ニワトリと卵

出したい音があって、その音を探して練習する。
練習して音が出せるようになるから、また更に出したい音が発見される。
そして更に練習してしてーー
そうやって、ニワトリが先か卵が先か状態になっていく。

久しぶりに、そんなことを思い出して練習した。
わたしには、出したい音があるんだ。

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物事のはじめの動機は大抵ぼんやりしているものだ。
なんか踊りたい、なんかかっこいいかも、なんかはじめてみたい。

そのぼんやりした動機から具体的な「こうしたい」になるのはどのタイミングなんだろうか。
ひとつの具体的なこうしたい、からはじまる大きな遠い未来は果てしなく遠かったりするけれど、
でもひとつづつ積み上げて行けば、少しずつ近づいていける。

ただ、そういうときにうっかり間違ったループに入ることがある。

踊らなきゃいけないんだけど、なんで私はおどっているんだろう？
上手くなりたいのは、周りの人に負けなくないからだけではないんだろうか？

そういうニワトリと卵はすごく危険だ。
だんだん苦しくなってくる。
政治家の人たちだって苦しくなってきちゃうんじゃないかなあ、あんな風に順番間違えちゃってたら。

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かおりさんのリサイタルを観た。
かおりさんの順番、かおりさんのニワトリと卵がきれいに見えた。
美しいニワトリと卵だった。
大好きな人たちを呼んで、そこに自分も飛び込む。
恐くても畏れ多くても飛び込むと決めたから飛び込む。
その決意に至る、きれいなニワトリと卵。
すごく具体的な「こうしたい」をひとつづつ積み上げていってきたからここまで来た。
この人の強さは、こういうことなんだなあと思う。

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私はなにもないなあ、、なんで踊ろうと思ってるんだろうなあ、なんて思いながら帰ってきて、次の日朝時間があったのでスタジオでちょっとパタパタした。

あ、そうか。私は、出したい音があるよ。
「フラメンコ的に何をしたいか」はよくわからないけれど、出したい音と醸し出したい空気はあるよ。
そのニワトリと卵は、ひょっとしてフラメンコ的には違うのかもしれないけれど、でも間違いなくわたしのニワトリと卵なんだ。

かおりさん、ありがとう。
来年、必ず一緒に踊らせて下さい。