●海外視座:トム・クランシーの視点。 従軍慰安婦問題など日本への視点は厳しい。
あなたはトム・クランシーというアメリカの作家をご存知だろうか?
当たり前のことを聞くな! そうですよね。でもひょっとしてまだご存じない少数の方へ一言解説。
アメリカのベストセラー作家の一人で、綿密な取材、該博な知識、詳細なデータを駆使した現代ハイテク軍事スリラー小説の第一人者。巨大な米軍を詳細に取材したノンフィクション著書も多く執筆している。「素顔のスペシャル・フォース」、「トム・クランシーの戦闘航空団解剖」など。ストリーテラーも秀逸で、ヒストリーCHなどの軍事関連の報道番組で、F14トムキャットの美しい飛行姿を解説して「F14は戦闘機のキム・ベイシンガー(ハリウッドの美人女優)だ!」とユニークな絶賛をしていた。
彼の作品は大物スターたちにより、数多く映画化されている。人気と実力を誇る証しだ。中でも「ジャック・ライアン」シリーズは、ハリソン・フォードやベン・アフレックなどの主演で、有名なシリーズとなっている。近年では若手スター、クリス・パイン主演で「エージェント:ライアン」が映画化された。
残念ながらトム・クランシーは、2013年66才で亡くなってしまった。もうワクワクするジャック・ライアンの冒険が読めなくなるのか。とガッカリしていたが、彼と生前共著を出していたマーク・グリーニーが彼のシリーズを引き継いで書き続けている。このマーク・グリーニーも抜群のストーリーテラーの作家で、独自のシリーズ「暗殺者グレイマン」も大好評だ。
さて彼のもうひとつの作品シリーズに「オプ・センター」ものがある。
オプ・センターは「国家危機管理センター(NCMC)の別称である。軍事、諜報、心理、法律などの専門家で組織された非常に小さな集団で、国際的な危機を事前に察知して、大きな火種になる前に封じ込めてしまおうという任務をもっている。ストライカー・チームというコンパクトなタスク・フォースも保有しており、軍事的解決能力をも持つ秘密組織だ。通常、海外脅威の探索・感知、状況によりその脅威消去をするのはCIAの任務。だが脅威が大きい時は大規模な軍事作戦での対処となる。その場合は国防総省が主体となる。それより小さい場合は、SOCOM(アメリカ特殊作戦軍)のSOF(特殊作戦部隊)とCIAやFBIなどとの共同作戦になることもあるようだ。この例で有名なのが、2011年5月1日に実施された、ビン・ラディン殺害計画「ネプチューンズ・スピア(海神の槍)」である。製作過程が論議を呼んだ映画「ゼロ・ダーク・サーティ」の元となった最重要秘密作戦である。
(作戦実行部隊チーム6とバックアップのデルタ・フォースが分乗し、ビン・ラディン<コードネーム:ジェロニモ>の隠れ家に接近する特別仕様のブラック・ホーク×2機とチヌーク×2機。 ディスカバリch「アメリカ海軍特殊部隊 ネイビーシールズPERT1」)
「被曝海域」というオプ・センターシリーズの作品がある。
海洋投棄されたはずの放射性廃棄物を強奪、「ダーティ・ボム(汚い爆弾)」を作製し、世界的テロを企むオーストラリアの大富豪とオプ・センターとの戦いを描いた作品。その作品の上巻の中で、オプ・センターのポール・フッド長官と陸軍少将で副長官のマイク・ロジャースが、独自のヒューミント・チームから東京に派遣する工作員を検討するくだりがある。日本側の情報源の藤間重雄(外務省情報分析局長)の不審な態度の理由を探るためだ。
マイクが東京に住む工作員・平戸美波里が適任だと言う。同じ日本人なのに?と不審を抱いたフッドは「平戸美波里は祖国(日本)になにか遺恨でもあるのか?」と疑問を口にする。マイクがその理由を説明する。
「彼女は朝鮮人慰安婦の娘で、日本は祖国ではない。父親は客だった日本軍兵士3百、4百人のうちの一人だ。母親が日本に復讐する機会が来ることを信じて、娘に日本人名を名乗らせた」と説明。
これがアメリカの国民的ベストセラー作家の従軍慰安婦問題の視点である。
「河野談話を見直すつもりはないが談話作成過程の検証はする」という、歴史修正主義をちらつかせる安倍首相の態度を、アメリカや韓国は納得するだろうか。
(「河野談話に対する安倍内閣の見解に関する質問主意書」2014.3.24 衆議院)
クマラスワミ報告や白馬事件等を無視して、日本軍の犯した従軍慰安婦問題を矮小化する方向に画策しようとすれば、また韓国、中国、米国からやはり日本は反省していないという非難が上がる可能性が大だ。国連女性差別撤廃委員会や国連拷問禁止委員会のこの問題に対する最終見解に、日本側が真摯に向き合っていない姿勢も問題とされている。
それに東京裁判に提出されたこの問題の資料「中国、オランダ、フランスから提出された尋問調書」を捏造だと言い張れば、サンフランシスコ条約 第11条で「東京裁判やその他の連合国軍事法廷での判決を日本は受諾」しているので、条約違反となり国際的な非難も上がるだろう。
よほど強力な反証を上げることなしに、日本は無罪だと叫ぶのは、日本の国益・国際的信用を大いに毀損するだけだろう。
(東京裁判で膨大な資料が提出された。資料番号PD5330/EX1702など日本軍の慰安婦強制連行を示す資料が含まれている。無罪を訴えるなら、これらを打ち消す強力な反証を挙げなければならない。ヒストリーCH「東京裁判」)
同小説「被曝海域」上巻のなかで、モニカ・ローというシンガポール海軍の女性海防技術少佐が登場する。男勝りの熱血女性で曲がったことが大嫌いという性格だ。海外TVドラマの「CHASE/逃亡者を追え」のアニー保安官か、「PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット」のサマンサ・ショウを連想させる。彼女はオーストラりア海軍と協同して放射性廃棄物投棄に関連する事件があったとされるセレベス海を調査していた。作者トム・クランシーが投影された分身であるモニカ少佐が解説する。
「アジアの小国は、アジアの大国である中国と日本に警戒心と嫌悪感を抱いている。中国は厚かましい(厚顔無恥)。しかし日本はあつかましくはないが貪欲で冷酷、人間を支配しようとする。中国は十億人以上の人口を養うため領土や資源を支配しようとするのはわからないでもない」と中国については一定の理解を示している。
同小説のこのあたりは、中国を悪く言っている部分は少ししかなく、日本と日本人への嫌悪感が露骨に多く表現されている。
戦後74年になろうとする今日、いまだ日本が戦ったから英米の植民地だった東南アジアを解放できた。だから侵略戦争ではない。東京大空襲や原爆投下の大虐殺をごまかすために東京裁判を行った。南京大虐殺はなかったと叫んだ作家の百田氏(当時NHKの経営委員)もいる。
まるで日本軍の手は真っ白で、正義があり正しいことをしたのだ、と言わんばかりだ。
●海外視座:オリバー・ストーンの視点。 歴史を知らない、教えない日本人。
映画「プラトーン」など数々の名作でアカデミー賞を受賞したオリバー・ストーン監督。
「終戦を早め、それ以上の犠牲者を防いだ」とする米国内に染込んでいる原爆投下の正当性について、オリバー・ストーン監督は全くのウソと否定する。偏った暴言を繰り返す百田氏とは大きな違いがある。またオリバー・ストーン監督は、自国アメリカに都合の良い正当性を批判する一方で、こうも言っている。
「日本は戦争被害、原爆被害を主張するだけで、中国侵略、日韓併合、東南アジアへの侵攻などの加害責任を教えていない」と苦言も呈している。
「自国の歴史を知らない日本人」問題が、いつまでも国際認識とズレを生んだまま修復できず再燃を繰り返している。
日韓の歴史教育の違いを浮き彫りにした、2019年8月17日放送の報道特集「最悪の日韓関係〜和解の道は」で、そのことが良くわかる、
2019年8月中旬、韓国の民間団体が主催する日韓の学生交流会が、鳥取県出雲市の会場で開催された。日本側の学生16人、韓国側14人が参加した。慰安婦問題について、討論を重ねていくと、韓国の歴史教育はしっかり行われていて、日本側は何も教えていなことが分かった。
観国人学生は、
「韓国では高校で「韓国史」、「世界史」、「東アジア史」があり、その「東アジア史」の科目で日本の歴史もかなり比重を占める」と語った。
日本人学生は、
「日本での教育で、まず慰安婦問題をちゃんと知っている若者が少ない」
「日韓関係を知ろうとすると思ったら、教科書よりは自分で自主的に調べないといけない。日本は」と語った。
更に「学校でその知識を学んでいるということが、自分たちと違うなと感じた」とも自覚したようだ。
日本人学生の歴史認識に関する、韓国人学生の感想は、
「私たちは歴史や痛みについて知っているが、日本人が歴史を学んでいないことは聞いていた。直接来て話してみて「ああ、本当だったんだ」とびっくりした」と驚いていた。
(慰安婦、徴用工問題などの日本の加害責任行為は若者だけでなく日本人の多くが知らない。そして教えていない。 報道特集 2019.8.17)
日本の加害行為に向き合わず、再燃を繰り返す日本無罪論、欧米侵略からの開放論は、東京裁判におけるインドのパル判事が提出した膨大な意見書に依拠している場合が多い。パルの英文にして25万語の意見書の結論は被告全員無罪としている。しかしそれはパルの本意ではなく、その意見書の中で「被告たち及び日本国の行動を正当化する必要はない」と断じている。
パルと同じ立場の判事団の一人、フィリピン人のデルフィン・ハラニーヨ判事も少数意見を述べていて、この裁判を根本的に無効にしようとしたパル判事を名指しで非難している。そしてさらに「この裁判が被告たちに寛大すぎる、一部の被告の刑が軽すぎてみせしめにならない」とも述べた。
<東京裁判 日本軍による残虐行為>
開戦初期、日本軍がフィリピンを攻略、バターン半島に立てこもるアメリカ軍とフィリピン軍を降伏させ、約5万3千人を捕虜にした。しかしコレヒドールへの進撃を優先させたい日本軍は、捕虜の処置に困り、マニラに向けて、炎天下100kmの徒歩行軍(かちこうぐん)を強制。有名な「バターン死の行進」である。
これら残虐行為を受けたがからくも生き残った生存者たちが証言した。死の行進の生存者サミュエルB.ムーディ参謀軍曹は「捕虜は殴打され鋲のついた靴で蹴られ銃剣で刺された」と証言。もう1人、コルンF.ブライアン(在マレーオーストラリア陸軍第8師団)は、シンガポールで捕虜となって、日本軍によって首を切られたが、かろうじて助かった。切られた傷を見せてくださいという法廷の指示で、ブライアン証人は首の後ろのシャツをずらしグルッと回って傷口を見せた。
(パル判事と軽すぎる量刑を非難したフィリピンのハラニーヨ判事。ヒストリーCH「東京裁判」)
日本の偏った歴史教育や偏狭な歴史観を持つデマゴーグ(扇動的民衆指導者)の言葉を鵜呑みにしていると、また間違った悲惨な道に踏み込むことになる。
あなたはトム・クランシーというアメリカの作家をご存知だろうか?
当たり前のことを聞くな! そうですよね。でもひょっとしてまだご存じない少数の方へ一言解説。
アメリカのベストセラー作家の一人で、綿密な取材、該博な知識、詳細なデータを駆使した現代ハイテク軍事スリラー小説の第一人者。巨大な米軍を詳細に取材したノンフィクション著書も多く執筆している。「素顔のスペシャル・フォース」、「トム・クランシーの戦闘航空団解剖」など。ストリーテラーも秀逸で、ヒストリーCHなどの軍事関連の報道番組で、F14トムキャットの美しい飛行姿を解説して「F14は戦闘機のキム・ベイシンガー(ハリウッドの美人女優)だ!」とユニークな絶賛をしていた。
彼の作品は大物スターたちにより、数多く映画化されている。人気と実力を誇る証しだ。中でも「ジャック・ライアン」シリーズは、ハリソン・フォードやベン・アフレックなどの主演で、有名なシリーズとなっている。近年では若手スター、クリス・パイン主演で「エージェント:ライアン」が映画化された。
残念ながらトム・クランシーは、2013年66才で亡くなってしまった。もうワクワクするジャック・ライアンの冒険が読めなくなるのか。とガッカリしていたが、彼と生前共著を出していたマーク・グリーニーが彼のシリーズを引き継いで書き続けている。このマーク・グリーニーも抜群のストーリーテラーの作家で、独自のシリーズ「暗殺者グレイマン」も大好評だ。
さて彼のもうひとつの作品シリーズに「オプ・センター」ものがある。
オプ・センターは「国家危機管理センター(NCMC)の別称である。軍事、諜報、心理、法律などの専門家で組織された非常に小さな集団で、国際的な危機を事前に察知して、大きな火種になる前に封じ込めてしまおうという任務をもっている。ストライカー・チームというコンパクトなタスク・フォースも保有しており、軍事的解決能力をも持つ秘密組織だ。通常、海外脅威の探索・感知、状況によりその脅威消去をするのはCIAの任務。だが脅威が大きい時は大規模な軍事作戦での対処となる。その場合は国防総省が主体となる。それより小さい場合は、SOCOM(アメリカ特殊作戦軍)のSOF(特殊作戦部隊)とCIAやFBIなどとの共同作戦になることもあるようだ。この例で有名なのが、2011年5月1日に実施された、ビン・ラディン殺害計画「ネプチューンズ・スピア(海神の槍)」である。製作過程が論議を呼んだ映画「ゼロ・ダーク・サーティ」の元となった最重要秘密作戦である。
(作戦実行部隊チーム6とバックアップのデルタ・フォースが分乗し、ビン・ラディン<コードネーム:ジェロニモ>の隠れ家に接近する特別仕様のブラック・ホーク×2機とチヌーク×2機。 ディスカバリch「アメリカ海軍特殊部隊 ネイビーシールズPERT1」)
「被曝海域」というオプ・センターシリーズの作品がある。
海洋投棄されたはずの放射性廃棄物を強奪、「ダーティ・ボム(汚い爆弾)」を作製し、世界的テロを企むオーストラリアの大富豪とオプ・センターとの戦いを描いた作品。その作品の上巻の中で、オプ・センターのポール・フッド長官と陸軍少将で副長官のマイク・ロジャースが、独自のヒューミント・チームから東京に派遣する工作員を検討するくだりがある。日本側の情報源の藤間重雄(外務省情報分析局長)の不審な態度の理由を探るためだ。
マイクが東京に住む工作員・平戸美波里が適任だと言う。同じ日本人なのに?と不審を抱いたフッドは「平戸美波里は祖国(日本)になにか遺恨でもあるのか?」と疑問を口にする。マイクがその理由を説明する。
「彼女は朝鮮人慰安婦の娘で、日本は祖国ではない。父親は客だった日本軍兵士3百、4百人のうちの一人だ。母親が日本に復讐する機会が来ることを信じて、娘に日本人名を名乗らせた」と説明。
これがアメリカの国民的ベストセラー作家の従軍慰安婦問題の視点である。
「河野談話を見直すつもりはないが談話作成過程の検証はする」という、歴史修正主義をちらつかせる安倍首相の態度を、アメリカや韓国は納得するだろうか。
(「河野談話に対する安倍内閣の見解に関する質問主意書」2014.3.24 衆議院)
クマラスワミ報告や白馬事件等を無視して、日本軍の犯した従軍慰安婦問題を矮小化する方向に画策しようとすれば、また韓国、中国、米国からやはり日本は反省していないという非難が上がる可能性が大だ。国連女性差別撤廃委員会や国連拷問禁止委員会のこの問題に対する最終見解に、日本側が真摯に向き合っていない姿勢も問題とされている。
それに東京裁判に提出されたこの問題の資料「中国、オランダ、フランスから提出された尋問調書」を捏造だと言い張れば、サンフランシスコ条約 第11条で「東京裁判やその他の連合国軍事法廷での判決を日本は受諾」しているので、条約違反となり国際的な非難も上がるだろう。
よほど強力な反証を上げることなしに、日本は無罪だと叫ぶのは、日本の国益・国際的信用を大いに毀損するだけだろう。
(東京裁判で膨大な資料が提出された。資料番号PD5330/EX1702など日本軍の慰安婦強制連行を示す資料が含まれている。無罪を訴えるなら、これらを打ち消す強力な反証を挙げなければならない。ヒストリーCH「東京裁判」)
同小説「被曝海域」上巻のなかで、モニカ・ローというシンガポール海軍の女性海防技術少佐が登場する。男勝りの熱血女性で曲がったことが大嫌いという性格だ。海外TVドラマの「CHASE/逃亡者を追え」のアニー保安官か、「PERSON of INTEREST 犯罪予知ユニット」のサマンサ・ショウを連想させる。彼女はオーストラりア海軍と協同して放射性廃棄物投棄に関連する事件があったとされるセレベス海を調査していた。作者トム・クランシーが投影された分身であるモニカ少佐が解説する。
「アジアの小国は、アジアの大国である中国と日本に警戒心と嫌悪感を抱いている。中国は厚かましい(厚顔無恥)。しかし日本はあつかましくはないが貪欲で冷酷、人間を支配しようとする。中国は十億人以上の人口を養うため領土や資源を支配しようとするのはわからないでもない」と中国については一定の理解を示している。
同小説のこのあたりは、中国を悪く言っている部分は少ししかなく、日本と日本人への嫌悪感が露骨に多く表現されている。
戦後74年になろうとする今日、いまだ日本が戦ったから英米の植民地だった東南アジアを解放できた。だから侵略戦争ではない。東京大空襲や原爆投下の大虐殺をごまかすために東京裁判を行った。南京大虐殺はなかったと叫んだ作家の百田氏(当時NHKの経営委員)もいる。
まるで日本軍の手は真っ白で、正義があり正しいことをしたのだ、と言わんばかりだ。
●海外視座:オリバー・ストーンの視点。 歴史を知らない、教えない日本人。
映画「プラトーン」など数々の名作でアカデミー賞を受賞したオリバー・ストーン監督。
「終戦を早め、それ以上の犠牲者を防いだ」とする米国内に染込んでいる原爆投下の正当性について、オリバー・ストーン監督は全くのウソと否定する。偏った暴言を繰り返す百田氏とは大きな違いがある。またオリバー・ストーン監督は、自国アメリカに都合の良い正当性を批判する一方で、こうも言っている。
「日本は戦争被害、原爆被害を主張するだけで、中国侵略、日韓併合、東南アジアへの侵攻などの加害責任を教えていない」と苦言も呈している。
「自国の歴史を知らない日本人」問題が、いつまでも国際認識とズレを生んだまま修復できず再燃を繰り返している。
日韓の歴史教育の違いを浮き彫りにした、2019年8月17日放送の報道特集「最悪の日韓関係〜和解の道は」で、そのことが良くわかる、
2019年8月中旬、韓国の民間団体が主催する日韓の学生交流会が、鳥取県出雲市の会場で開催された。日本側の学生16人、韓国側14人が参加した。慰安婦問題について、討論を重ねていくと、韓国の歴史教育はしっかり行われていて、日本側は何も教えていなことが分かった。
観国人学生は、
「韓国では高校で「韓国史」、「世界史」、「東アジア史」があり、その「東アジア史」の科目で日本の歴史もかなり比重を占める」と語った。
日本人学生は、
「日本での教育で、まず慰安婦問題をちゃんと知っている若者が少ない」
「日韓関係を知ろうとすると思ったら、教科書よりは自分で自主的に調べないといけない。日本は」と語った。
更に「学校でその知識を学んでいるということが、自分たちと違うなと感じた」とも自覚したようだ。
日本人学生の歴史認識に関する、韓国人学生の感想は、
「私たちは歴史や痛みについて知っているが、日本人が歴史を学んでいないことは聞いていた。直接来て話してみて「ああ、本当だったんだ」とびっくりした」と驚いていた。
(慰安婦、徴用工問題などの日本の加害責任行為は若者だけでなく日本人の多くが知らない。そして教えていない。 報道特集 2019.8.17)
日本の加害行為に向き合わず、再燃を繰り返す日本無罪論、欧米侵略からの開放論は、東京裁判におけるインドのパル判事が提出した膨大な意見書に依拠している場合が多い。パルの英文にして25万語の意見書の結論は被告全員無罪としている。しかしそれはパルの本意ではなく、その意見書の中で「被告たち及び日本国の行動を正当化する必要はない」と断じている。
パルと同じ立場の判事団の一人、フィリピン人のデルフィン・ハラニーヨ判事も少数意見を述べていて、この裁判を根本的に無効にしようとしたパル判事を名指しで非難している。そしてさらに「この裁判が被告たちに寛大すぎる、一部の被告の刑が軽すぎてみせしめにならない」とも述べた。
<東京裁判 日本軍による残虐行為>
開戦初期、日本軍がフィリピンを攻略、バターン半島に立てこもるアメリカ軍とフィリピン軍を降伏させ、約5万3千人を捕虜にした。しかしコレヒドールへの進撃を優先させたい日本軍は、捕虜の処置に困り、マニラに向けて、炎天下100kmの徒歩行軍(かちこうぐん)を強制。有名な「バターン死の行進」である。
これら残虐行為を受けたがからくも生き残った生存者たちが証言した。死の行進の生存者サミュエルB.ムーディ参謀軍曹は「捕虜は殴打され鋲のついた靴で蹴られ銃剣で刺された」と証言。もう1人、コルンF.ブライアン(在マレーオーストラリア陸軍第8師団)は、シンガポールで捕虜となって、日本軍によって首を切られたが、かろうじて助かった。切られた傷を見せてくださいという法廷の指示で、ブライアン証人は首の後ろのシャツをずらしグルッと回って傷口を見せた。
(パル判事と軽すぎる量刑を非難したフィリピンのハラニーヨ判事。ヒストリーCH「東京裁判」)
日本の偏った歴史教育や偏狭な歴史観を持つデマゴーグ(扇動的民衆指導者)の言葉を鵜呑みにしていると、また間違った悲惨な道に踏み込むことになる。