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Childhood’s End   ~第10話・暴力教師~

2005-03-20 20:53:19 | star spiritsシリーズ☆
6年生になると、『クラス替え』があり、文人は忍と同じクラスに、竜次は洋次と同じクラスになり、文人と竜次は初めてクラスが離れてしまった。
竜次と洋次のクラスの担任には、他校から転勤してきたばかりの大瀬浩一という体育会系の男性教師になった。
HRの時間、大瀬は竹刀を持って教室に入ってきた。そして、自己紹介をしていた際、窓際の席に座っていた洋次の髪の毛の色を見ると、怒りをあらわにした表情で、洋次のもとへツカツカと歩いてきた。
「おいっ、コラッ、貴様っ! ガキのくせに、この髪の毛の色は何だっ…!」
大瀬は、いきなり洋次の髪を掴むと、そのまま席から引きずりだした。
「いてっ…! 何すんだよっ…!」
洋次が思わずキッと大瀬を睨みつけると、大瀬は逆ギレし、そのまま洋次を廊下に引きずり出すと、水飲み場に連れてきて、水道の蛇口をひねって洋次の頭から水をかけ流した。
「教師に向かって何だっ! その反抗的な目つきはっ!」
他の教室にいた生徒達も、大瀬の怒鳴り声を聞いて廊下に出てくると、その様子を見て、思わず震え出した。
「先生、やめて下さいっ!」
竜次が止めようと駆けつけたが、大瀬が手に持っていた竹刀で打たれてしまった。
「やめて下さいっ! 沼津君は、亡くなったお母さんがイギリス人で、髪の毛の色は、生まれつきなんですよっ…!」
騒ぎを聞きつけた他の教師達が慌てて駆けつけてきて、大瀬に洋次の髪の毛の色について、事情を説明した。
「…何だ、貴様、半人前かっ…?」
大瀬は、洋次に侮蔑の眼差しを向け、そう言い放った。
「何だとっ、この野郎っ…!」
洋次が反撃しようとした時、竜次はとっさに洋次を取り押さえ、有無を言わさずそのまま保健室に連れて行った。
竜次は、保健室に来ると、先生がいないので、棚の引き出しからバスタオルと着替えを出してきて(いつも文人を連れて来ているので、どこに何があるか把握している)、洋次に手渡した。
「…竜次、何で止めたんだっ? アイツ、俺の事バカにしたんだぞっ…!」
洋次は、濡れた服を脱ぎ、髪を拭いながら、竜次を睨みつけた。
「洋次、少し落ち着けっ…。いくら俺達がケンカ慣れしてるからって、相手は大人だぞっ…!」
竜次はそう言うと、洋次の額を指でバチッと叩いた。
〈大人だろうが、教師だろうが、あの野郎、絶対許さねぇっ…!〉
洋次は大瀬に対して沸々と怒りがこみ上げてきていた…。

担任の大瀬は、何かにつけてクラスの生徒達に対して、体罰を加えるようになった。生徒達は、なるべく大瀬を怒らせないよう、毎日顔色を伺い、怯えながら授業を受けていた。
1学期の半ばになると、大瀬の体罰はエスカレートしていった。特に、洋次に対しては、ハーフだという事だけで『目の敵』にでもしているかのように、他の生徒達以上に体罰と嫌がらせを加えていった。
そんなある日、大瀬は、洋次の髪の毛を掴むと、持っていたハサミで、洋次の髪を切り落とそうとした。
「先生っ、いい加減にしろよっ…!」
普段温厚な竜次も、この時ばかりは黙って見過ごすワケにはいかなくなった。洋次に対する大瀬の体罰と嫌がらせがあまりにもひどいので、竜次は見るに見かねて止めに入った。
その結果、竜次も大瀬に『目の敵』にされてしまい、洋次と一緒に体罰と嫌がらせを受けるようになってしまった。
竜次と洋次の体のアザは、日毎増えていった…。

ある日の放課後、竜次と洋次は、誰もいない体育館そばの裏庭で話し込んでいた。
「…俺達、このままだと、卒業するまでアイツに体罰受けて、その最中に、殺されかねないぞ…」
「あぁ…」
竜次も、大瀬の度を越えた体罰に対し、我慢の限界に来ていた。
「けど、どうやって仕返ししたらいいと思う…? もし失敗したら、今まで以上にひどくなるかも…」
洋次はいつになく弱気になってそう言い、溜息をついた。
「…そういえばアイツ、前の学校でも、同じように体罰してたんじゃないか? だったら、俺達と同じように、アイツの事恨んでるヤツ、沢山いるんじゃないのか…?」
竜次の口からそんな言葉が出ると思っていなかった洋次は、驚いて思わず振り向いた。
〈竜次…? お前、何言ってる…?〉
洋次は、うつむいた竜次の表情が、次第に険しくなっていくのを見て、思わず背筋がゾッとした。
「…なぁ、洋次。明日、大瀬が前にいた小学校に行って、俺達みたいに体罰加えられた奴等集めてみようか…?」
竜次の口から信じられない言葉を聞き、洋次は耳を疑った。
「…おいっ、竜次っ、お前、本気で言ってるのかっ…?」
「ああ…」
この時、竜次の心の中で、大瀬に対する『憎悪』が芽生えていた…。

人生には『試練』が…

2005-03-20 11:36:00 | 最新News☆
人間、長く生きていく上で、様々な『試練』が待ち受けているもの…。

ただ、それをどう乗り越えていくか…???

間違った方法で乗り越えようとすると、たとえ、その『試練』を解決したとしても、倍以上の『後悔』が待っている…。

…辛いから、苦しいからと、逃げ出してしまうと、もっと大きな『試練』が目の前に立ちはだかった時、乗り越えられなくなる…。


次回の『Childhood’s End』第10話は、竜次と洋次の二人に大きな『試練』が…!!!

第9話まで…

2005-03-19 11:09:01 | 最新News☆
 『Childhood’s End』を第9話まで読んで下さっている方々、グラッチェ♪

 今回、『Re・Birth』の主人公・植村好美が登場致しましたが、好美が最も重要な役割をするのは、後半以降です…。。。

 そして、次回の第10話は…、竜次と洋次の二人に、思わぬ運命が…!!!

 それでは、次回もお見逃しなく…♪

Childhood’s End ~第9話・ライバル、登場~

2005-03-18 22:29:24 | star spiritsシリーズ☆
その日の夜、忍が前にいた小学校の友達の少女から電話がかかってきた。しばらくの間、少女は柔道の試合に備えて、毎日練習に明け暮れていたので、忍と話すのは久々だった。
少女は、今度の日曜、大会の小学生女子の部に出場する事を、忍は、学校での最近の事を話してから、洋次との話し合いの一部始終を話した。
「へぇ…、面白いヤツだねぇ…♪」
忍の話を聞き、少女は笑いながらそう言った。
“笑い事じゃないよ~、そいつ、本っ当、しつこいんだから~っ…”
「要するに、あたしがそいつにひと言、ガツンと言えばいいんでしょ?」
“…お願い出来る?”
「いいよ♪ 面白そうだし♪」
“面白くない~っ!”
「ハイハイ、わかったわかった♪ じゃあ、今度の日曜日ね♪」
電話を切ると、少女は自分の部屋へ戻っていった。
〈何だか、忍の周り、面白い事になってるみたい♪〉
少女は、忍が本気で困っているのを知りつつ、面白がっていた。

                                    ○

日曜日の昼頃、忍は三人を連れて『全道小学生柔道選手権大会』を観に来た。
忍達が会場に到着すると、試合は既に始まっていて、忍の友達の所属する道場のチームは、女子団体戦で優勝していた。午後からは、個人のトーナメント戦が始まっていた。
「すげぇな、あの女…」
女子の部の試合を観ていた他の道場の選手達が、口々にそう言いながら、場内から出てきた。忍は、入口付近に貼り出されているトーナメント表を見て、少女が順調に勝ち進んでいる事を知った。
「すごいっ…、さすがっ…♪」
その時、会場内にアナウンスが流れた。
“次は、小学生女子の部の、準決勝です…。出場する選手の皆さんは、速やかに集合して下さい…”
アナウンスが流れた後、場内の入口付近に女子の選手達が集合した。その中に、一人だけ背の高い選手がいた。
「あっ…! 好美ちゃんだっ…♪」
忍は、嬉しそうに手を振りながら、その選手のところへ駆けつけた。
「好美ちゃ~ん♪」
忍の声を聞くと、その選手は振り向いた。その選手こそ、忍の友達の、植村好美である。
「忍、おひさ♪ 元気そうじゃん♪」
好美は、駆けつけてきた忍をギュッと抱きしめた。柔道着姿で背が高いせいか、忍とは正反対の『男前』の少女である。
〈…あれじゃあ、真逆カップルだよな…〉
竜次は、二人を見てそう思っていた。
「何だか、忍君、ものすごく嬉しそうだね…」
文人がそう言うと、洋次はムッとした表情で二人を見ていた。好美は、見れば見るほど、洋次よりはるかに『男前』だった。
〈あーあ、見た目でもう既に負けてるよ…〉
竜次と文人は、洋次と好美を見比べながら、そう思っていた。
好美は、忍と話しながら、チラッと三人の方を見た。
「あいつら、忍の新しい友達?」
「うん…」
「…で、忍が言ってた茶髪って、あいつ?」
「…そう…」
好美は、忍と一緒に三人のところへ歩いてきた。そして、洋次を見ると、余裕たっぷりの表情で、ニッと笑った。
「忍にしつこくしてるのって、あんたの事?」
「…てめぇか、忍と付き合ってるってヤツは…」
二人は、ほぼ同じ位の背の高さだった。だが、好美の方が、女にしておくのがもったいないほど(?)、『男前』だった。二人は、互いに睨み合った。
「…どういうつもりか知らないけど、忍に変なマネしたら、ただじゃおかないよっ…」
「うるせぇ、このオカマ野郎っ…」
洋次が悔しまぎれにそう吐き捨てると、好美はそれを聞いてブチ切れてしまい、洋次に『一本背負い』をかけ、投げ飛ばした。
「あのバカッ…!」
忍は、思わず手で顔を覆った。
「…ひょっとして、沼津君、あの子の事相当怒らせたんじゃ…?」
「…らしいな…」
好美は、洋次を投げ飛ばした後、ムッとしたまま集合場所へ戻っていった。そして、時間になると、場内へ入っていった。忍達も、観客席に座ると、好美の試合を観た。
「すげぇな、あの女…」
 竜次は、好美の動きを無意識に観察し、その強さに圧倒されていた。好美は、力技もさる事ながら、相手の攻撃をかわす時も、一切無駄な動きがなく、スキを与えなかった。
好美は、準決勝でも1分とかからないうち、相手に『一本背負い』をかけ、決勝に進出した。
洋次もまた、無言で好美の試合を観ていた。
〈…あの女、男が相手でも、勝ちそうだな…〉
洋次は、投げ飛ばされた時、自分より好美の方が思った以上に強いという事を肌で感じ、好美に逢ってしまった事を後悔していた。
〈…あの女に勝つには、もっと強くならないと…〉
洋次は試合を観て、好美と対決する事を、一旦あきらめていた。
この日、好美は小学生女子の個人の部で優勝した…。

洋次は次の日から、学校が終わると一旦家に帰ってから、近くの公園に行って自主トレーニングを始めた(文人は、その事を竜次から聞かされて知り、自主トレーニングの場所を今までの公園から別の公園に移した)。
〈…あの女を倒して、絶対に忍を奪ってやるっ…!〉
好美に対するライバル意識が、のちに洋次自身をとんでもない方向へ進ませるキッカケになってしまう事を、この時、誰も予想しなかった…。

今日で10日経ったけど…

2005-03-18 13:39:54 | 日記&独り言☆
…新しい職場に行ってから、風邪は移されるし、商品の棚の陳列とか、休む間もナシ…。

しかも、何だか、一人で品出しさせられて、他のパートやバイトの人達は、別の棚で喋りながらやってるし、私、シカトされてるっぽい…。
どっちみち、引っ越すまでの間の繋ぎなんだけど、今からもう嫌気さしてきている…。

間違ってしまった~っ!!!

2005-03-18 11:09:46 | 最新News☆
 昨日、携帯に『Childhood’s End』の第8話を入力して、『送信トレイ』に保存しようとしていたら、間違って『送信ボタン』を押してしまい、当ブログに掲載されてしまった…。。。

 そういったワケなので、ちょっと進めるのが早いのですが、本日中に第9話を送信する予定です…。。。

 第9話では、いよいよ、あの人物が登場する予定…!!!

Childhood’s End   ~第8話・洋次、フラれる~

2005-03-17 09:57:16 | star spiritsシリーズ☆
その『嫌な予感』は、的中してしまった。洋次は、忍が男だという事より、気の強さと(初めて投げ飛ばされたので)、クラスの女子生徒達よりも『美少女顔』である事から、本気で忍に惚れてしまったのである(要するに、美形なら男も女も関係なくなってしまったのであるが)。
「…大変だな、アイツも…」
最初、竜次は洋次に注意していたのだが、それでも尚、洋次は忍をあきらめないので、竜次もいちいち注意するのが馬鹿馬鹿しくなってきた…。
そんなある日、洋次は珍しく風邪で寝込んでしまい、学校を休んでいた。この日の給食時間、忍は洋次がいないのを幸いに、文人と竜次にグチをこぼしていた(他の生徒達は転校初日以来、忍を怖がって近寄らないので、唯一忍を怖がらない三人と一緒に行動するようになっていたのである)。
「本っ当、何なんだよ、あのバカ~ッ…!」
「…アイツも、根はいいヤツなんだけどなぁ…」
「だからって、男には興味ないからなっ!」
忍がそう言いながらパンにかじりつくと、文人はクスッと笑った。
「笑い事じゃないよ~っ! 本っ当、誰かあのバカをどうにかしてくれ~っ!」
忍は、パンを口に食わえたまま、たまらず叫びだした。竜次が苦笑いしていると、忍はチラッと竜次を見て、
「そりゃあさ、竜次や文人君は、仲が良いみたいだけどっ…!」
と、思わずそう言った。竜次と文人は、一瞬固まった。
「いやっ、その、変な意味じゃなくてっ…!」
忍は慌てて言い直した。
「当たり前だっ…!」
竜次は、顔を真っ赤にして怒鳴った(かなり動揺していたのである)。
「…ねぇ、忍君…。そういえば君、前にいた学校で、好きな女の子とか、いなかったの…?」
文人は、何事もなかったように平然と牛乳を飲みながら(内心、かなり動揺していたが、顔に出さず)、突然そう切り出した。すると、忍は、食べていたパンを、思わず喉に詰まらせてむせた。
「いるのかっ…?」
竜次は、忍が顔を真っ赤にして、かなり動揺しているのを見逃さなかった。忍は、牛乳を一気に飲み干した後、一瞬ためらったが、黙ってうなずいた。
「…じゃあ、その事をきちんと沼津君に話してみたら? そしたら、沼津君もあきらめると思うし…」
「…そうだな…。この際、アイツにハッキリ言った方が…」
二人がそう促すと、忍は更に顔を真っ赤にした。
「…でも、向こうが…、俺の事、一体どう思ってるか、ちゃんと訊いた事ないし…」
「ひょっとして、片想いか…?」
忍は、相手の事を思い浮かべると、目を潤ませ、黙ってうなずいた。
〈…よっぽど、その子の事が好きなんだなぁ…。忍君が好きな子って、一体どんな子なんだろう…?〉
文人は、いつもと違う忍の一面を見て、そんなふうに思っていた。
「片想いだろうが何だろうがっ、好きな子がいるってアイツにハッキリ言っといた方がいいんじゃないのかっ…?」
竜次はまだ顔が赤いまま(まるで自分に言いきかせるように)忍に言った。文人も、その意見に同意して、うなずいた。
「…うん…。それも、そうだね…」
忍は、二人に促されて、洋次にきちんと話そうと決心を固めた。

数日経った放課後、洋次がやっと風邪を治して学校に出てきたので、忍は、誰もいない体育館に、洋次を呼び出した。念のため、竜次と文人はステージの段幕の陰に隠れ、様子を見ていた…。
「…何、話って…♪ やっと俺と付き合う気にでもなったのか♪」
洋次は、珍しく忍の方から呼び出してきたので、内心、期待しながら体育館に入ってきた。
「…ハッキリ言っておく…。悪いけど俺、前にいた小学校に好きな女の子がいるからっ…。それに、俺、男に興味ないからっ…」
忍は最初、洋次の顔を見ないでそう言い放った。
「…ウソだろっ…?」
一瞬、洋次の顔がひきつった。
「…その子とは今でも、学校が休みの日とか、時々逢ってるんだ…」
最初、忍が冗談で言っていると思っていた洋次だったが、振り向いた忍を見ると、真剣な表情をしていたので、洋次の表情もみるみるうちに変わっていった。洋次は、ちょうど足下に転がっていたボールを見ると、ステージに向かって思い切り蹴った。ボールは、鈍い音を立てて中央に当たり、跳ね返った…。
「ヤバイッ! 洋次のヤツ、キレかかってるっ…!」
竜次は、洋次がキレる寸前だと察知し、様子を伺った。だが、ボールを蹴った事によって、洋次は少し落ち着いてきたらしく、平静さを保っていた。
「…本当かどうか、そいつに逢わせろっ…!」
洋次は、忍に背を向けてそう言った。
「…逢わせたら、納得して、俺の事あきらめるんだろうなっ…!」
「相手次第だっ…!」
話の流れで、忍が前にいた小学校の友達と洋次を、今度の日曜日に逢わせる事になってしまった…。

Childhood’s End ~第7話・新たな友情~

2005-03-16 00:46:19 | star spiritsシリーズ☆
文人は、自分達の教室から、理科室や美術室、家庭科室、音楽室、視聴覚室、図書室、体育館など、ひと通り忍を案内した。忍は、何だかうわの空で、文人の説明を聞いている間ずっと、どこか悲しげに遠くを見ているような目をしていた。文人は、その様子が気になった。
「…ところで、藤沢、何でまた近くの小学校から転校してきたの?」
文人は、忍が何故自分達の小学校から数キロ程しか離れていない白石北小学校から転校してきたのか、腑に落ちなかった。家が引っ越してきたとはいえ、わざわざ転校しなくても、充分通学出来る距離である。
忍は、文人の質問に答えようか否か、迷っているようであったが、一旦深呼吸すると、担任にも明かしていない『経緯』を話し始めた。
「…俺のお父さん、道警本部のある特殊な部署にいた刑事で、ここ何年か頻発して起きてた事件を追っていたんだけど、夏休み中、道警から連絡が入って…」
忍の家族が駆けつけた時、父親は既に息を引き取っていたらしい。父親がそれまで集めていた事件の資料は、一つ残らず消えてしまったのだという。忍の家族は、同僚だった刑事から、用心の為引っ越すようアドバイスを受け、姓も母親の旧姓『藤沢』に変えたのだという…。
忍は、そこまで話しながら、次第に目から涙が溢れてきた。
「大丈夫…?」
文人は、カバンの中からハンカチを取り出し、忍に手渡した。
「…ごめん、ありがと…」
忍は、ハンカチで慌てて涙を拭ったが、拭えば拭う程、涙が頬をつたってポロポロと流れ、止まらなくなってしまった。
「…まいったなぁ…、もう吹っ切ったはずなのに…」
文人は、体育館そばにある水飲み場へ忍を連れてきた。忍は、蛇口を目一杯ひねり、勢いよく出てきた水で、バシャバシャと顔を洗いだした。
〈…そんな簡単には、吹っ切れないよね…〉
文人の目には、悲しみを吹っ切ろうと必死であがいている忍の姿が、傷々しく映って見えた。
〈…そういえば、あの二人も、お母さんを亡くしているんだっけ…。二人とも、どうやって悲しみを乗り越えたんだろう…?〉
文人は、竜次と洋次も、母親を亡くして心に深い悲しみを抱えている事を思い出していた。今まで二人とも、その話題に触れず(もしかすると、あえてその話題を避けてきたのかもしれない)、文人に接していた。自分の親を一人亡くすという事が、どれほど辛く悲しい事なのか、両親とも健在している文人には、計り知れない事である。竜次は、そんな事おくびにも出さず、文人がケガをしたり倒れたりすると、保健室へ連れて行ったり、いじめに遭うと助けたりと、文人を弟のように思って(本心は違うのだが)面倒を見ている。洋次も、機嫌の悪い時は文人に『八つ当たり』するし、乱暴なトコがあるが、文人が他の生徒から『嫌がらせ』を受けていると、竜次と一緒になって助けていた。何より、洋次は『兄想い』の優しさを持っていた。
〈…この子も、きっと優しい子なんだろうなぁ…〉
そんなふうに文人が考えているうち、忍は少し落ち着いてきたのか、蛇口をひねって水を止め、ハンカチで顔を拭った。目は少し赤くなっていたが、腫れはひいていた。
「大丈夫…?」
「…うん…、ごめんね。何か、転校早々、変なトコばっかり見せちゃったね…」
忍は、文人を心配させまいと、ニコッと笑った。しかし、忍のまつ毛には、水しぶきとも涙ともつかない水滴が付いていた。
「沼津君を投げ飛ばしたのには、びっくりしたけどね…」
文人は、話題を変えようと、忍が洋次を投げ飛ばした話をぶり返した。
「…アハハ…」
文人と忍は、互いに顔を見合わせ、苦笑いした。この瞬間、忍も文人の『友達』になっていた…。
文人と忍は、玄関に来て靴を履き替えた。そして、二人一緒に外へ出た時、校門のところで待っている竜次を見つけた。
「あれっ、竜次君っ…? 今まで、待っててくれてたのっ…?」
「…あんまり遅いから、何かあったのかと思って…。それに、さっきまで洋次が校庭でウロウロしてたから、もしかしたら、また文人に八つ当たりするんじゃないかと思って…」
洋次は、校庭でしばらくウロウロした後、少し気が済んだのか、ちょっと前に帰ったらしい。
「ごめん、俺が学校の中を案内してって頼んだから…」
忍は文人に、申し訳なさそうにそう言った。
「…今日は、ありがとう…。じゃあ、また明日…」
忍はそう言うと、先に一人で帰っていった。
「文人、何でもなかったか…?」
忍の姿が見えなくなってから、竜次は心配そうに訊いてきた。文人は、忍から聞かされた話を、竜次達には内緒にしておこうと思った。
「別に、普通だったよ…。沼津君があまりにもしつこかったから、頭に来たんだって言ってた…」
そう言いながら、文人はまた思い出し笑いした。
〈…何だか、これから大変そうだなぁ…〉
竜次は苦笑いしながら、何故だか『嫌な予感』がした。

もしかしたら…

2005-03-15 17:47:22 | 最新News☆
現在連載中のオリジナル小説・第3弾『Childhood’s End』の流れ次第では、前作の『Re・Birth』を、修正する事になるかも…。

そうなると、今あるカテゴリから、一旦削除か、『修正中』という表示を出すかもしれません。