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思ひあまりそなたの空をながむれば霞を分けて春雨ぞ降る(新古今)
詞書きに「雨の降る日、女に遣はしける」とあります。雨がしとやかに降る春の日に、作者から離れたところにいる女性を恋するあまり、その方向の空を眺めて思いを馳せたという、なんとも胸にしみる一首ですが、こんな切ない恋歌を詠んだ人は一体誰でしょう。
藤原俊成(1114~1204)。『新古今和歌集』の中心的な選者である藤原定家のお父さんです。その俊成の家集である『長秋詠藻』によると「はるごろ、しのぶる事ある女のもとにつかはしける」と言いますので、これは実際に、人目を忍びながら恋する女性のもとへ送った歌とみて間違いないでしょう。書いたところで止めたラブレターではなく、切手を貼ってポスト投函したとは、俊成さん、なかなかやりますな。
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