あたし、ひろみ。
おばさんがあたしの写真を編集してたら、勝手にしゃべりだしちゃったの。
今日はあたしのことを紹介してくれるっていうから、自分のことだしあたしが話をすることにしたのよ。
長くなるけど、聞いていてね。
まずは、いつもブログを見守って下さるママさん、パパさんたち、にぃにぃ、ねぇねぇへ。
いつもありがとう
初めての方には、はじめまして!
体育会系元気女子、ひろみです
年齢は、ヒ・ミ・ツ!!
得意技は体当たりアタック
大きな猫でもベンチから落としちゃうよ。
おばさんのお庭に住みついて、もう2ヶ月以上になるわ。
枯れ葉で作ったフカフカベッドもあるのよ。
ひろみって名前は、おばさんがつけたの。
なんでも知り合いのひろみって人に似ているからなんだって。
あたしの美貌
に似ているひとなんて、ほんとにいるのかしら。
あっ、今『びぼう~~~
?』って斜め45度に語尾を上げた人、前に出なさい!
往復ネコパンチよ!!
おばさんがよく、私の彼氏のポンちゃんを『フォトジェニックだ』って言ってるんだけど。
あたしだって、見てよ。
フォトジェニックでしょう?
一見サビ柄みたいだけれど、よ~く見たら茶色はトラ柄になってるし、黒い毛もあるけど白い毛も混ざっていて。
とっても複雑な色を持っているのよ。
触ると柔らかくてあったかくて……、おばさんをメロメロにしちゃうわよ。
頬には、こんな線柄が入っているの。
横顔もけっこう気に入ってるのよ。
毛づくろいはかかさないわ。
女子のたしなみですもの。
あ、背中のハゲを写しちゃイヤだってば!!
もう、おばさんったら歳をとり過ぎて、乙女の恥じらいってものを忘れちゃってるのよね
甘えておねだりするときは、あちこちに身体をこすりつけたくなるの。
たまにおばさんの足にもど~ん!ってしてやるのよ。
おばさんはいちいち写真ばかり撮ってるから、待ってるともう眠気がきちゃう。
目を瞑れば、あたしも癒し系になれるかしら。
いつも目が怖い怖いって言われてるからね~。
おばさんだって人のこと言えないのにね。プププ……。
あたしがこのお庭によく来るようになったのは、まだ雪が降る頃だったわ。
この辺りを巡回してたら、なんと座布団を敷いてもらってごはんまでもらっている男の子を見つけたの!
彼、ポンちゃんは足を怪我していて、いつもは心を鬼にして外の猫にはご飯をあげていなかったおばさんが、ほだされてしまったみたい。
あのままだと、ろくに歩けないし寒過ぎるし、彼がどうなっていたか分からないわ。
お外の世界はとっても厳しいもの。
そんな、おばさんの心が弱くなっている隙をついて、あたしもご相伴にあずかることになったってわけ。
あたしだって、生きていきたいからね。
ふふ、思った通り、この人はストップできなくなっちゃったわ。
ご近所のことを考えると多大なご迷惑をおかけしていないかとグルグル悩んで。
いつも悩んでるの、あの人。
ばかよねぇ……。
おとなりのおばさんがとっても可愛がってくれるし、あたしはとっても快適よ、このお庭。
この方たちは、先住猫のイブさんとしろさん。
しろさんはちょっと人見知りならぬ猫見知りだけれど、イブさんはいつもとっても気にかけてくれているわ。
イブさんがもしお外にいたら、付き合ってください!って告白してたかも……。
今の彼は最初ヘタレでね~~、全然イケてなかったし。
今は彼もぐっと大人びてきて、あたしのことを労ってくれるようになってくれて……成長したわ……。
あ、これが彼よ。
っていうか、旦那ね、もう。
彼氏のポンちゃんとだんだん仲良しになってきて、飢えることももなくなって落ち着いて暮らしだした頃。
……とんでもない事件が起こったのよ……
後にも先にも、あんな思いをしたのは初めてだったわ……。
その頃、おばさんはどうしてか、ごはんをカゴみたいなところの中で食べさせたがったの。
カリカリごはん、美味しいし、別に不満はなかったわ。
そうしたらある日突然!!
カゴがパタン!ってフタをされちゃった!!!
あたし、パニックになってすっごく暴れたわ。
でもどんなに暴れても、カゴから出ることはできなかったの……。
カゴがゆらっと持ち上げられて、ガタガタした振動とブ~~ンっていう音。
おばさんが何か言ってるけど、そんなの耳に入らないわよ。
とにかく出たくて怖くて……。
嗅いだことのない匂いのお部屋に連れて行かれて、知らないおじさんの声がした。
ドキドキしてると、やっとカゴが開いたの!!!
あたし、もう大急ぎで走り回ったわ。
何かの台の上から上へ飛び回って、いろんなものを蹴り倒したけれど、そんなの知らないわ。
天井まで何度も駆け上がったの、でも出口はひとつも見つからなかった。
怖くて高いところでじっとしてると、おばさんが何かいいながら捕まえようとするの。
あたしが「こないで」って足で蹴ったら、おばさんの手にぐっさりしちゃって。
そうするとおじさんが手にごっつい革の手袋をしてあたしをぎゅ~~!!って捕まえにきたの。
すごく強い力で押さえつけられたから、「ぎ~~~~!」って変なうなり声が出ちゃった。
とうとう捕まって、白くて柔らかいアミに入れられちゃった。
こうなるとお手上げよ、何にも見えないし動けなくなっちゃうの。
怖くて固まって震えていたら、急に片足をぎゅ~~~ってひっぱられて、チックン!って痛くなった!!!
声も出せずに固まってたわ……。
しばらくおじさんとおばさんが話をしていたみたい。
アミごと持ち上げられて、ちょっと隙間が見えた途端、また脱出したの!
捕まりたくないから棚の後ろの狭い隙間に入って隠れたわ。
でもまたあのおっきな手袋でぎゅ~~~!されて、また「ぎぇ~~~!」って大きい声だして。
結局カゴに無理矢理押し込まれちゃった。
はあ、でもまだカゴのほうがマシだわ、だれにも触られないし。
またゆらゆら持ち上げられて、ブウ~~ンって振動がして。
あたしが知っている匂いのところに帰ってきた!!
カゴのフタが開いた!!!
逃げなきゃ~~~!!!!
とにかくおばさんから離れたくて、走り疲れるまでずうっとダッシュしたの。
だいぶ遠い場所まで来ちゃったけれど、いいわ。
ここまで来れば、おばさんにきっと見つからないはず。。。
あんな怖いことする人だとは、思わなかった。
いつもごはんをくれて、なでなでして、庭にいさせてくれる人だと思ってたのに。
人間って、なんて怖い生き物なんだろう。
あたし、ポンちゃんとは違って人間がけっこう好きだったのに。
人間って、信じてはだめなのかしら。。。
怖かったのがおさまるまで、3日かかったわ。
ごはんを探して歩き回ったけれど、虫もまだあんまりいないし、ごはんをくれるおうちも見つからない。
おなかがすいた……。
のどがかわいた……。
あのお庭には、いつもおいしいお水があったなぁ……。
おばさんも、しつこく催促すればごはんをたくさん出してくれた。
おばさんのこと、すっごく怖い。
でも。
おなかがすいたの……。
結局私、帰ることにしたの。
もしもまた怖いめにあったとしても、飢えて死ぬよりはマシだもの。
それによく考えてみれば、あのトロいおばさんにそう何度も捕まる気がしないし。
あたしの運動神経なら、きっと逃げられるわ。
お庭に帰ってきた。
しばらくすると、おばさんがドアから出てきた。
怖いから遠目からじいっと見ていると、「ひろみちゃん!!」って呼ばれた。
おばさん、すぐ引き返して、カリカリごはんを持ってきてくれた。
おなかいっぱいになって、お水もゴクゴク飲んで。
ホッと一息。
よかった、すぐに捕まることはなさそうね。
夕方にはポンちゃんとも再会できて、頭突きと体当たりで挨拶したわ。
何もかも元通りってわけにはいかないわ。
あたし、人間がすっごく怖くなっちゃったし。
おばさんも、気まずそうに目も合わせようとしない。
なんの会話もないまま、1週間くらい過ぎた。
これは後から聞いた話なんだけど。
おばさんはあたしに『ヒニンシュジュツ』っていうのをしたかったみたいなの。
赤ちゃんができたらいろんな人が困るから、できないようにするんだって。
とんでもないことをするつもりだったのね。
何を考えてるのかしら、人間って。
でもそれをして、病気の検査とかワクチン接種とかすると、『サトオヤボシュウ』っていうものができるらしくて。
『サトオヤ』ができると、イブさんたちのようにおうちでぬくぬく暮らせるんだって。
おなかいっぱい、いつでもごはんが食べられて、寒い冬でも凍えずに済むらしいわ。
ママ代わりの人に、どんなに甘えてもいいんだって。
そんな天国みたいなところ、ほんとうにあるのかしら?
じゃあ探してよおばさん、『サトオヤ』っていうの。
え、無理!? どうして……。
え、あたし、病気なの……?
難しいことはわかんないんだけど、あの痛いチックンをされたときに血を採られたらしくて。
検査したら、ハッケッキュウが76500もあったんだって……。
すごく重い病気かもしれないの……?
足がふらついたり嘔吐したりしてないかって聞かれたらしいんだけど、あたしはこの通りいつも元気いっぱいだし。
おばさん、とてもそうは見えないって言ってた。
あたしだってそうよ、元気そのものよ??
お医者さんのおじさんも、あたしの暴れっぷりを見ていたから、その数値が信じられずに何度も何度も機械で調べてくれたんだって。
故障してるのかとも思ったって。
でも何度試しても一緒で……。
こんなに数値が高いってことは、それだけどこかにひどい炎症を起こしている可能性が高いって。
これじゃあ全身麻酔したら命にかかわるから、シュジュツはできませんって言われたんだって。
他の数値は正常値内だったらしくて、もしかしたら重いストレスかもしれないって。
ここまで数値が上がるにはそうとうな期間があったはずだけどって。
確かにこの冬はとってもとっても寒くて、冷たい雪が何度も降ったし。
すごく辛かったわ……。
背中のおハゲは何か関係がありますか、なんて、おばさんがまたおばかな質問をしたらしいんだけど。
皮膚病が原因でこの数値なら、全身がズルズルになってくるくらいまでいかないと……って言われたらしい。
「一週間から10日ぐらいしたら、もう一度検査してみましょう」ってお医者のおじさんは言っくださっていたそうよ。
だけど、あたしもだけどおばさんも、あの日のことはすごくこたえたみたいで。
あたしのうめき声や暴れ回って迷惑をかけたこと、グッサリいっちゃったことのショックは大きかったって。
またすぐに捕まえてって気分にはとてもなれなかったんだって。
そうね、あんなに大変な思いをあたしにさせて、まったく何の為にもならなかったんだものね。
そりゃあ落ち込むわよ。
「この傷の深さは、きっとひろみちゃんの心の傷の深さだわ!!」
……、落ち込むにも限度があると思うのよね。
巷でよく見る、『避妊手術済み、病気陰性、ワクチン、虫駆除済み』っていう状態まで持っていくのが実際にやるとどんなに大変なのか、おばさんは身にしみて分かったらしいわ。
ましてや、引き取って帰って家で全ての面倒を見るまでいくと、もう神のレベルだって。
今はそんな風に一生懸命お外の猫たちを世話する人がたくさんいるんだって。
すごいなぁ……。
おばさんが少しずつ浮上してきたのは、3週間くらい経った頃だったかしら。
もう一度勇気を振り絞って、あたしをまた病院へ連れて行こうとしたんだけれど。
あたし、するりとアミから逃げてやったわ!
甘いのよ、おばさん!!!
おばさんはそれきり、無理に連れて行くのをやめたの。
根性がないわねぇ。
おばさんとあたしの仲は、少しずつ回復してきたわ。
あれから2ヶ月近く経って、あたしはもうおばさんに体当たりアタックしても平気よ。
この人、チョロいって分かったから、もう怖くないもん。
そして、新しい出来事があったの。
ポンちゃんと晴れて夫婦になって、いつも仲良しだったから。
この間、あたしに赤ちゃんができたの!!!
3匹生まれたわ!!
ポンちゃんにそっくりな子と、あたしによく似た子と。
あと、真っ黒な子が一匹。
……、え?
どうして真っ黒な子が生まれたのかって??
な~いしょ。
おばさんがいつか、真っ黒なオス猫ちゃんを2日連続で見かけたらしいわよ。
でも、真っ黒な子は、生まれて3日くらいは動いてたんだけれど他の仔猫たちに踏まれまくってて。
すぐに虹の橋を渡っていってしまったの。
おばさんが3日くらい、一緒にいさせてくれて。
あたしがいないときに、お庭のどこかに埋葬したみたい。
残った2匹を、あたし頑張って育てるわ!!
ごはんを探しにいく必要がないから、ほとんどずうっと仔猫たちの傍にいるの。
しょっちゅうおっぱいを飲ませて、いっぱいペロペロしているわ。
仔猫の天敵であるカラスに襲われないよう、バッチリ安全な場所に仔猫たちを隠してあるわ。
おばさんにもしばらくバレなかったくらいよ。
とっても狭いけど、その狭さがいいのよね……。
おばさんが段ボール箱で仔猫のおうちを作ってくれたけど、人間の匂いがするものはやっぱり嫌で入らなかった。
今いるところは、嵐が来たら雨が吹き込んでくる場所なんだって。
そうなったらそのとき考えるから心配しないで。
あ、一応箱は置いておいてね。候補には入れておくから。
仔猫たちは、あたしがいない時はこうしてお互いに相手を枕にしようと乗り合っているわ。
最初の頃は家の中まで聞こえてくるほど大きな声で鳴いていたのに、最近あんまり声を出さないわね。
心配だけど、おっぱいは飲んでいるし、大丈夫だと思うんだけど。
あの『に』に○をつけたような甲高い声、可愛いんだけどな……。
っていうかさ、おばさん、見に来過ぎよ!!
一日に何回見に来るのよ。
あたしだって一応野生の猫なんだから、そんなに仔猫たちに近づかれると怖くなるのよ。
やめて~~~って鳴いてもちっとも動いてくれないし。
だから、こうして隠しにいくの。
こうすると完全に見えなくなるから、おばさんも諦めて帰っていくわ。
でもたま~に、はみ出してきちゃうこともあるのよね。
じっとしてなさい!!って言っても、まだ小さ過ぎて分かんないんだ。
おばさんに「見ないでよ!」って目で訴えても、ちっとも聞いてくれないの。
パシャパシャ写真ばっか撮ってるわ。
おばさんがくれたこのフリースの古着、仔猫たちは気に入っているわ。
朝夕また寒くなったからって、狭いところに無理矢理押し込んで来たの。
心配性なのよね~、あたしが四六時中あたためてるから大丈夫なのに。
でもまあ、いいか。
お礼に少しだけ、仔猫たち、見せてあげる……。
あたしの子供、可愛いでしょ!!
子供ができるとさっさと去っていくオス猫も多いけど、ポンちゃんパパは違うわ。
ちゃあんと毎日傍に来てくれる。
「まあちょっとぐらい、ゆっくりしなよ」って、こうして労ってくれるの。
あたし、頭でグリグリもぐりこんじゃう。
パトロール中にも仔猫たちの様子を見にきてくれるわ。
あの大きな身体ではとても入れないから、外からクア、クアって鳴いて、大丈夫か~って声をかけてくれるの。
心強いわ。
心配してくれる旦那さんがいて、あたし幸せよ……。
仔猫たちは、もう少し大きくなったら病院に連れて行って検査して、『サトオヤボシュウ』っていうのをするそうよ。
仔猫たちを手放すなんて……、とても今は考えられないけれど。
でも、もしかしてイブさんたちのように、この仔たちがぬくぬくと暮らせるなら。
そのほうが良いのかもしれないわ。
お外の苦労は、させたくないもの。
ブログを見て下さっているママさん、パパさん。
にぃにぃ、ねぇねぇ。
どうかどうか、この仔たちに温かいおうちで暮らさせてあげてください。
おなかいっぱい食べられて、安心しておなかを出して眠れるような。
そんな生活をさせてあげたいんです。
どうかどうか、お願いします。
え、何、おばさん。
え~~、あたしのサトオヤもまだ諦めてないの~~~?
まぁあたしだって、だれかにめいっぱい甘えられる生活がしてみたいけれど。
もう無理じゃない??
あら、またあの怖い病院へ連れて行く画策をしているのね。
やれるものならやってごらんなさ~い
そう簡単には捕まらないわよ~~
わよ~~~!
わよ~~
わよ~
わよ……
……
最後にちょっとだけ。
あたしの声、聞く??
おばさんは、ちょっとしつこい声だって言うんだけど、癒し系だって言ってくれる人もいるのよ!!
リンクは
こっちよ!!
たくさん読んでくれて、ありがとう
それじゃあ、またね