野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

もうどこでも「フジ」の花が満開だ(春の花 21-34)

2021年04月17日 10時04分37秒 | 

もうどこでも「フジ」の花が満開だ。藤という漢字は「つる性で木本性の植物を指す言葉」だという。マメ科の花らしい紫の花を一面につけるととても豪華にみえるので、どこの公園でも植えられている。花芯の黄色がほんのりとランプを灯すようだ。『源氏物語』でも中庭に藤が植えられていた局にいた「藤壺の女御」の子供が光源氏である。昔からあいされてきた花である。俳句の世界でも例句は無数にあるようだ。「藤咲けばその蒼空が目に残る 右城暮石」。下から見上げた藤は青空によく似合う。

(2021年春 川崎市)

■春の花シリーズ

「サクラソウ」(春の花 21-01)
「ワスレナグサ」(春の花 21-02)
「ヒメツルソバ」(春の花 21-03)
「レウィシア」(春の花 21-04)
「オオキバナカタバミ」(春の花 21-05)
「スイート・アリッサム」(春の花 21-06)
「ドウダンツツジ」(春の花 21-07)
「カントウタンポポ」(春の花 21-08)
「ホウキモモ」(春の花 21-09)
「アリウム・トリケラトゥム」(春の花 21-10)
「シャガ」(春の花 21-11)
「チョウセンレンギョウ」(春の花 21-12)
「キブシ」(春の花 21-13)
「キランソウ」(春の花 21-14)
「アネモネ」(春の花 21-15)
「タネツケバナ」(春の花 21-16)
「ヘビイチゴ」(春の花 21-17)
「山吹」(春の花 21-18)
「ホトケノザ」(春の花 21-19)
「海棠」(春の花 21-20)
「セイヨウシャクナゲ」(春の花 21-21)
「ホウチャクソウ」(春の花 21-22)
「ラミウム・ガレオブドロン」(春の花 21-23)
「キツネノボタン」(春の花 21-24)
「ビオラ・ソロリア・プリセアナ」(春の花 21-25)
「シロヤマブキ」(春の花 21-26)
「 アニソドンテア・マルウァストロイデス」(春の花 21-27)
「オランダミミナグサ」(春の花 21-28)
「斑入りビンカ・マジョール」(春の花 21-29)
「チエリーセージ」(春の花 21-30)
「スズラン」(春の花 21-31)
「ユウゲショウ」(春の花 21-32)
「レンゲ」(春の花 21-33)

■早春の花シリーズ

「チロリアンデージー」(早春の花 001)
「クリスマスローズ」(早春の花002)
「ツルニチニチソウ」(早春の花 003)
「ペーパーホワイト」(早春の花 004)
「日本水仙」(早春の花 005)
「黄水仙」(早春の花 006)
「カラスノエンドウ」(早春の花 007)
「ラッパスイセン」(早春の花 008)
「ヒマラヤユキノシタ」(早春の花 009)
「ジンチョウゲ」(早春の花 010)
「ヒメオドリコソウ」(早春の花 011)
「アラセイトウ」(早春の花 012)
「オオイヌノフグリ」(早春の花 013)
「ハクモクレン」(早春の花 014)
「玉縄桜」(早春の花 015)
「タチツボスミレ」(早春の花 016)
「河津桜」(早春の花 017)
「ノースポール」(早春の花 018)
「ヒヤシンス」(早春の花 019)
「ミモザ」(早春の花 020)
「フレンチ・ラベンダー」(早春の花 021)
「シデコブシ」(早春の花 022)
「ムスカリ」(早春の花 023)
「レンギョウ」(早春の花 024)
「クロッカス」(早春の花 025)
「馬酔木」(早春の花 026)
「ヤグルマギク」(早春の花 027)
「雪柳」(早春の花 028)
「イベリス」(早春の花 029)
「オオアラセイトウ」(早春の花 030)
「スノーフレーク」(早春の花 031)
「モクレン」(早春の花 032)
「ハナニラ」(早春の花 033)
「ヤマザクラ」(早春の花 034)
「ネモフィラ」(早春の花 035)
「キンギョソウ」(早春の花 036)
「福寿草」(早春の花 037)
「ベニスモモ」(早春の花 038)
「ソメイヨシノ」(早春の花 039)
「ハルジオン」(早春の花 040)
「キュウリグサ」(早春の花 041)
「コブシ」(早春の花 042)
「ヤエベニシダレ」(早春の花 043)
「カタバミ」(早春の花 044)
「ゼラニウム」(早春の花 045)
「ハコベ」(早春の花 046)
「おやゆび姫」(早春の花 047)
「ヒュウガミズキ」(早春の花 048)
「ヒイラギナンテン」(早春の花 049)
「ムラサキサギゴケ」(早春の花 050)
「源平枝垂れ桃」(早春の花 051)
「レッドキャンピオン」(早春の花 052)
「イワニガナ」(早春の花 053)
「アブラナ」(早春の花 054)
「ジャノメエリカ」(早春の花 055)

藤(フジ)について
科・属  マメ科・フジ属
和名  藤
英名  Wisteria
学名  Wisteria floribunda
原産地  アジア、北米、ヨーロッパ
開花期  4月~5月頃
 

藤(フジ)の特徴
藤の花は古くから振り袖姿の女性に例えられるように、優雅で柔らかい印象を与える花です。庭園や公園で目にする藤棚のイメージが強く、自宅で育てるのは難しいように感じてしまいますが、じつは藤は鉢植えでも楽しめます。根の成長が制限されることから、むしろ鉢植えの方が花つきがよくなるほどです。

藤という字は「上にのぼる植物」という意味を持つ漢字で、元はつるを作る植物を指します。日本ではこの藤の花に限定して使われます。

全国に藤の名所は多く、「ノダフジ(野田藤)」の由来となった大阪市福島区の野田は藤の名所として有名。毎年4月には「のだふじめぐり(ふじ祭り)」が開催されます。樹齢1,200年を越え、天然記念物に指定されている埼玉県春日部市の「牛島の藤」もよく知られています。

最近人気と言えば、栃木県にある「あしかがフラワーパーク」です。大藤の棚の広さは600畳もあり、紫色の藤の他、白やヨーロッパ原産の藤の仲間であるキングサリなども植栽され、夜はライトアップもされていて国内外の方が足を運ぶ藤の人気スポットとなっています。

 

藤 の例句 

「不耕貪食」花蓼すらも藤の形 香西照雄 対話
あはれさは牛仰むかす藤の花 政岡子規 藤
いくたびも出ては水うつ藤の茶屋 富安風生
いまは藤咲く颱風を娶る紀伊 山口誓子
うち向ふ谷に藤咲くゆあみかな 水原秋櫻子 葛飾
うはばみの巻きつきたるがごとき藤 阿波野青畝
おくつきにとゞきし藤や熊野供養 百合山羽公 春園
おちついてくらせば宵の藤が濃き 大野林火 海門 昭和七年
かかりたる藤の翠微のはなやかに 阿波野青畝
かんざしの蝶ちらつくや藤の花 政岡子規 藤
くぐりては傘上ぐる藤の雨 阿波野青畝
くもり来し重さの藤の熊野供養 能村登四郎
ここに立てば藤房島の上に垂る 山口青邨
こころにもゆふべのありぬ藤の花 森澄雄
この径の藤咲くむかし信徒逆殺ヘ 山口青邨
そこここに藤がかかれり妻つれて 山口青邨
てのひらに藤房一つ花こぼす 山口青邨
ながからむ妻の祈りや藤の花 齋藤玄 飛雪
のめり聳つ巌薄明の懸り藤 鷲谷七菜子 銃身
はるかなる約婚の日や藤も褪せ 山口誓子
ひと紋は藤なる武者幟 福田蓼汀 秋風挽歌
ふぐりてふかすかな重り藤ゆふべ 能村登四郎
ふるさとの井戸のくらがり藤散りこむ 桂信子 新緑
ほぐれんとする藤房の下にゐる 廣瀬直人
ほと酔ふも神酒なればよし藤の昼 稲畑汀子
ほのぼのと藤は醜神鎮めたる 阿波野青畝
ほのぼのと虚空界より藤の花 鷲谷七菜子 一盞
まず藤がのぞく隧道穴明り 赤尾兜子 歳華集
まだ風のたけも短し藤の花 政岡子規 藤
まつの藤しきりに露をこほしけり 政岡子規 藤
みどり児のあくび短し藤の花 星野麥丘人
むらさきの藤房死者の忘れもの 秋元不死男
もろうてさしてよく寝ている子に藤のはな 荻原井泉水
やはらかき藤房の尖額に来る 橋本多佳子
ゆふかぜや藤の花房甕にあまり 大野林火 海門 昭和九年
ゆらぐとき藤見あぐれば猿の顔 阿波野青畝
ゆらゆらと帆綱めきたる藤の幹 阿波野青畝
わが頭上無視して藤の房盗む 橋本多佳子
われ山上に眼下の真藤おぼろめく 赤尾兜子 歳華集
ステッキではない杖もつて藤の花かな 荻原井泉水
ローマよし七つの丘に藤咲きて 山口青邨
一つある耶馬の湯宿も藤に暮れ 阿波野青畝
一つらに藤の實なびく嵐哉 政岡子規 藤の實
一つ長き夜の藤房をまのあたり 高浜年尾
一房の藤下げてもつ鯖のごとし 山口青邨
一日中藤の枯蔓日当らず 高野素十
万緑に藤豆の垂れわたりたる 阿波野青畝
三宝寺池の翡翠藤浪に 川端茅舎
三歳のわが寝息かも藤の奥 橋閒石 卯
三輪の藤宜し八十八夜より 阿波野青畝
下乗より藤讃へつつ参向す 阿波野青畝
下向にも神神坐す山の藤 阿波野青畝
乳児寝かすごとく畳に藤の房 鷹羽狩行
今日はまた西へ吹かれつ藤の花 政岡子規 藤
今日も伸び伸びけり藤の花 政岡子規 藤
低き木に藤咲いて居る山路かな 河東碧梧桐
佐保神を見送る藤の咲きにけり 上村占魚
何色に振袖そめん藤の花 政岡子規 藤
佳き藤に祖霊の宿りたまひたる 後藤比奈夫
修復成る神杉若葉藤の花 政岡子規 若葉
修験道ゆるめて山の藤咲けり 百合山羽公 樂土
僧朽ちて玉の緒の藤白く懸かる 橋閒石 卯
公卿若し藤に蹴鞠をそらしける 橋本多佳子
刺繍に倦んで女あくびす藤の花 政岡子規 藤
加太の雛源平藤橘まちまちに 阿波野青畝
勉強によその子も来て藤の午後 大野林火 早桃 太白集
原始林やさし藤房懸けわたし 津田清子
去年より一尺長し藤の花 政岡子規 藤
反橋や池を巡りて藤の棚 政岡子規 藤
反橋や藤紫に鯉赤し 政岡子規 藤
叟(そう)の杖六尺藤の長さ欲し 平畑静塔
古寺に藤の花さく枯木哉 政岡子規 藤
古水に浮いて干からぶ藤の花 富安風生
吊橋を渡る通草を藤で提げ 鷹羽狩行
吹かれてはもつれてとけて藤の花 政岡子規 藤
吹降りに当りたる日やさわぐ藤 阿波野青畝
咀嚼音ふと老めくや藤了る 能村登四郎
咲きそめて藤の花房整はず 高浜年尾
四万川をおほふ藤浪そよぐなり 水原秋櫻子 緑雲
園児等の一人に藤の房とゞく 星野立子
地に低く水にもひくく藤の房 鷹羽狩行
垂れし藤杉に美し詣でけり 阿波野青畝
城に藤播州平野海霧流れ 野見山朱鳥 幻日
城塁や咲かむとしつつ藤白し 山口誓子
墓守は読むこともなく藤の花 山口青邨
壮夫巌藤をかけたるやさしさよ 山口青邨
夕鴉眠らむとす藤暗ければ 阿波野青畝
大山に殯の藤房遠傾(なだ)れ 金子兜太
大山祇の神の藤房田に映る 飴山實 句集外
大山藤幽し荒瀬に風巻きて 鷲谷七菜子 銃身
大河に逆浪たちて藤咲けり 山口誓子
大津画に似た塗笠や藤の花 政岡子規 藤
大茶園尽きしところに藤懸る 百合山羽公 寒雁
大藤の現れ出たる恐しさ 阿波野青畝
大雨の日藤茶屋に寄りて飲む水や 中川一碧樓
天に藤地に藤神慮あるままに 阿波野青畝
天よりの藤房百に捉はるる 鷲谷七菜子 一盞
天懸る藤を古関のかざしかな 鷲谷七菜子 天鼓
天押雲命や藤さがる 阿波野青畝
天神のおとがひ長き藤の房 鷹羽狩行
奥にまで夕日のさして藤の棚 鷹羽狩行
女の心触れあうてゐて藤垂るる 桂信子 月光抄
娵どりの暮やどこかに藤が咲き 山口誓子
子規の藤池のおもてにとどきさう 亭午 星野麥丘人
宙に浮く藤根に腰を掛けむとす 阿波野青畝
寧楽山は藤咲けるなりくもれども 水原秋櫻子 霜林
尼僧きて藤のむらさきくもりけり 秋元不死男
山に碑が建つ藤躑躅色をそへ 山口青邨
山の藤見て来て鉄路跨ぐかな 山口誓子
山の辺のみちのべの藤つつじなど 阿波野青畝
山口の昏るるに間ある藤の花 松村蒼石 寒鶯抄
山宿や藤のこぼるゝ裏廂 高野素十
山水の上に綾なす藤の花 右城暮石 句集外 大正十五年
山猿をのせてゆらめく藤の花 阿波野青畝
山神の藤さらばこそ花少な 飯島晴子
山藤や短き房の花ざかり 政岡子規 藤
山路やかたみに見えし藤の花 阿波野青畝
岨の藤ゆらぐは瀧の懸りけり 水原秋櫻子 殉教
岩藤ののり出し咲ける淵くらし 松本たかし
岩藤の高き雫や淵の雨 松本たかし
岩藤や犬吼え立つる橋の上 村上鬼城
岩藤や降らで過ぎにし山の雷 森澄雄
峯の松に藤なるらんと思ふのみ 阿波野青畝
島の藤漁網うち懸けたるごとし 阿波野青畝
崖削いで天嶮をなす藤の花 上田五千石『森林』補遺
崩れゐる朝の藤いろ牡丹かな 佐藤鬼房
巨き松大き藤かけ淋漓たり 山口青邨
巫女の髪ぐらゐの丈の藤に手を 阿波野青畝
常濡れの巌温みなく深山藤 鷲谷七菜子 銃身
御仏は藤の莟を眉としぬ 山口青邨
御婚儀を祝ふや藤の作り花 政岡子規 藤
御慶事を祝ふや藤の造り花 政岡子規 藤
微笑みてかしらよけたる藤の花 三橋敏雄
念仏に季はなけれとも藤の花 政岡子規 藤
恩寵の如し藤咲き満ちたるは 石塚友二 磊[カイ]集
我すでに昏れたり藤も三尊も 橋閒石 卯
我笠に藤振りかゝる山路哉 政岡子規 藤
手に提げし藤土につくうれしさよ 政岡子規 藤
手力にもげざる藤のゆらぎかな 阿波野青畝
手甲の手が立藤を剪りにけり 清崎敏郎
手繰る藤素直に寄り来藤ちぎる 橋本多佳子
持ちそふる狩衣の袖に藤の花 政岡子規 藤
掛茶屋や頭にさはる藤の花 政岡子規 藤
揺り離すかに藤落花ゆたかなれば 香西照雄 素心
揺るぎなき大藤房となり暮るる 鷲谷七菜子 銃身
放置さる藤の白房地に触るを 山口誓子
散る藤のほろほろわれに恋あるごと 伊丹三樹彦
散る藤や真近嶺にさへ雪残り 及川貞 榧の實
新道路広くなりたる藤の花 右城暮石 散歩圏
旅立の髪梳くゆふべ藤おもし 鷲谷七菜子 黄炎
早乙女や藤の花房髪に垂れ 水原秋櫻子 緑雲
明寺に藤の花咲く枯木哉 政岡子規 藤
明治慶応此の茂る藤の老木なり 荻原井泉水
昔絵の春や弁慶藤娘 政岡子規 春
春信のいたるところに藤さかり 下村槐太 天涯
春園やサロンは藤を垂れそむる 百合山羽公 春園
春日野の藤を華鬘となしたまふ 水原秋櫻子 葛飾
春早しまだ芽もふかぬ藤の棚 政岡子規 春浅し
春著の人藤綱橋を小急ぎに 山口青邨
昼休み藤の盛りを言ふ女工 三橋鷹女
月はなほ光放たず藤の房 山口誓子
木がくれて藤残る家の障子かな 渡邊水巴 白日
木の末をたわめて藤の下りけり 政岡子規 藤
木をあげて藤の紫吹きもまれ 阿波野青畝
木仏師や水のごとくに藤筵 古舘曹人 樹下石上
木馬道しばらくゆけば藤こぼれ 山口青邨
本を読むゼ石藤の花こぼれ 山口青邨
束髪の余り背高し藤の花 政岡子規 藤
来し方の藤美しきこと告げよ 阿波野青畝
来て見ればひとに売る家の藤咲けり 及川貞 榧の實
松の木に藤さがる画や百人首 政岡子規 藤
枯れたる樹春日(かすが)の藤を懸けて立つ 津田清子
枯藤に雲の按配きまりけり 飯島晴子
梢の子躍り満樹の藤揺るる 中村草田男
棚藤の上なる山に懸り藤 松本たかし
森の主藤一連に咲かせたり 平畑静塔
椅子沈む思いの 藤の花の昼 伊丹三樹彦
樹に巻きて藤一つ燈の歓喜天 古舘曹人 砂の音
橋際に藤棚のある茶店哉 政岡子規 藤
檻の天より藤垂れ獅子を懐柔す 津田清子 礼拝
歇むまじき藤の雨なり旅疲れ 杉田久女
此の家の藤に向ひて一人坐す 右城暮石 句集外 大正十年
武蔵野の古へよりの藤の茶屋 富安風生
歩み板とつて返して藤の花 石田勝彦 秋興以後
歩をとどめとどめて藤に能役者 下村槐太 天涯
母の顔わすれ野藤の花を知る 山口青邨
水まではとどかぬ風や藤の花 政岡子規 藤
水神の水音藤をかげらしめ 佐藤鬼房
水谷川の雨滴はげしきかかり藤 阿波野青畝
永き日やそのしだり尾の下り藤 政岡子規 藤
汁粉屋の狭き庇に藤枯るゝ 清崎敏郎
汗くさき女工となりて藤を知らず 三橋鷹女
池に散り藤撒き餌とも蒔絵とも 鷹羽狩行
沈思する場所藤の実の下にあり 百合山羽公 樂土
泉辺は藤蔓掛けて直き木々 中村草田男
浜べの田石州の藤垂れにけ`り 阿波野青畝
浴後未だ明るさのこす軒の藤 能村登四郎
海へ向け藤浪の丘二夕流れ 松崎鉄之介
深山藤蔓うちかへし花盛り 前田普羅 春寒浅間山
深山藤風雨の夜明け遅々として 前田普羅 飛騨紬
深山路や松の闇より藤の花 政岡子規 藤
淵くらし逆落ちざまに深山藤 鷲谷七菜子 銃身
湯抱の小宿三軒藤の花 阿波野青畝
満目の藤浪に酔ひ泳ぎをり 能村登四郎
滝となる前のしづけさ藤映す 鷲谷七菜子 銃身
滝の水引きある藪の土用藤 右城暮石 句集外 昭和六年
滝の面に垂れて藤蔓揺れやまず 清崎敏郎
潟に垂れ家持の藤ここに在り 阿波野青畝
激流に短か藤房花終る 山口誓子
灸屋の蕾の藤を見上げけり 飯島晴子
煙管の先に煙草立てゝは藤白し 飯島晴子
熊ん蜂狂ひ藤房明日は果つ 西東三鬼
熊野さまに線香藤にラムネ瓶 百合山羽公 寒雁
熊野のため里人のため藤長し 百合山羽公 樂土
父ありき遠き日藤を見にゆきし 安住敦
牡丹咲き藤垂れ友等すこやかに 山口青邨
物好に藤咲かせけり庭の松 政岡子規 藤
瓔珞しのび*刑冠想ふ藤の下 中村草田男
瓦焼く家に藤咲く石州路 阿波野青畝
生きてゆく時の切れ目よ藤垂りて 橋本多佳子
田の上に咲き白けけり藤の花 右城暮石 句集外 大正十四年
田は植えてうつくし松に藤のかかり 荻原井泉水
田螺売る野茶屋に藤の花早き 政岡子規 田螺
畑打つて藤一棚も培ひぬ 河東碧梧桐
病める掌にのせて藤房余りたり 橋本多佳子
白き藤房に夜が明け咳やまず 佐藤鬼房
百千の藤を垂らして幹古ぶ 鷹羽狩行
直会にゆふべの藤の揺れにけり 阿波野青畝
眉にかゝる藤の長房むらさきに 村山故郷
砂ずりの藤の短かさにはふれず 後藤比奈夫
砧石の落花の藤をうち払ふ 前田普羅 飛騨紬
磐座として天つ藤国つ藤 阿波野青畝
磨崖佛消えぎえに世に藤の花 森澄雄
神にます山のはづれに藤咲きぬ 阿波野青畝
神の扉にどの藤房のかげならめ 阿波野青畝
神域の 藤と競うて 首振る亀 伊丹三樹彦
禅の天藤房暗く懸りたり 山口誓子
稿疲れ昆蟲界に藤垂れて 秋元不死男
窓あきしまま藤の夜となりにけり 桂信子 女身
窓の樹や藤たかだかと濃むらさき 飯田蛇笏 春蘭
窓の藤煌くや殊に妻居ぬ日 中川一碧樓
窓遠き逗子や炭屋に藤垂れて 飯田龍太
窗の樹や藤たかだかと濃むらさき 飯田蛇笏 心像
立雛の衣手藤の匂ふなり 水原秋櫻子 蓬壺
竹あれば竹に懸りて藤の房 鷹羽狩行
竹垣に咲いてさがれり藤の花 村上鬼城
筍藪の外にかゝりて藤新芽 右城暮石 句集外 昭和七年
篠原の風にもつるる藤懸り 阿波野青畝
粕壁の藤を見に来し野の曇り 村山故郷
素盞嗚に大藤匂ふ夕べかな 森澄雄
紫の藤の細工や蜆殻 政岡子規 蜆
結界に六尺藤を現じてし 平畑静塔
絵を習ふ絵師か娘や藤の花 政岡子規 藤
翁道すぎきぬ藤に二度の花 松崎鉄之介
老い古りて不死身の真藤芽を吹けり 阿波野青畝
腰掛に眠れる人や藤の花 渡邊白泉
自堕落の羅漢もおはす藤ぐもり 上田五千石『森林』補遺
船白し藤蔓に潮流るる九月 飯田龍太
花乏し藤の紫柔毛たつ 石橋秀野
花咲かぬ藤の若葉の書斎かな 山口青邨
花屑のむらさきなれば藤といふ 山口青邨
花散りし藤の若葉の毛虫哉 政岡子規 若葉
花藤と女の裳裾と揃ひ揺れ 波多野爽波 鋪道の花
花藤の力抜かざる房の先 能村登四郎
花藤や母が家厠紙白し 中村草田男
苗代の畦さへ藤を垂れにけり 富安風生
若き等は藤の辺をゆき藤は見ず 富安風生
若杉の梢を走る藤ありぬ 山口青邨
茶柱やあるじの鉢に藤つつじ 石川桂郎 含羞
草深く木深き寺の藤を見し 松本たかし
荒き雨横渡りして山の藤 細見綾子
菫見て過ぐ藤房を見に来しなり 山口誓子
落ちかゝる岩を抱えて藤の花 政岡子規 藤
落ちかゝる石を抱えて藤の花 政岡子規 藤
葉かげなるただ一房の藤を愛づ 山口青邨
葡萄狩る源平藤橘借り鋏 百合山羽公 樂土
蔓たれて水田のへりに下り藤 阿波野青畝
薄暮より血を引く藤の色もなし 古舘曹人 能登の蛙
藁屋根に藤房が臥て犬も留守 香西照雄 素心
藤あまた咲かせ山には齢なし 鷹羽狩行
藤かかり寺格も賤しからずとか 高野素十
藤かかり尖帽(カプチーヌ)僧本を読む 山口青邨
藤かかり立たせ給へる観世音 山口青邨
藤かかるレストーランは嬉しけれ 山口青邨
藤か橘か山田案山子の目鼻立 上田五千石『風景』補遺
藤が咲き平々として川行けり 山口誓子
藤こぼれ石平らかに卓となす 山口青邨
藤こぼれ遺族の人等やすらへり 山口青邨
藤さかり今がさかりと思へりし(奈良二句) 細見綾子
藤さがるあちらこちらの梢かな 政岡子規 藤
藤さげて大洞山のあらし哉 前田普羅 飛騨紬
藤さげて水に見とるゝ柳かな 渡邊白泉
藤づるのからまる下の流急 阿波野青畝
藤のかげ友いとし妻さびにける 桂信子 月光抄
藤の下古郷夫人を大と見き 星野麥丘人
藤の下犬無雑作に通りけり 桂信子 月光抄
藤の下赤犬藤をしらずゆく 桂信子 月光抄
藤の前舞ひ納めたる初扇 森澄雄
藤の天重き飛行機ゆつくり飛ぶ 山口誓子
藤の房しばらく赤き西日さす 山口誓子
藤の房まさぐりてゐて面向けず 上田五千石 田園
藤の房寄りあひ雨のだだ漏れに 橋本多佳子
藤の房成さずよ雑木低ければ 阿波野青畝
藤の房松の花粉の風に寄る 石橋秀野
藤の房長しゆふべの壺は濡れ 橋閒石 朱明
藤の房風に遊びのはじまりぬ 鷲谷七菜子 一盞
藤の昼けだるさ故の無口かな 中村苑子
藤の昼膝やはらかくひとに逢ふ 桂信子 女身
藤の根の這ひて石段とぎれがち 阿波野青畝
藤の花こぼして門は開くなり 山口青邨
藤の花こぼれ石の卓石の榻 山口青邨
藤の花ちぎつて若き日の匂ひ 百合山羽公 樂土以後
藤の花ほつりと夫を待つ日暮 桂信子 月光抄
藤の花またチエホフにかへりくる 亭午 星野麥丘人
藤の花よく晴れたれば昼寝たり 森澄雄
藤の花了る匂ひに顔合はす 飯島晴子
藤の花咲き垂れて病日々に快し 村山故郷
藤の花挿して翁九十四端坐しておる 荻原井泉水
藤の花昼より雲の風を呼ぶ 上村占魚 鮎
藤の花産後の顔の睡りをり 森澄雄
藤の花盛りにダムの定水位 鷹羽狩行
藤の花真下に落ちて岸に寄る 山口誓子
藤の花西日を背に掃く小庭 上村占魚 鮎
藤の花見てねむくなる田舎寺 百合山羽公 寒雁
藤の花這うていみじき樹齢かな 阿波野青畝
藤の花長うして雨ふらんとす 政岡子規 藤
藤の芽のもたげかけゐるほの白さ 右城暮石 句集外 昭和十三年
藤の芽の高きより雨こぼし降る 右城暮石 句集外 昭和十一年
藤の芽は花さきさうになかりけり 政岡子規 藤
藤の芽や竜翔ぶ姿そのままに 阿波野青畝
藤の芽を撓めて落ちぬ雨蛙 前田普羅 普羅句集
藤の葉に雨上がるらし鷹の声 右城暮石 句集外 昭和十七年
藤の葉の満天にあり散りはじむ 古舘曹人 能登の蛙
藤の蔓千切る力が足らざりし 阿波野青畝
藤の蔓引けば動きて雉出さう 右城暮石 声と声
藤の蔓羅漢を指してゆれてをり 下村槐太 天涯
藤の虻ときどき空を流れけり 藤田湘子
藤の長房年年に短くなるとよ老僧よ 荻原井泉水
藤の雨子叱る暗き母の顔 波多野爽波 鋪道の花
藤の風まなこ明るきものぐるい 橋閒石 荒栲
藤の香のここは届かず伎芸天 稲畑汀子
藤の高さ山の深さを告ぐるごとし 大野林火 方円集 昭和五十三年
藤はさかり或る遠さより近よらず(奈良二句) 細見綾子
藤も垂れぎは少女ら髪を編み垂らし 三橋鷹女
藤わたり仁王の胸の朱剥げたり 山口青邨
藤を去る人に別るる如くなり 山口青邨
藤を描くならはし加茂の扇には 後藤比奈夫
藤を描く背後の山は描ききれず 津田清子
藤を眺めてよく話す薬売り 廣瀬直人
藤を瞳にゑがきて模範女工なり 三橋鷹女
藤を見て来しが電燈黄に点る 山口誓子
藤を見に行きしきのふの疲れ哉 政岡子規 藤
藤六が平六具して御慶かな 内藤鳴雪
藤冷のあとの牡丹の冷なりけり 安住敦
藤千房青年ら顎立て膝伸し 赤尾兜子 歳華集
藤咲いて 妻の婚歴句歴似る 伊丹三樹彦
藤咲いてバタヤ等ここに行き合へり 三橋鷹女
藤咲いて人にさみしきうなじがある 三橋鷹女
藤咲いて低きは池に垂れて咲く 村山故郷
藤咲いて天のしづけさ垂れにけり 鷲谷七菜子 游影
藤咲いて山の手曇る都かな 渡邊白泉
藤咲いて新しき彩一つふゆ 野澤節子 存身
藤咲いて映る湯壷やかきこはす 渡邊白泉
藤咲いて昼夜わかたぬ川流る 山口誓子
藤咲いて海光ひとの額に消ゆ 三橋鷹女
藤咲いて眼やみ籠るや薬師堂 政岡子規 藤
藤咲いて碓氷の水の冷たさよ 臼田亜郎 定本亜浪句集
藤咲いて背合せに佛立ちたまふ 水原秋櫻子 霜林
藤咲いて起居にまとふ翳淡し 鷲谷七菜子 黄炎
藤咲いて近づく音のいくたびも 廣瀬直人
藤咲きて離宮に擬ふ竹の縁 山口誓子
藤咲きぬ松に一夜を寝て見やう 政岡子規 藤
藤咲きぬ林あかるく風あふれ 水原秋櫻子 重陽
藤咲くやむかし小使室暗し 岡本眸
藤咲くや瀬がしらはしるあめの魚 水原秋櫻子 緑雲
藤咲くや野井にいびつな旅の顔 角川源義
藤咲く家母をも末弟汝が護りし 中村草田男
藤咲けばその蒼空が目に残る 右城暮石 句集外 昭和十五年
藤咲けば淡き羽織の裏模様 飯田龍太
藤咲けり杖に縋りてもよろめくか 小林康治 四季貧窮
藤咲ける襞も夜明くる浅間山 前田普羅 春寒浅間山
藤垂らす荒瀬と荒瀬との間 山口誓子
藤垂るる日の土臭さ子と分かち 廣瀬直人
藤垂るる法事の僧を呼びにゆく 廣瀬直人
藤垂れてここ浦古し舟作る 阿波野青畝
藤垂れてこの世のものの老婆佇つ 三橋鷹女
藤垂れてむらさきに淵よみがへる 原裕 青垣
藤垂れてわが誕生日むらさきに 山口青邨
藤垂れて一園殊に春ふかし 水原秋櫻子 殉教
藤垂れて傘下一切水の音 古舘曹人 能登の蛙
藤垂れて川遠くより来りけり 山口誓子


紅の花弁に白の斑が入る八重の椿「鹿児島」(椿シリーズ 21-31)

2021年04月17日 08時39分50秒 | 

紅の花弁に白の斑が入る八重の椿「鹿児島」。松笠型と呼ばれる咲き方をする。「花を横からみると、花弁を次々へ上に積み重ねたような松笠状にみえるのが特徴」(『日本の椿花』淡交社)だという。この写真は高いところの花を写したので正面からになっているが。

(2021年春 横浜市)

 

■椿シリーズ
「白角倉」(椿シリーズ 21-01)
「六歌仙」(椿シリーズ 21-02)
「太郎冠者」(椿シリーズ 21-03)
「玉の浦」(椿シリーズ 21-04)
「高台寺」(椿シリーズ 21-05)
「春曙紅」(椿シリーズ 21-06)
「加茂本阿弥」(椿シリーズ 21-07)
「天ヶ下」(椿シリーズ 21-08)
「黒部」(椿シリーズ 21-09)
「シラハトツバキ 」(椿シリーズ 21-10)
「越の粧」(椿シリーズ 21-11)
「菱唐糸」(椿シリーズ 21-12)
「五色八重散椿」(椿シリーズ 21-13)
「狩衣」(椿シリーズ 21-14)
「若桜」(椿シリーズ 21-15)
「関西秋の山」(椿シリーズ 21-16)
「紅獅子」(椿シリーズ 21-17)
「白菊」(椿シリーズ 21-18)
「美濃牡丹」(椿シリーズ 21-19)
「徳恩寺」(椿シリーズ 21-20)
「月照」(椿シリーズ 21-21)
「フレグラント・ピンク」(椿シリーズ 21-22)
「春曙紅」(椿シリーズ 21-23)
「白羽衣」(椿シリーズ 21-24)
「タイニープリンセス」(椿シリーズ 21-25)
「あかこま」(椿シリーズ 21-26)
「覆輪京牡丹」(椿シリーズ 21-27)
「乙女椿」(椿シリーズ 21-28)
「大虹」(椿シリーズ 21-29)
「太平楽」(椿シリーズ 21-30)

■椿山茶花シリーズ
「菊冬至」(椿山茶花シリーズ 20-01)
「曙」(椿山茶花シリーズ 20-02)
「夕陽」(椿山茶花シリーズ 20-03)
「白卜伴」(椿山茶花シリーズ 20-04)
「赤腰蓑」(椿山茶花シリーズ 20-05)
「玉芙蓉」(椿山茶花シリーズ 20-06)
「一子侘助」(椿山茶花シリーズ 20-07)
「肥後入日の海」(椿山茶花シリーズ 20-08)
「七福神」(椿山茶花シリーズ 20-09)
「昭和の栄」(椿山茶花シリーズ 20-10)
「富士の峰」(椿山茶花シリーズ 20-11)
「緋乙女」(椿山茶花シリーズ 20-12)
「光源氏」(椿山茶花シリーズ 20-13)
「三国紅」(椿山茶花シリーズ 20-14)
「乙女サザンカ」(椿山茶花シリーズ 20-15)
「剣の舞」(椿山茶花シリーズ 20-16)
「大空」(椿山茶花シリーズ 20-17)
「敷島」(椿山茶花シリーズ 20-18)
「静海波」(椿山茶花シリーズ 20-19)
「不二の雪」(椿山茶花シリーズ 20-20)
「桃源郷」(椿山茶花シリーズ 20-21)
「京錦」(椿山茶花シリーズ 20-22)
「花大臣」(椿山茶花シリーズ 20-23)
「明行空」(椿山茶花シリーズ 20-24)

 

 


白い優雅な花をつける「バイカイカリソウ」(箱根の花 21-09)

2021年04月17日 08時37分02秒 | 

白い優雅な花をつける「バイカイカリソウ」。イカリソウの仲間だが、距がないのですぐに区別できる。それに花が碇の形をしていない。下からみると梅のように五弁の花弁がみえる。それで「梅花」という名前がついた。

(2021年春 箱根)

■箱根の花

「ミツバツチグリ」(箱根の花 21-01)
「キジムシロ」(箱根の花 21-02)
「ミツガシワ」(箱根の花 21-03)
「バイカイカリソウ」(箱根の花 21-04)
「オオバキスミレ」(箱根の花 21-05)
「イワウチワ」(箱根の花 21-06)
「ミズバショウ」(箱根の花 21-07)
「トサミズキ」(箱根の花 21-08)

「バイカイカリソウ」

バイカイカリソウ(梅花碇草、学名:Epimedium diphyllum )は、メギ科イカリソウ属の多年草
特徴
地下茎は褐色で塊状、質は硬く、硬いひげ根を多数出す。茎の高さは20-30cmになる。葉は、1-2回2出複葉で葉柄が長く、小葉は長さ2.5-5cm、幅2-3.5cm、ゆがんだ卵状から卵状楕円形で、先端は鈍頭、基部は心形でやや斜形、縁は刺状の毛が無いか、あっても基部の耳部だけに少しあり、小葉に小葉柄がある。葉の裏面には開出する細毛があるが少ない。

花期は4-5月頃。茎先に総状花序を出し、やや下垂して径10-12mmの白色の花を数個つける。萼片は内外2列で8個あるが、外側の4個の外萼片は膜質、小型で早く落ち、4個の内萼片は卵状披針形で花弁状になり、花弁と同じ長さになる。花弁は4個あり、倒卵形で先端は鈍形で長さ6mm、基部にはイカリソウ属の特徴である碇状の距がなく、蜜腺がない。雄蕊は4個、雌蕊は1個ある。

分布と生育環境
日本固有種。本州(中国地方)、四国、九州の暖帯から温帯に分布し、山地の林内、林縁に生育する。

名前の由来
和名バイカイカリソウは、「梅花碇草」の意で、花に距が無く、形がウメの花に似る碇草であることによる。種小名 diphyllum は、「二葉の」「二小葉の」の意味。

 


ふんわりとやさしい雰囲気の花「オドリコソウ」(高尾の花 21-31)

2021年04月17日 07時37分32秒 | 

花の形が笠をかぶった踊子に似ていることから名付けられた「オドリコソウ」。ふんわりとやさしい雰囲気の花だ。花は数個ほど輪生状態になって数段に分かれた咲くのも特徴だ。

(2021年春 南高尾)

■高尾の花

「カタクリ」(高尾の花 21-01)
「雪割草」(高尾の花 21-02)
「リュウキンカ」(高尾の花 21-03)
「ショウジョウバカマ」(高尾の花 21-04)
「キクザキイチゲ」(高尾の花 21-05)
「タツタソウ」(高尾の花 21-06)
「キバナセツブンソウ」(高尾の花 21-06)
「ハナネコノメ」(高尾の花 21-07)
「ヨゴレネコノメ」(高尾の花 21-08)
「ムラサキケマン」(高尾の花 21-09)
「アミガサユリ」(高尾の花 21-10)
「ミヤマカタバミ」(高尾の花 21-11)
「タカオスミレ」(高尾の花 21-12)
「ヒトリシズカ」(高尾の花 21-13)
「ナガバノスミレサイシン」(高尾の花 21-14)
「イカリソウ」(高尾の花 21-15)
「セントウソウ」(高尾の花 21-16)
「マルバコンロンソウ」(高尾の花 21-17)
「ニリンソウ」(高尾の花 21-18)
「アマナ」(高尾の花 21-19)
「ヒメリュウキンカ」(高尾の花 21-20)
「ユリワサビ」(高尾の花 21-21)
「キケマン」(高尾の花 21-22)
「ジュウニヒトエ」(高尾の花 21-23)
「トキワイカリソウ」(高尾の花 21-24)
「マルバスミレ」(高尾の花 21-25)
「アカフタチツボスミレ」(高尾の花 21-26)
「ヤブニンジン」(高尾の花 21-27)
「ミミガタテンナンショウ」(高尾の花 21-28)
「クサノオウ」(高尾の花 21-29)
「ヤマエンゴサク」(高尾の花 21-30)

オドリコソウ(踊子草)
学名は、Lamium album var. barbatum
シソ科オドリコソウ属
北海道〜九州の山野や道端の半日陰に群生する。高さ30〜50cm。茎はやわらかく、節に長い毛がある。葉は対生し、長さ5〜10cmの卵状三角形〜広卵形で先端はとがる。縁にあらい鋸歯があり、網目状の脈が目立つ。上部の葉腋に白色〜淡紅紫色の唇形花を密に輪生する。花冠は長さ3〜4cmで、上唇はかぶと状、下唇は3裂する。側裂片は小さく、中央の裂片は大きく前に突き出し、浅く2裂する。花期は3〜6月。(野に咲く花)


かつては春の名物だった「レンゲ」の花(春の花 21-33)

2021年04月17日 07時33分35秒 | 

かつては春の名物だった「レンゲ」の花。最近は化学肥料の普及で、田に植えて鋤き返して肥料にすることもなくなったらしい。蜜蜂の蜜源植物としての利用も減っているようだ。ギリシア神話ではニンフの化身の蓮華を摘んだドリュオペが蓮華に変えられたと伝えられる。「春の小川は、さらさら行くよ。岸のすみれや、れんげの花に、すがたやさしく、色うつくしく、咲けよ咲けよと、ささやきながら」という「春の小川」のメロディーとともに忘れられない花だ。日常の花だっただけに俳句の世界でも数知れず歌われている。「げんげたんぽぽおくの山川越えて来し 村山故郷」。
(2021年春 川崎市)

 

■春の花シリーズ

「サクラソウ」(春の花 21-01)
「ワスレナグサ」(春の花 21-02)
「ヒメツルソバ」(春の花 21-03)
「レウィシア」(春の花 21-04)
「オオキバナカタバミ」(春の花 21-05)
「スイート・アリッサム」(春の花 21-06)
「ドウダンツツジ」(春の花 21-07)
「カントウタンポポ」(春の花 21-08)
「ホウキモモ」(春の花 21-09)
「アリウム・トリケラトゥム」(春の花 21-10)
「シャガ」(春の花 21-11)
「チョウセンレンギョウ」(春の花 21-12)
「キブシ」(春の花 21-13)
「キランソウ」(春の花 21-14)
「アネモネ」(春の花 21-15)
「タネツケバナ」(春の花 21-16)
「ヘビイチゴ」(春の花 21-17)
「山吹」(春の花 21-18)
「ホトケノザ」(春の花 21-19)
「海棠」(春の花 21-20)
「セイヨウシャクナゲ」(春の花 21-21)
「ホウチャクソウ」(春の花 21-22)
「ラミウム・ガレオブドロン」(春の花 21-23)
「キツネノボタン」(春の花 21-24)
「ビオラ・ソロリア・プリセアナ」(春の花 21-25)
「シロヤマブキ」(春の花 21-26)
「 アニソドンテア・マルウァストロイデス」(春の花 21-27)
「オランダミミナグサ」(春の花 21-28)
「斑入りビンカ・マジョール」(春の花 21-29)
「チエリーセージ」(春の花 21-30)
「スズラン」(春の花 21-31)
「ユウゲショウ」(春の花 21-32)

■早春の花シリーズ

「チロリアンデージー」(早春の花 001)
「クリスマスローズ」(早春の花002)
「ツルニチニチソウ」(早春の花 003)
「ペーパーホワイト」(早春の花 004)
「日本水仙」(早春の花 005)
「黄水仙」(早春の花 006)
「カラスノエンドウ」(早春の花 007)
「ラッパスイセン」(早春の花 008)
「ヒマラヤユキノシタ」(早春の花 009)
「ジンチョウゲ」(早春の花 010)
「ヒメオドリコソウ」(早春の花 011)
「アラセイトウ」(早春の花 012)
「オオイヌノフグリ」(早春の花 013)
「ハクモクレン」(早春の花 014)
「玉縄桜」(早春の花 015)
「タチツボスミレ」(早春の花 016)
「河津桜」(早春の花 017)
「ノースポール」(早春の花 018)
「ヒヤシンス」(早春の花 019)
「ミモザ」(早春の花 020)
「フレンチ・ラベンダー」(早春の花 021)
「シデコブシ」(早春の花 022)
「ムスカリ」(早春の花 023)
「レンギョウ」(早春の花 024)
「クロッカス」(早春の花 025)
「馬酔木」(早春の花 026)
「ヤグルマギク」(早春の花 027)
「雪柳」(早春の花 028)
「イベリス」(早春の花 029)
「オオアラセイトウ」(早春の花 030)
「スノーフレーク」(早春の花 031)
「モクレン」(早春の花 032)
「ハナニラ」(早春の花 033)
「ヤマザクラ」(早春の花 034)
「ネモフィラ」(早春の花 035)
「キンギョソウ」(早春の花 036)
「福寿草」(早春の花 037)
「ベニスモモ」(早春の花 038)
「ソメイヨシノ」(早春の花 039)
「ハルジオン」(早春の花 040)
「キュウリグサ」(早春の花 041)
「コブシ」(早春の花 042)
「ヤエベニシダレ」(早春の花 043)
「カタバミ」(早春の花 044)
「ゼラニウム」(早春の花 045)
「ハコベ」(早春の花 046)
「おやゆび姫」(早春の花 047)
「ヒュウガミズキ」(早春の花 048)
「ヒイラギナンテン」(早春の花 049)
「ムラサキサギゴケ」(早春の花 050)
「源平枝垂れ桃」(早春の花 051)
「レッドキャンピオン」(早春の花 052)
「イワニガナ」(早春の花 053)
「アブラナ」(早春の花 054)
「ジャノメエリカ」(早春の花 055)

ゲンゲ(紫雲英、翹揺 Astragalus sinicus)はマメ科ゲンゲ属に分類される越年草である。中国原産。レンゲソウ(蓮華草)、レンゲとも呼ぶ。

特徴
湿ったところに生える。全体に柔らかな草である。茎の高さ10-25 cm。根本で枝分かれし、暖かい地方では水平方向に匍匐して60-150 cmまで伸びる場合もある。茎の先端は上を向く。また、根本から一回り細い匍匐茎を伸ばすこともある。葉は1回羽状複葉、小葉は円形に近い楕円形、先端は丸いか、少しくぼむ。1枚の葉では基部から先端まで小葉の大きさがあまり変わらない。花茎は葉腋から出てまっすぐに立ち、葉より突き出して花をつける。花は先端に輪生状にひとまとまりにつく。花色は紅紫色だが、まれに白色(クリーム色)の株もある。

利用・文化
ゲンゲの花は、良い「みつ源」になる。蜂蜜の源となる蜜源植物として利用されている。ギリシア神話では、祭壇に捧げる花を摘みに野に出た仲良し姉妹の話が知られている。ニンフが変身した蓮華草を誤って摘んでしまった姉のドリュオペが、代わりに蓮華草に変わってしまう。「花はみな女神が姿を変えたもの。もう花は摘まないで」、と言い残したという。

日本における利用・文化
春の季語。ゆでた若芽は食用にもなる(おひたし、汁の実、油いため他)。民間薬として利用されることがある(利尿や解熱など)。ゲンゲの花を歌ったわらべ歌もある。「春の小川」などが知られている。「手に取るな やはり野に置け 蓮華草」は、江戸時代に滝野瓢水が詠んだ俳句。遊女を身請しようとした友人を止めるために詠んだ句で、蓮華(遊女)は野に咲いている(自分のものではない)から美しいので、自分のものにしてはその美しさは失われてしまうという意味。転じて、ある人物を表舞台に立つべきではなかったと評する意味合いでも使われる(荒舩清十郎の項目を参照)。

乳牛を飼っているところでは、飼料とした。休耕田の雑草防止策にもなった。ゲンゲの生える中に不耕起直播して乾田期除草剤を使わないですむ方法、ゲンゲの枯れぬうちに入水、強力な有機酸を出させて雑草を枯死させる方法がある。ただしゲンゲは湿害に弱く、不耕起では連作障害が起きかねない。21世紀に入ってからは、外来種のアルファルファタコゾウムシによる被害がめだつ。

ゲンゲ畑、三重県桑名市
化学肥料が自由に使われるようになるまでは、緑肥(りょくひ = 草肥:くさごえ)および牛の飼料とするため、8-9月頃、稲刈り前の水田の水を抜いて種を蒔き翌春に花を咲かせていた。これはゲンゲ畑と呼ばれ「春の風物詩」であった。化学肥料は、20世紀に入ると生産が本格化したが、原材料が軍事物資という側面があり農業分野で大量に使用することがはばかられていた。このためゲンゲを水田や畑に緑肥として栽培することで化学肥料の使用を抑える手法が取られていた。戦後は、化学肥料の大量生産や使用が自由になったこと、また、保温折衷苗代の普及によりイネの早植えが可能になり、緑肥の生産スケジュールと被るようになったことも、ゲンゲ畑が急速に姿を消す原因の一つとなった。

窒素固定は、植物が大気中の窒素を取り込んで窒素肥料のようなかたちで蓄えることによる。ゲンゲは、根に球形の根粒がつく。ゲンゲの窒素固定力は強大で10 cmの生育でおおよそ10 アール 1 t の生草重、4-5 kg の窒素を供給し得る。普通15ないし20 cmに成長するからもっと多くなるはずである。

 

紫雲英 の例句 

あぜ道のうねり見えけり蓮華草 政岡子規 れんげ
いちめんのげんげに風の波起伏 上村占魚
うつし世に人こそ老ゆれげんげ咲く 三橋鷹女
おほらかに山臥す紫雲英田の牛も 石田波郷
げんげ たんぽぽ まだ煙吐く汽車通る 伊丹三樹彦
げんげ、私に手を引かれたいあなたの子で 荻原井泉水
げんげたんぽぽおくの山川越えて来し 村山故郷
げんげたんぽぽ尾さばきのだるい牛 鷹羽狩行
げんげの環首よりはづす父の前 伊丹三樹彦
げんげの雨昼は灯の来ぬ家つつむ 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
げんげや菜の花やどの道ゆくも湖へ出る道 荻原井泉水
げんげんに座して女のものを喰ふ 政岡子規 れんげ
げんげんに弁当喰ひ居る女かな 政岡子規 れんげ
げんげんに顔うづめきく遠閑古 大野林火 冬雁 昭和二十二年
げんげんの下で仏は生れけり 政岡子規 れんげ
げんげんの実になる頃や時鳥 政岡子規 時鳥
げんげんの花うちおこす痩田かな 政岡子規 れんげ
げんげんの花に坐し利根をあかず見る 村山故郷
げんげんの花のさかりに関の雨 阿波野青畝
げんげんの芽の出そろへる初日かな 永田耕衣
げんげんをむしりて蔽ふ魚籠の鮒 富安風生
げんげんを打ち起したる痩田哉 政岡子規 れんげ
げんげんを見てむらさきの遠雪嶺 大野林火 冬雁 昭和二十二年
げんげ伸びきつてげんげ田盛り上る 山口誓子
げんげ咲きこの家母者健やかに 村山故郷
げんげ咲きこれの水照りがかなしかり 三橋鷹女
げんげ咲く朝むつ橋のくち柱 角川源義
げんげ摘む周の天下にあらざりき 星野麥丘人 2004年
げんげ摘む子等にも出会ひ旅つゞけ 星野立子
げんげ田と教へしがまだうす緑 伊藤白潮
げんげ田と梨の花棚平らなり 山口誓子
げんげ田にいつも白雲せりあがる 大野林火 冬雁 昭和二十二年
げんげ田にすこし離れて遊戯佛 伊藤白潮
げんげ田にもの抛りつぎ架線工 鷹羽狩行
げんげ田にスカート拡ぐ無電柱 山口誓子
げんげ田に人を思ひしは遠きむかし 三橋鷹女
げんげ田に古郷の家や遺子に逢ふ 角川源義
げんげ田に吾の居し跡経し時間 津田清子 礼拝
げんげ田に吾も脇臥北枕 山口誓子
げんげ田に子が入りて先づまろびけり 松崎鉄之介
げんげ田に容れられざりしげんげあり 相生垣瓜人 明治草
げんげ田に寝て欲しきもの双翼 津田清子
げんげ田に寝て白雲の数知れず 大野林火 冬雁 昭和二十二年
げんげ田に昔の煉瓦火葬場 山口誓子
げんげ田に来れば名張の山も見ゆ 右城暮石 句集外 昭和四十二年
げんげ田に湯を棄てて去る魔法壜 鷹羽狩行
げんげ田に牛を曳き出し終生唖 三橋鷹女
げんげ田に立てしその日の電柱点く 鷹羽狩行
げんげ田に自転車半没 あそび呆ける 伊丹三樹彦
げんげ田に花の三角波が立つ 鷹羽狩行
げんげ田に花菜田隣り入間川 角川源義
げんげ田の一つ部屋にて飲む食ふ 鷹羽狩行
げんげ田の夕かげり来し頃著きぬ 星野立子
げんげ田の広大これが美濃の国 山口誓子
げんげ田の色を夕焼が奪ひけり 鈴木真砂女 卯浪
げんげ田の電柱どれも傾ぎたる 岡本眸
げんげ田の鷺や直ちに天へ飛ぶ 山口誓子
げんげ田はいま誰のもの花盛り 右城暮石 上下
げんげ田はまろし地球のまろければ 三橋鷹女
げんげ田へみつばち放ちあるじ居ず 大野林火 冬雁 昭和二十二年
げんげ田へ女がさきに坐りけり 雨滴集 星野麥丘人
げんげ田や墓群隣る海女の小屋 角川源義
げんげ田や童話作家を訪ねゆく 渡邊白泉
げんげ田や鋤くあとよりの浸り水 臼田亜郎 定本亜浪句集
げんげ田をはじめ一村水浸し 鷹羽狩行
げんげ田を抜歯済みたる少女来る 飯田龍太
げんげ田を朝昼通り夜に通る 鷹羽狩行
げんげ田を洗足で歩きたがるかな 右城暮石 句集外 昭和四十六年
げんげ田を見尽くし遍路満願寺 山口誓子
げんげ田を鋤く一雨の後に出て 鷹羽狩行
げんげ田を鋤く帰らざる人のごと 森澄雄
げんげ田を鋤けとつばめにせかされて 長谷川素逝 村
げんげ畑そこにも三鬼呼べば来る 橋本多佳子
げんげ畑坐ればげんげ密ならず 橋本多佳子
げんげ茅花河原ひねもす空曇らず 村山故郷
げんげ野あり わが手で掴む後ろ髪 伊丹三樹彦
げんげ野に腰おろしても税重し 伊丹三樹彦
げんげ野に踏み入る 衰歩を 酔歩とも 伊丹三樹彦
げんげ野の 遍満光の 飛鳥地蔵 伊丹三樹彦
げんげ野を眺めて居れど夫はなし 桂信子 月光抄
げんげ野を行くバス車体丸出しに 右城暮石 虻峠
こころ堪ふ古りしげんげの畦をゆき 三橋鷹女
この道に左右無し左右の紫雲英田よ 香西照雄 対話
とぶ鮒を紫雲英の中に押へけり 水原秋櫻子 葛飾
とほる亡しげんげの畦を踏む時も 石田勝彦 雙杵
もう咲いてげんげすててある 荻原井泉水
もの出来ぬ痩田うつくし蓮華草 政岡子規 れんげ
セーラー姿もう今年だけ紫雲英風 中村草田男
トレンチを嫌がるげんげ減りにけり 阿波野青畝
一と刈りもせぬげんげ田に 利鎌 載る 伊丹三樹彦
一刷の紅は紫雲英田をちかたに 山口青邨
一枚の編み返しものげんげ鋤き 鷹羽狩行
一過せり濃きげんげ田もみづうみも 伊藤白潮
三日月に誓ふて交すげんげかな 渡邊水巴 白日
三角を忌まずげんげの三角田 山口誓子
上がり来し下から見えぬげんげ田へ 右城暮石 虻峠
上ヶ土のあひにわりなし蓮華草 政岡子規 れんげ
人知れず通ふ河原のげんげかな 上村占魚 鮎
低き山越しの没り日にげんげ畦 右城暮石 句集外 昭和三十九年
低鼻豊頬げんげ田に寝かされて 山口誓子
何十年入りしこと無きげんげ田よ 右城暮石 句集外 昭和四十一年
何犯すらむ紫雲英田に降り立ちて 中村苑子
先着の女二人はげんげ田に 右城暮石 散歩圏
入学の一と月経たる紫雲英道 橋本多佳子
切岸へ出ねば紫雲英の大地かな 中村草田男
十本の指ありげんげ摘んでゐる 三橋鷹女
千枚田げんげの紅をなしくづし 鷹羽狩行
半ば以上欠けしげんげ田花盛り 右城暮石 句集外 昭和三十五年
南無日蓮安房は妙法蓮華草 政岡子規 れんげ
印南野はげんげ日和よ遺影笑ふ 伊丹三樹彦
古き国古き彩してげんげ咲く 右城暮石 上下
右によけ左によけて蓮華草 政岡子規 れんげ
地は暮れて紫雲英田一枚微光せり 相馬遷子 雪嶺
地蔵照る 投げ込みげんげ一束分 伊丹三樹彦
売る花の如く紫雲英を束ね置く 山口誓子
夏に入つてげんげんいまだ衰へず 政岡子規 立夏
妻が長女に譲りしルビー花紫雲英 中村草田男
娯楽なき鳥にげんげを薙ぎ払ふ 鷹羽狩行
子を負はねばげんげ田の妻ひるがへる 伊藤白潮
富士の雪解けぬまげんげさかりなる 渡邊水巴 白日
富士山の裾野げんげの大平面 山口誓子
富士裾野げんげを刷毛で塗りしほど 山口誓子
山をあふれ~水辺のげんげかな 渡邊水巴 白日
山畑に紫雲英咲かそうと人々 金子兜太
山間ヒの天げんげ田に展けたる 右城暮石 句集外 昭和五十五年
岬のげんげ田 暗色 怒濤音をやどし 伊丹三樹彦
巡礼美貌げんげ彼方に鳰潜き 飯田龍太
往くさ来さ曲るげんげの畦いくつ 下村槐太 天涯
恥づかしぎものげんげ田に捨ててあり 波多野爽波
愁ひ身にあれば紫雲英の野は白し 三橋鷹女
我庭にげんげん咲けるうれしさよ 政岡子規 れんげ
我庭のげんげん肥えて色薄し 政岡子規 れんげ
手に余るげんげんの束捨にけり 政岡子規 れんげ
手に取るなやはり野に置け蓮華草 政岡子規 れんげ
手帖又落すげんげに寝ころべば 阿波野青畝
捨ててある紫雲英の束や夕日射す 中村苑子
摘めど摘めどげんげ尽きねばかなしかり 三橋鷹女
摘草やげんげんの束茅花の束 政岡子規 摘草
旅の真似するげんげ田に雨つのり 伊藤白潮
日々げんげ色その田より修道女 鷹羽狩行
木もなしに小庭は嫁菜蓮華草 政岡子規 れんげ
桜島いまし雲ぬぎ紫雲英の上 山口青邨
極楽の道へ迷ふや蓮華草 政岡子規 れんげ
極楽へ迷ひこんたり蓮華草 政岡子規 れんげ
母乳濃くなりて紫雲英田より帰る 鷹羽狩行
気まぐれをうかと来ぬげんげ濃き雨に 種田山頭火 自画像 層雲集
水浸きたるげんげ田水にげんげ咲く 山口誓子
波立てる鰻田げんげ田はしじま 松崎鉄之介
海に突ん出しげんげ田を打ち返しをり 村山故郷
海越えてきて踏む島のげんげかな 野見山朱鳥 曼珠沙華
溺愛の函げんげ田に乳母車 鷹羽狩行
父祖の地や今年げんげの衰ふる 角川源義
牛叱る声かやひびくげんげ田に 三橋鷹女
狡る休みせし吾をげんげ田に許す 津田清子 礼拝
田に牛入れて南ふく日のげんげ田水田 荻原井泉水
田の神のためにげんげを敷きつめし 鷹羽狩行
田一枚げんげ豊かや波郷の家 村山故郷
畦越えて咲きあふれたるげんげかな 高浜年尾
登り来てげんげ田のまだ花支度 鷹羽狩行
神将の左拳にまとふ紫雲英の風 古舘曹人 砂の音
童が走り紫雲英田の畦走り 清崎敏郎
笈摺を置く紫のげんげ田に 山口誓子
紫雲英の中にコンクリート建の寺 山口誓子
紫雲英の首環父なくせし子何祈る 有馬朗人 母国拾遺
紫雲英ゆらぐ常に序幕であるを許せ 中村草田男
紫雲英咲く小田辺に門は立てりけり 水原秋櫻子 葛飾
紫雲英打つ木曽の青天細き下 橋本多佳子
紫雲英滴む紫雲英の中に膝を埋め 清崎敏郎
紫雲英田が減つて村景薄れけり 百合山羽公 樂土
紫雲英田と湖の入江と相侵す 水原秋櫻子 玄魚
紫雲英田に住めば都と遊びけり 百合山羽公 樂土
紫雲英田に侠客ひとり裏返し 金子兜太
紫雲英田に母子三人月出るに 金子兜太
紫雲英田に漲りをれる愉色かな 相生垣瓜人 明治草抄
紫雲英田に馬の幻尾を振りし 百合山羽公 寒雁
紫雲英田のここをわれ歩く人しらず 下村槐太 天涯
紫雲英田のびつしり村に嫁来る日 鷲谷七菜子 花寂び
紫雲英田のまんなかにゐて子供刈る 山口青邨
紫雲英田の紫雲英あふれて次の田へ 山口青邨
紫雲英田の褪せたる後も落着かぬ 相生垣瓜人 微茫集
紫雲英田は尽きじ地球の円ければ 三橋鷹女
紫雲英田は風鰻田は水を張る 百合山羽公 樂土
紫雲英田や弔鉦のだしぬけに 百合山羽公 樂土
紫雲英田を幾重に峠なせりけり 水原秋櫻子 緑雲
紫雲英田を懐しみつつ来し吾ぞ 相生垣瓜人 明治草抄
紫雲英田を裾に敷き立つ三輪の神 水原秋櫻子 旅愁
紫雲英畑日々に隆まる揺色ぞ 香西照雄 対話
紫雲英荷と夕映充てし頬窪と 香西照雄 対話
紫雲英見て車輪音無き二階電車 山口誓子
紫雲英道幾筋断ちて基地始まる 香西照雄 対話
紫雲英野となる前殊に霞むらし 水原秋櫻子 蘆雁以後
紫雲英野に敢へて丘あり狂院載せ 中村草田男
紫雲英野の畝傍の子等に来る夕べ 有馬朗人 母国拾遺
紫雲英野の道たかまりて川跨ぐ 清崎敏郎
紫雲英野は礁の海につゞきたり 清崎敏郎
紫雲英野や一本の洋傘杖につき 山口青邨
絣着の嫁に げんげも負い籠の荷 伊丹三樹彦
美濃げんげ田に墓近江水田に墓 山口誓子
美濃ゆたか植田げんげ田隣りあひ 鷹羽狩行
老紫雲英生路そのまま戻り路 中村草田男
耕耘機げんげのしぶき浴びて鋤く 右城暮石 句集外 昭和四十七年
臥したきを耐へ来し日々ぞ紫雲英風 香西照雄 素心
舟で行く縁故投票げんげ流し 平畑静塔
花のみな垂るゝげんげの荷を担ぎ 高野素十
花紫雲英「疲れ負んぶ」の草履裏 中村草田男
花紫雲英児がふたり来て声ふたいろ 中村草田男
苗代やげんげの束の捨てゝある 政岡子規 苗代
茎長に紫雲英の花を摘みためて 清崎敏郎
菜の花紫雲英染物そろふ鯉幟 百合山羽公 樂土
蓮華草咲くや野中の土饅頭 政岡子規 れんげ
蓮華草我も一度は小供なり 政岡子規 れんげ
虻と虻これも組討げんげ揺れ 阿波野青畝
蛇籠あみ紫雲英に竹をうちかへし 水原秋櫻子 葛飾
血の気なくなりし老父と紫雲英摘む 百合山羽公 寒雁
裸足の娘げんげの畦を音もなく 松本たかし
見え渡る遠きげんげの紫も 山口誓子
親牛も仔牛もつけしげんげの荷 高野素十
賤機のげんげ田織の途中なる 山口誓子
踏み込んで大地が固しげんげ畑 橋本多佳子
踏切の鐘鳴るげんげ田もありて 右城暮石 句集外 昭和五十七年
転居の荷ほどきてげんげ田も近し 百合山羽公 寒雁
近づきてげんげ田花の密ならず 右城暮石 句集外 昭和四十六年
週末の贅沢げんげの絨毯藉き 鷹羽狩行
遠い日もだった 頬擦りげんげのこの冷たさ 伊丹三樹彦
重くなる霞に紫雲英田を起す 百合山羽公 寒雁
野道行けばげんげんの束のすてゝある 政岡子規 れんげ
釣堀に釣りてげんげ田つづきなり 岡井省二 明野
鋤きし田を囲みてげんげ田の真紅 鷹羽狩行
鋭角の紫三角田のげんげ 山口誓子
闇ひとしからずげんげ田花菜畑 鷹羽狩行
隣田は紫雲英咲きそむ鰻池 水原秋櫻子 殉教
雲ふかき紫雲英田敷けり幾重にも 水原秋櫻子 残鐘
頭悪き日やげんげ田に牛暴れ 西東三鬼
風に揺るゝげんげの花の畦づたひ 星野立子
駈け下りぬげんげの畦の見えしより 及川貞 夕焼
鶏鳴の野やげんげんによべの雨 村山故郷