徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

朝の月、世界と舞台の隙間にて 1・2

2020-04-23 20:12:15 | 小説

 ついに最終章ですが、流石に短すぎるので2ページ同時更新です。











 本文詳細↓



 「少し長くなるけど、昔話を聞いてくれるかしら?」

 世界を二つに分ける扉の縁に座って、蒼い月夜の彼女――天使ナイトウォーカーは、そう言って笑った。



 始まりは千年以上前のこと。
 世界の極東にあるこの島は、鮮やかな緑と豊かな水で満たされ、実りの地という意味で[エドナンティア]と呼ばれていた。
 そこに主に生息していたのはブロッケンという巨大な生き物だった。大きさだけでいえば、かのドラゴンをも凌ぐほどだ。姿こそ人に酷似していたが、その大きさに見合うだけの怪力を持ち、また一糸まとわぬ澱んだ乳白色の肌は魔力耐性がとても高く、あの悪魔をして干渉することを諦めさせるほどだった。彼らは複雑な知能や感情、言葉を持っておらず、その様子は、喩えるなら揺籃期の人間と言えた。ブロッケン同士であれば精神感応(テレパシー)で意思疎通ができると推測されてはいるが、誰も真実は知らない。
 エドナンティアは肥沃な土地であったため、この地での生活を望む種族は多かったが、闊歩するブロッケンを倒すことも懐かせることもできず、彼らの目を気にしながら少し散歩する程度にとどまっていた。
 そこへある日、はるばると海を越えてたくさんの人間たちが流れついた。彼らは戦争や飢饉から命からがら逃げてきた者たちだった。だが彼らの不幸は終わらなかった。ようやく辿り着いた新天地には、先住民のバケモノがいたからだ。見慣れないものに興味を持ったブロッケンは、ただ無邪気に人間を捕まえて連れ去り、またはその怪力で握りつぶし、時には口の中へ放り込んだ。
 人間たちはたちまちのうちに恐怖し、慟哭した。



コメント
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