
本文詳細↓
ご両親は親族の結婚式に出席するため留守にしているそうだ。かれこれ一人暮らしも三ヶ月目に突入、と言っていた。
「あなたは行かなかったんですね」
「嫁いできたお袋の従妹だぜ? ほぼ他人の結婚式なんてなあ……ってかんじ。あとまあ、火の番もあるし」
アスキリオさんは窓の外へ目を向けた。僕もつられて黄色い火を見上げた。
「鳴御雷(なるみかづち)……噂では、昔天から降ってきたもので、一度も消えずに燃え続けているらしいですけど、本当なんですか?」
「天から降ってきたかどうかはオレも与り知らんとこだが、燃え続けてるのはたぶん本当だぜ。ちゃんとタネがあるからな」
そう言って彼は奥から小さな瓶を持ってくると、覗き込んだ僕らの眼前でフタを開けた。
「くっっっさ!?」
「~~~~~~ッッ!?」
僕は即座に顔を背け、アダムは声も無く鼻を抑えて悶絶した。彼はしてやったりと大口を開けて笑っていた。
「わははっ! この油が鳴御雷の秘密なんだが、いやー。マジでいい反応してくれるわー」
「なんなのだそれはっ!? 臭すぎて危うく気を失う、いや、胃も口から飛び出すとこであったぞ!」
アダムはもはや泣いていたし、僕も必死で深呼吸を繰り返した。