壁の穴

もう12年くらい前になるが、いまは無き八王子「カルメン」の壁に穴をあけたことがある。
原因はなんだったか忘れちゃったが、たぶん酔っぱらい客がどーのこーの、みたいな話であって、舞台からおりてきて楽屋に入る前に「ちくしょう！」って壁をけとばしたらズボっと穴があいたのだった。
コンクリートじゃなくて石膏ボードだったのね。

まったく面目ない若さゆえの過ちである。
あのころは若かった。

と、今日まで思っていた。若さゆえ、と。

今、3時間前にあけたばかりの穴が、ここに、ある。
40を前にした母ちゃんなのに。

原因はなんだったかはさすがに覚えているが、片付けがどーのこーの、5時半の鐘がどーのこーの、みたいな話で、果たして壁に穴があくほどのことだったのかは微妙だ。
うちの壁が石膏ボードだったことは十分に理解もしていたというのに、予想に反するズボっという頼りない手応え（足応え）で「カルメン」がよみがえってきて、怒りがすうっと抜けていった。

しかしこんなことしちゃって、こどもが大きくなったら絶対真似するよ。
穴を棚（ニッチ、ってやつ）にすればいいか、と、今回は思っているが、思春期、家中ニッチだらけ間違いなし。
あー。