<ルートバーン登山口に到着>
ルートバーン(13):ルートバーントレッキング第1日目(2)
(湘南カラビナ隊)
2005年1月28日(金)~2月5日(日)
第4日目:2005年1月31日(月) (つづき)
12 デバイド峠登山口へ
<専用車でデバイド登山口へ>
■テアナウ出発
「良い席を取りたい人は,早く専用車に乗ってください」
とSさんが私たちに耳打ちする.
9時39分,私たちは,1番乗りで,再び専用車に乗り込む.後からテアナウから新たに加わった乗客がドヤドヤと乗り込んでくる.そして,20人余りの参加者で専用車はほぼ満席になる.
9時42分,専用車が出発する.これからテアナウ湖に沿って北上する.
女性のガイドが,マイクを使って,
「左側に見える湖がテアナウ湖でス・・・テアナウ湖は氷河が溶けてできた湖でス.テアナウはマウリ語デ『うずまく水』という意味でス」
とたどたどしい日本語と,英語で説明をはじめる.
どうやら,カレンさんが,ローマ字で書いた日本語の文章を棒読みしているらしい.
天候はすっかり回復している.薄雲が多いものの,右上から夏の太陽が照りつける.ここは南半球.だから太陽は東から北側の天空を廻って西に沈む.
そんなことは頭の中では十分に分かっているのだが,実際には,どうもどちらが南で,どちらが北か,頭の中がこんがらがって,俄には判断できない.本当に戸惑ってしまう.
<どんよりとした空:テアナウ近郊>
■ガイドの説明を聞きながら・・
ガイドの説明が続く.
「この辺りには『タカヘ』(良く聞き取れなかったので名前が違うかも知れない)という鳥が住んでいます.百年ほど前に絶滅したと思われたのですが,最近,発見されました.タカヘは空を飛べない鳥です(注1)」
9時57分,専用車は深い常緑樹の森林の中を走っている.
私は,途中で,ついウトウトとする.私の席の隣に座った仁王様が,グッスリと寝込んでいる.私は仁王様の寝顔を覗き込みながら,この方は,本当に元気な方だなと感心する.
その内に,私も居眠りをする.
10時24分,目が覚める.ガイドがたどたどしい日本語で説明をしている.
「1万5千年前まで,この谷は氷河で被われていました.今でも地下は氷なので(つまりツンドラなので),大きな木は育ちません」
■モレーンが続く
10時25分,前方に鋭く切り立った山が連なっているのが見え始める.山腹は氷河に被われている.私はノートを開き,その山容を即座にスケッチする.
「もうすぐミラー湖(Mirror Lake)です.鏡のように前の景色が映ります」
とガイドの説明がある.
10時30分,再び深い森林の中を専用車は進む.専用車の中にも,外の冷気が伝わってくる.
10時31分,またガイドの説明が始まる.
「もうすぐ,南緯45度と書いた看板があります・・・日本の北海道の稚内と同じ緯度です」
眩しい日光が,林の間から斜めにこぼれて,車内に差し込む.
10時33分,急に視界が開ける.左手には河原が広がる.この辺りはモレーン(氷推石,moraine)(注2)地形である.モレーン特有の「こんもり,ずんぐり」した小高い丘がくねくねと続く.これらの丘は氷河によって,削られて生成されたものである.
<天気が良くなり始める>
■ガン湖
10時35分,ふたたび森林の中を進む.
10時44分,左手にガン湖(Gann)が見え始める.ガイドがガン湖の説明をしているが良く聞き取れない.
10時47分,右手にも湖が見え出す.
「あと,20分ぐらいで,登山口に到着します.歩き出すと,すぐに登り坂になりますので,着るものの調節をしてください」
<デバイド登山口に到着>
<デバイド峠登山口>
■サンドフライに注意
10時51分,デバイド登山口に到着する.海抜570メートルである.
登山口には簡素な木造の小屋が建っている.この小屋の裏手に,男女の区別のないトイレがある.専用車が2台停まっている.私たち以外にも登山者が居るらしい.今,専用車を降りたばかりの登山客で,トイレは混雑している.そこで少々待つことにする.
小屋の前は,ちょっとした広場になっている.涼しい.だが,サンドフライ(注3)も飛んでいる.これに噛まれると,かゆくて困るので,すかさず防虫剤を両腕と顔に塗りたくる.
ガイドの説明によると,この辺りの日差しは,とても強くて,紫外線の量は日本の約7倍にも達するという.そこで,日焼け止めも皮膚に塗り込む.
そういえば,2年前にニュージーランドを訪れたときに,南極のオゾン層が破壊されて,大きなオゾンホールができていることが話題になっていた.私は,このオゾンホールが気になっていた.ガイドにその後のオゾンホールの経緯を尋ねてみたが,今はオゾンホールの騒ぎは聞かないという.
■餌という感じのランチボックス
11時02分,ガイドからランチボックスを貰う.大きなビニール袋に,サンドイッチ,オレンジ1個,チョコレート,スポンジケーキが,ゴソゴソと入っている.包装に全くデリカシィがないので,餌(えさ)という感じである.
<ランチボックスル>
■トレッキング開始
11時16分,トレッキング出発点を示す看板の前で,交代で写真を撮る.いよいよトレッキング開始である.
ガイドが,
「これから歩き始めます.約1時間半でハウデン小屋(Howden Hut)に着きます.川の水は,すべて飲めます.マイペースで歩きましょう」と注意する.ガイド3人は,先頭,中間,最後の3カ所につく.先頭がチャド,中間がカレン,最後がサラさんである.
<ルートバーントラックの始点:人物は無関係>
(つづく)
[注]
(注1)帰国後,消防隊長が,新聞記事の切り抜きを私に提供してくれた(竹内海南江,2005).
この記事によると,ニュージーランドは飛べない鳥の楽園のようである.どうやら,私が「カツヘイ」と聞き違えた鳥の正式な名前は「タカヘ」らしい.「赤いくちばしに青と緑の羽を持つ色鮮やかな鳥」らしい.この記事によると「一時絶滅したと考えられていた.しかし,1948年,南島西部にあるフィヨルドランド国立公園で再発見された.それからはタカヘが住める環境整備が行われ,少しずつではあるけれど,増えつつあるようだ」とのことである.
記事では,タカヘそっくりな鳥「プケコ」を紹介している.「色合いはタカヘそっくりだが,とてもスリムで警戒心が強く,空を飛ぶことができる・・・・プケコが飛べなくなってタカヘに進化した」と面白い指摘をしている.つまり,飛ばなくても生きていけるので,プケコが「おでぶちゃん」になって,タカヘになったという.
私たち8名は,今のところ山野を歩ける「プケコ人間」でいられるが,寒いからといって,コタツに入って動かないでいると,「タカヘ人間」になってしまう.注意しなければいけない.
(注2)モレーンは,氷河が運搬堆積した石塊,土砂,粘土などの総称である.氷河の末端では,氷が解けるときに,氷河が運んできた堆石を全部投げ出して,そこに堆石の丘をつくり,その高さは1000メートル以上に達することがある(終堆石という)(奥津他,1957,pp.254-255).
(注 3)サンドフライは蚊のように小さな虫で,ニュージーランドの山間部,海岸に多く居て,人間の血を吸う.サンドフライの分布は次の地図12-1の通りである.私の経験でも,サンドフライは,ルートバーントラックよりも,ミルフォードサウンドトラックの方に,比較にならないほど多く居たような気がする.
なお,サンドフライについては,次のURLに詳しい.
http://www.teara.govt.nz/en/sandflies-and-mosquitoes/1
htp://homepage2.nifty.com/treknz/sandfly.htm
「ルートバーン」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/0083b2a181e893953cfccc9e6f60cd55
「ルートバーン」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/aa1afd5a305347864d530859025aafbe
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[編集後記]
2011年3月27日(日) ,少し寒い
相変わらず丹沢の登山自粛が続いている.少しでも足が萎えてしまわないように鎌倉界隈を歩いているが,塔ノ岳往復に相当するだけ歩くのは容易ではない.
こんな毎日が連続すると,いくらポンコツ老人でもイライラが募る.
そこで,多分同じような悩みを持つ方々が居られるだろうと思って,通勤者の迷惑にならない日曜日に,近場の三浦アルプスを歩き回ろうと提案した.声を掛けた方々のほぼ全員が,私と同じように山行ができなくてムシャクシャしていたらしく,たちまちの内に5名で三浦アルプス南尾根を縦走することになった.このときの様子は,別のブログ記事で掲載済みである.
三浦アルプス南尾根は長さが僅か10キロメートル余り,累積標高もたった600メートルほどの里山だが,縦走すると気分も爽快になる.
今日は計画停電もなかった.良かった.良かった.
2011年3月28日(月) ,温暖
午前中,貯まっているヤボ用をこなす.
午後から,大船まで山を下る.途中で,フラワーセンターにでも立ち寄ろうかと思ったが今日は休館日.途中,額縁・画材屋に立ち寄る.ホルベイン製の水彩絵の具,プルシャンブルーを買おうかと思ったが,まあ,面倒なのでやめる.額縁を一通り眺めてから店を出る.
続いて,現在,工事中の小袋谷立体交差橋の進捗状況を,野次馬として眺める.この頃,一気に工事が進んでいるように見える.
大船駅界隈は,例によって沢山の人で混雑している.大船駅に隣接するルミネに入り込んで,本屋と文房具屋で1時間余り立ち読みや品定めで費やすが,結局,何も買わないで外へ出る.
駅近くにあるファストフード店に入り込んで,200円也のコーヒーを賞味してから帰宅.
パソコンに向かって,昨日の三浦アルプスの資料を纏める.同時に,描きかけの絵が気になり始めるが,興が乗らないので,筆を持つ気にならない.
こうしてまた,ぐうららな1日が過ぎてしまう.もったいないなとつくづく思う.
(ボヤキおわり)
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