<ヤギの大群>
モロッコ訪問記(17):イメリルを目指して下山
(アルパインツアー)
2009年6月7日(日)~18日(火)
第6日目:2009年6月12日(金)
<ツブカル小屋の朝>
■朝の食堂
夜通し夢を見ていたような気がするが,どんな夢だったか覚えていない.4時頃,夢が覚める.大きい方を催しているので,すかさずトイレに行く.私は海外に出ると,多少通じが悪くなる傾向があるので,早朝とはいえ,とにかく無事に通じがあることは大変嬉しい.
まだ,起き出すのには早すぎるので,再びベッドに潜り込んで,ウトウトとする.そして,同行者と一緒に,5時丁度に起床する.昨日まで,連続2日間にわたって,かなり長い時間歩いているが,足の疲れは全く残っていない.快調である.
ツアーリーダーから,朝食は7時からと言われている.天井が吹き抜けになっている1階の食堂を,上から覗くと,まだ時間前だというのに現地ガイドのアブダラさんと,ツアーリーダーのMさんが薄暗い席に座って,私たちが降りてくるのを待っている.
■簡単なコンチネンタルブレックファスト
7時丁度に,階段を下りて,1階の食堂へ向かう.ついウッカリ,カメラを持たないまま席に着く.カメラを取りに,もう一度,2階の寝室まで戻るのも面倒なので,サッサと写真を撮るのを諦める.どうせ,コンチネンタル風の簡単な朝食だから,わざわざ写真を撮ることもなかろうとも思っている.
私は,写真を撮る代わりに,朝食の様子をノートに急いでスケッチする.
朝食は至って簡素である.ランチョンマットの代わりにちり紙を広げる.その上に,パン一切れとお茶を載せる.これがすべてである.中学一年の英語で習った“ブレッドンバター”そのものである.飽食に馴れた私には少々物足りないが,パンの味は最高である.
■幕営地の朝
歩き出しは8時の予定である.まだ,少々時間があるので,身支度を整えてから,少し早めにツブカル小屋の外に出てみる.
何時,張られたか分からないが,幕営場にはいくつかのテントが並んでいる.
ロバが数頭,身じろぎもせずに立ったままで居る.彼らは,夜中も立ったまま眠っているというから感心する.
現地ガイドのアブダラさんが,小屋から出てくる.私に日本語と英語のチャンポンで,
「今日も良い天気ですね・・・」
と話しかけてくる.
アブダラさんの話によると,真冬になると,この辺りは数メートルの雪に覆われてしまい,石垣も雪に埋まってしまう.だから,スキーで一気にこの谷を下ることができるという.
<シディチャマロウ小屋を目指して>
■アプローチシューズを履いて・・
私たちは,出発予定の8時より若干早い7時52分に,ツブカル小屋(標高3,297m)を出発する.
ツブカル小屋から下山する登山道は,ロバが通る道なので,危険な箇所は全くなく,勾配もゆるいので,私は軽いアプローチシューズを履くことにする.そして,昨日まで使っていた軽登山靴は,ロバに運んで貰う荷物の中に入れてしまった.
このアプローチシューズは,昨年,ペルーに行ったときに購入したものだが,あれからほぼ1年.その間,丹沢の塔ノ岳へ登るときに,随分と使ったので,靴底のギザギザは大分すり減ってしまったが,まあ大丈夫だろう.
私たちは,所々に雪渓が残る谷の左岸沿いに下り続ける.
<登山道沿いに咲く黄色い花>
■最初の休憩
8時45分,粗末な掘っ建て小屋ともテントともつかない建物が建っているところで休憩を取る.この辺りの標高は2,990メートルほどである.何とも粗末な所だが,どうやら売店のようでもある.ただ,小屋の主は不在である.
<粗末な休憩所>
■対岸のヤギの群
休憩を終えて,8時52分に歩き始める.緩やかな下り坂のトラバース道が続く.下るにつれて,足元の谷間は次第に深くなり,えぐれてくる.
9時33分頃,谷間の向こう側,つまり右岸に,何か沢山の黒い点々が少しずつ動いているように見える.
足を停めてよく見ると,黒い点々はヤギである.急な岩だらけ崖で,よくもまあ滑落しないで歩いているなと感心する.
<対岸に沢山のヤギ:黒い点々がヤギ>
■大きな岩
9時37分,先頭を歩いている人たちが立ち止まって,谷を覗き込んでいる.
「・・何,何,・・・何があるの?」
と私も覗き込む.すると,やや広くなった川筋に,とてつもなく大きな岩を背負った小屋が見えている.
往路で,私たちが昼食を摂ったシディチャマロウ小屋(標高2,285m)である.
アブダラさんの説明によると,この大きな岩は,地元民が願い事を祈る信仰の対象になっているとのことである.元々,イスラム教では偶像崇拝は禁止されているが,この岩だけは,地元民が昔から信仰しているので,黙認されているという.
<真ん中の巨岩が信仰の対象になっている>
■おびただしい数のヤギとすれ違う
登山道の下り勾配が少しきつくなり,トラバース道から谷間に下り始める.そこで,おびただしい数の羊の群とすれ違う.羊の群のリーダーがどこに居るのか分からないが,シオシオ,コトコトと次から次へと羊が登ってくる.
どの羊も実に可愛いが,その数の多さに,思わず後ずさりしたくなるほど圧倒される.
■シディチャマロウ小屋のオレンジジュース
9時49分,私たちはシディチャマロウ小屋に到着する.ここで一休みする.
まずは,1胚10DHのオレンジジュースを所望する.このジュースの美味しいこと,天下一品である.
小屋のテーブルに座る.隣のテーブルに先客のグループが居る.色の黒い人,白人など男女まぜこぜ,数名のグループである.色の黒い女性が,英語で私に話しかけてくる.
「あなた方,どこから来たの?」
「日本からですよ・・・」
「あら,私も東洋人.インドです・・・で,ツブカル,山頂まで登った?」
「ええ,昨日,ちゃんと山頂まで・・」
「これから,ツブカル小屋まで,まだ,大分ある?」
私は,自家製のプロフィールマップを見せながら,
「今,ここですよ.まだ,もう少しありますね.ここから先は,もっと勾配がきついですよ」
「この地図,どこで手に入れたの?」
「これですか?・・これ私が地形図を見ながら,自分で作ったんですよ・・・」
「えェ~っ・・!! どうやって作るんですか・・?」
話が変な方向にずれる.私も多少の英語は話せるが,プロフィールマップを英語で説明するのは面倒.そうこうしている内に出発時間になる.
“Enjoy your nice trip.”
でさよならする.
<シディチャマロウ小屋に到着>
<広い河原を渡ってアラウドへ>
■川の左岸へ
9時58分,出発.
10時05分,大きな岩の間を,ザワザワと流れる川を渡って左岸に出る.暫くの間,大きな岩の間をすり抜けるようにして下り続ける.
標高が下がるにつれて,登山道両側の緑が次第に濃くなってくる.やっとエクメーネに入りつつあるなと実感する.
■広い河原が見下ろせる
10時46分,標高2,285メートル,掘っ建て小屋脇の斜面で3回目の休憩.この辺りまで来ると,谷間の緑も大分増えてくる.
10時27分に出発.斜面を回り込むように道が続く.
10時50分,眼下に広い河原が見え始める.アラウドの集落はもうすぐである.
■河原に降り立つ
12時丁度に広い河原に降り立つ.まずは,河原を横断,左岸に向かう.途中,数回,飛び石を使って,流れを横切る.広い河原の向こうに,尾根沿いに沢山の民家が密集している.アラウドの集落である.
■村人からサクランボを貰う
左岸に渡ると,ポツポツと民家が建ち並ぶようになる.広々とした敷地の住み心地が良さそうな家である.サクランボ畑がつづく.
11時18分,丁度サクランボを収穫している人に会う.日本語で,
「こんにちは・・」
と挨拶する.すると,この村人は,私たちに愛想良く返事をして,サクランボを2~3粒ずつ分けてくれる.思わぬ贈り物.ことのほか美味しかった.
■アラウドの郊外
12時19分,休憩所兼売店のような小屋の前で,ほんの1~2分の建ち休憩を取る.今日4度目の休憩である.直ぐに出発する.そして,また,飛び石を伝って,川の右岸に渡る.
すぐにアラウドに到着する.両側に石造りの立派な家が並ぶ.子どもと女性の姿は見えるが,男性の姿はほとんど見かけない.ところどころで,数名の女性が集まって,子どもをあやしながら井戸端会議をしている.女性達は申し合わせたように,とても良く太っている.
<川沿いの休憩所兼売店:奥さんの愛想が良い>
■アラウドの集落
10分ほど歩くと,アラウドの集落を抜け,やや急な下り坂になる.ここから先は,いわゆる生活道路なので,とても歩きやすい.道路の両側には,大きな木が生え茂っていて,心地よい緑陰を作っている.
■緑陰の生活道路
この辺りまで来ると,かなり多くの人たちとすれ違う.現地人だけでなく,観光客の姿もチラホラする.馬に乗った白人女性が登ってくる.どうやら馬でこの辺りまで登ってくる観光コースがあるらしい.それにしても,随分と太った女性で,馬が可愛そうになる.
<やっとイメリル>
■緑陰の中の散策路
11時49分,イメリルの集落を一望できる場所を通過する.ここからは,森に囲まれた緩い傾斜の道を進む.森の中の道である.道の両側には住み心地が良さそうな家が続く.多分,実際の生活は不便だろうが,そんなことを無視すれば,何とも居心地の良さそうなところである.
時々,ロバや羊をつれた村人とすれ違う.私たちはイメリルの郊外に到着しているようである.すれ違いざまに,こちらから挨拶するが,現地の人は反応がない.何となく無愛想な感じがする.
緑一杯の斜面に沿ったトラバース道を進む.すれ違うのがやっとの狭い道である.道の山側には,掘りっぱなしの溝があり,その中を豊がな水が流れてる.
■イメリル小屋に到着
11時36分,いきなり道幅が5~6メートルある広い道路に鋭角に突き当たる.三叉路唐崎は,舗装はしてないが,自動車が通れる道である.三叉路で,ほとんど180度近く大きく左に「く」の字に曲がって,先ほどの道の直ぐ下を,ほぼ反対方向に下り続ける.
程なく,山側の斜面に民家が立ち並び始める.
雨が降ると,路面に水が流れるらしくて,水が流れた後が深くえぐれている.私たちは,凸凹の砂利道を10分ほど下って,12時02分にイメリル小屋(標高1,740m)に到着する.ここは,6月9日に宿泊したホテルである.
私たちは,このホテルで昼食を摂った後,専用バスに乗って,今日の宿泊地であるマラケシュへ向かうことになっている.
(つづく)
「モロッコ訪問記」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/e54646d78803d27151b5df0854cdfb8b
「モロッコ訪問記」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/ca5affbb7e6a52144851a03e600ca2fd
「モロッコ訪問記」の最初の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/31b79faa79d02b8fe28dc5177880d2e4
「モロッコ訪問記」の索引
(編集中)
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