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ウクライナ危機PARTⅦ プーチンの脇腹へCIAが攻撃開始。2人の娘の情報公開でプーチン激怒。

2022-04-10 09:51:00 | 軍事
●CIAがプーチンへ嫌がらせ。娘2人はこれで永久にロシアから出られなくなった。

2022年4月06日、米ホワイトハウスがロシアへの追加制裁として、ロシア最大手のズベルバンク銀行などへの米国内の資産凍結、取引停止を発表した。その際プーチンの娘2人と元妻やラブロフ外相の妻と娘らの資産凍結も発表した。米側の理由として、「プーチン氏の資産の多くは家族によって隠されている」と説明した。

だが普段の報道と違うのは、プーチンの娘二人の顔写真や動画、名前、経歴が詳しく報道されたことだ

海外の報道もネット記事もラブロフ外相の娘や妻の顔写真はおろか名前すら報道していない。米側はプーチンの隠れた資産凍結が主な理由としているが、これは表向きの理由でプーチンが最も恐れていることは2人の娘の情報が公開されることだと知っているからだ。プーチンは2人の娘の情報を公開したものを刑事罰に処するよう厳命していた。
プーチンも娘2人も互いに親子であることを公言することを頑なに避けていた。

(FNNプライムオンライン2022.4.7)



●初の大統領選(2000.5)で落選したら、「1つのことだけ考えた。子供をどこに隠す?」

筆者の過去記事「ウクライナ危機PARTⅤ われはロシアなり プーチンを剥ぐ」でも書いたように、プーチンが最も恐れていたのは、権力を失ったときに護衛が無くなり無防備になってこれまでのプーチンの悪行に対する復讐が子供に及ぶことだった。

2015年7月、クレムリンにおいて米・映画監督オリバー・ストーンがプーチン大統領に単独インタビュー(ナショナルジオグラフィックCH)したときに最も恐れを抱いていたことを吐露した。

初めて大統領選に出ることに不安や躊躇があったことをほのめかした。なぜか?
プーチンは次のように説明した。

官僚を続けていけるのか、解雇されるのかもわからなかった

エリツィンはプーチンを「大統領代行にする」と言っているのに、なぜ「解雇されるかもしれない」という話がでてくるのか?
これは「大統領にする」という話ではないからだ。エリツィンから大統領代行に指名されても大統領選で負ければ、無職となる。つまり解雇されたのと同じだ。悪行の数々をしてきて多くの人から恨みを買ってきたプーチンにとって、ただの人になることは恐怖だったのだろう。そして次の発言でそれがはっきりした。

私は1つのこと考えていた。“子供たちをどこに隠す?
なぜ?とストーンが問い返す。
考えてみてくれ。私が解任されたら護衛が外される。どうやって生きていく?どう家族を守る?

(ナショナルジオグラフィックCH「プーチン大統領が語る世界」から)


CIAはプーチンの脇腹、アキレス腱を知っていたのだろう。だがプーチンの暴走を止めるには、権力を剥奪するか、弱点を突いて止めさせるしかない。
もし残虐で手段を選ばないFSB(ロシア連邦保安庁)が反逆しプーチンを失脚させたいなら、2人の娘を拉致して体の一部をプーチンに送りつけ辞任を迫るかもしれない。
だがそこまでの非道な手段が取れないCIAは、いままで秘密のベールに隠されていた2人の娘の情報、特に顔写真や名前、経歴を公開してプーチンの不安を煽ることにしたのだろう。

下記記事は7年ほど前のNewsweek(2015.7.22)記事。

「プーチン大統領の娘と噂される女性が、まだ若いのに名門モスクワ大学で4つのポストに就いているらしい・・大学の副学長代理にも就任し、・・モスクワ大学からはコメントを得られず・・大統領報道官もカテリーナ・チホノワなる人物は知らないと政府関与を否定・・」チホノワはプーチンの義母の旧姓。

つまりこれまでは大統領の権力で娘まで特権に浴していたが、娘かどうか不明だったので公平・公正かの追求ができなかった。「やはりプーチンの娘だったか!」と世間に知れわたると権力の私物化や泥棒政治(クレプトクラシー)の仲間という目で見られるようになる。
中にはプーチンによって、暗殺・毒殺・射殺・不明の事故などで殺された遺族や政敵の復讐の標的になる可能性も出てくる。

2人の娘、マリア・ボロンツォワ氏(姉37歳)とカテリーナ・チホノワ氏(妹36歳)は、今後の行動を大きく制限されるだろう。殺戮者プーチンの娘と顔が知れてしまっては海外に出かけることは大いに難しくなる。特にウクライナに観光に行くことはやめたほうがいい。親日家で日本が好きらしいが、日本人はもうあなた方を受け入れない。
父親のプーチンは常にマッチョなロシアの男を演出していたが、案外神経質のようだ。ロシアの平均年齢は68歳、プーチンは今年の10月で70歳。多分今回のウクライナ侵攻は相当のストレスとなり寿命を縮めることになるだろう。

ソ連邦の人民約4000万人を粛正したスターリンは74歳で死亡。プーチンはスターリンほど独裁環境がよくないのでそこまで生きられるかどうか。プーチン亡き後、そこから娘や孫の地獄が始まるだろう。

(Newsweek2015.7.22)



●ポリティック・スリラー小説「プーチンの弱い裏口」

ウクライナの首都キエフにあるウクライナ大統領府から北西に約1.3kmのところに、キエフ大公国時代の中央門だった黄金の門がそびえ立っている。赤いレンガ2段の城壁門の上に教会が建てられている。そこからさらに約2km北西に行くと通りに面したアメリカ大使館がある。その3階建ての一角をCIAキエフ支局が占めていた。
格付けではCIAモスクワ支局の方が上だが、諜報活動では監視・妨害の多いモスクワよりキエフ支局の方がより成果を上げていた。

攻囲していたロシア軍が北に撤退したためキエフ市街地への攻撃の危険度は下がってきた。街は少しづつ平常状態に復帰しつつあった。CIAケースオフィサーのジョン・アンデルセンは米本土からの支援兵器、特攻ドローンのスウィッチブレード、対戦車ミサイル・ジャベリン、対空ミサイル・スティンガーなどをウクライナ軍へ配布する支給リスト調整に忙殺されていた。

大使館には元米軍所属の「義勇兵」も多く出入りしていた。彼らは、形式上は米軍を「除隊」していた。志願して除隊し義勇兵となりウクライナに入りウクライナ軍の支援をしていた。民兵、義勇兵らの軍事訓練、対地対空携帯火器の取り扱い要領、偵察用カメラの設置など多岐にわたっていた。中にはスペシャル・フォースの中でも特に優秀と言われているフォースリーコン(米海兵隊偵察部隊)隊員やレンジャー隊員もいて、DoD(米国防総省)やSOCOM(特殊作戦軍)から大使館付きになった上級職員が彼らとの連絡調整に当たっていた。DoDやSOCOMの連絡官との調整もジョンの任務の1つだった。

<COVERT OPS:Backdoor>秘密作戦:バックドア

大使館前のシコルスキー通りに1台の泥だらけでおまけに傷だらけのトヨタマークのSUVが止まった。中から薄汚れたジャンパーを引っかけ、痩せて背の高い無精ひげを生やした白人の男性が下りてきた。キエフ支局長のフィリップ・パークス、私の上司だ。鉄格子前の歩哨に身分証を見せて中に大股で入ってきた。
「ジョン、準備はどうだ?」
「見ての通り、不足していたパソコン、タブレット、通信機、モニター、ケーブル、アンテナは揃いました。椅子、テーブルなどは大使館の余っていた備品をかき集めて間に合わせました」
「OK!それでは開店できるのだな」支局長は嬉しそうに両手を合わせこすった。
「残念ながら発電機が到着していません」キエフ市内のインフラ電源はいまだ不安定だった。
「なんてこった!」支局長が汚い言葉を吐きながら天を仰いだ。
「先ほどリビウの仮補給処に催促しました。明日やって来る義勇兵がほかの物資と一緒に持ってくるそうです」
「まあいいだろう。そうだ、ジョン。お前のプラン「バックドア」にラングレー(CIA本部)からGOサイン許可がでたぞ。北部の惨状視察ですっかり忘れていた」
「そりゃいい!で、いつから始めればいいですか?」
「開始時期はお前が決めろ。金もかからずプーチンにストレスが加えられるならいつでもいいだろう」
「了解、ボス。すぐ始めます。ところで北の様子はそんなに酷い状況だったのですか?」
「ああ、ウクライナ軍の将校とSBU(ウクライナ保安庁)職員たちの査察チームに同行して、ブチャ、ボロディアンカ、ホストメリを回ったが、ウクライナの連中は全員が激怒していた。中には涙を流す者もいた」
「ひどいですね」
「ロシア野郎は本物のクソだ!何とかしないと」

(グーグルMAP)



<CIA→アセット→ツイッターバード>

<CIA>

工作が失敗したときに敵が元を辿れないように仲介役のようなワン・クッションを置くのは常識であった。「区画化」の1つだ。ジョンはハンドラー(調教師)としてアクセス・エージェント(仲介役)にメールを送った。
「バックドアが開いた」

<アセット>
仲介役のアセット(資産)はハンドラーと直接会ったことはない。これまでハンドラーからの依頼で簡単な仕事をしていて、そのたびにキチッと報酬が支払われてきたのでハンドラーを信頼していた。
メールを見たアセットは以前に受け取っていたキーを入力し、暗号化された添付ファイルを開いた。簡単な文でクラウド・ファイルのURL、解読キー、操作手順が書かれていた。アセットはクラウド・ファイルをダウンロードした。ダウンロードと同時に原本のクラウド・ファイルは削除された。クラウドを設定したアカウントも削除された。ファイルをじっくり読んだアセットはテレワーク・アプリを起動し、ファイルにあったツイッターバードに「ビジネス依頼」のメールを手順に従い送信した。

<アセットとツイッターバード>
ツイッターバードはビジネス依頼メールに添付されたURLをクリックし、通話アプリを起動した。
「ビジネスの内容は?何をしてほしい?」ツイッターバードは警戒しながら単刀直入に訊いた。メールには安全な紹介先が示されていたが、初めから信頼するわけにはいかない。
「あんたに買ってほしいファイルが2つある。そのファイルをうまく使って売れば買った値段の何倍にもなるだろう。リスクは少しあるが」
「リスクのない儲け話はおいしくないか、やる価値のないものと昔から決まっている。問題はリスクの大きさだ」
「そうだな。よろしい、1つ目のファイルはプーチンの娘、孫、隠し子らの最新情報だ。名前、住んでいる住所、警護チームの情報、最近の行動などだ」
「おい、まさか俺に殺しや誘拐をやれと言うつもりじゃないだろうな!」声から動揺が伝わってきた。
「そんなつもりはない。あんたの取り扱いリストに殺しや誘拐がないことは承知している」逃げないでくれよ。「もう1つのファイルはプーチンに恨みを持っているオリガルヒなどの情報だ。名前、連絡ルート、プーチンから受けた被害などの情報が載っている」
「なるほど」利にさといツイッターバードがニヤリと笑ったような雰囲気が声から感じられた。「オリガルヒたちに娘たちの情報を売れということか」ご名答!アセットは声には出さなかった。
「いくらだ?オリガルヒの人数は?」値段と人数を答えるとしばらく沈黙があった
「よし買おう」
「もう1つ条件がある」なんだ?とツイッターバードが問い返したので「プーチンに娘たちの情報をオリガルヒらに売ることを事前に知らせること」
「必須条件か?」そうだとアセットが答えた。
「俺は絶対に約束を守ることをビジネスルールの1番目にしている。だが例えばの話だが、うっかり忘れる場合もある。ファイルを買ってオリガルヒらに売ったが、プーチンに伝えることを忘れていた場合、どうなる?」
「プーチンにこの話をすれば、娘や孫たちの警備が強化されたり、住所が変更されたり彼女らの周辺環境に変化が起きる。あんたがファイルを買って2週間以内に環境変化がなければ、あんたがファイルを買ったことをプーチンに知らせる」
「わかった。俺はうっかり忘れたりすることはない。記憶は素晴らしく良いほうだ」アセットは笑いながら「わかっている」と答えた。


<ロシア、秘密の地下壕>
「大統領閣下、お嬢様から至急のお電話がありました。どうしても伝えておいてほしいと仰っておりました」大統領秘書官がインターホンで伝えてきた。
「なんだ?」プーチンがイライラした声で訊ねた。戦況も欧米の経済制裁も国内の反戦空気も何もかも頭にくる報告ばかりだった。
「メールを受け取っております。見ればわかると仰っておりました。お手元のアドレスに転送いたしましょうか?」
「転送しろ」嫌な予感がして胃が痛い。娘たちには余程のことがない限り連絡しないよう厳命していた。今は娘たちより孫たちのほうが可愛い。一番上の孫はもう小学校の上級生だ。大きな病気にでも罹ったのか?

プーチンは転送されてきた娘からのメールを開いた。
「パパ、助けて。何とかしてほしいの。誰か知らないけど脅迫文が届いたの。このメールに添付してあるから見て。私たちのことを詳しく調べてあるわ。イタズラとは思えない。パパに敵対する人たち全員に知らせたと書いてあるわ。カテリーナの方にも同じようなメールが届いていると言っていたわ。家から一歩もでないようにしているけど怖い。どうすればいいの?急いで連絡してください。 愛するパパへ。マリアより」

プーチンは添付された脅迫者の文書を読んだ。顔面がこわばりこめかみが膨れ上がった。いつもは寡黙で冷徹なプーチンだが、あきらかに激怒していた。