく、結局はスプーンを置くしかなかった。
「……エクリプスの夜がなんなのか、聞いてもいいですか?」