テロをする人達に対して、イスラームの国々の諸団体が、いかにイスラームではテロを否定しているか、つまり、あなたのやっていることは、イスラームでは認められてない、ということを、わかりやすく、事細かに説明している公開書簡があるので、再度、その書簡の要点(実際の書簡はA4にして32ページの詳しく丁寧な物です)の日本語訳を貼っておきたいと思います。
テロをする人達の言動には、イスラーム学者たちがこの文書の中で指摘するような、イスラームに反している点が、いくつもあります。(この書簡の要点で取り上げたものだけでも、24点あります)
よく、テロ=イスラーム、テロ=ムスリムの真面目な人達がすること、と誤解されていますが、実際には、イスラーム世界では、イスラーム学者たちやイスラーム団体が、彼らに、以下の書簡を送って、テロをする人たちが間違っていることに気づくことができるよう、誠実に忠告をしています。
彼らの言動のどこがイスラームに沿っていないかは、以下の書簡の内容の要点をお読みいただいて、ご理解いただければ幸いです。
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慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において
イスラーム諸団体からISIS(イスラム国)への公開書簡の要点より
(イスラームの教えに反する彼らの言動⇔イスラームの重要な大原則) ※一部意訳
書簡の詳細は、http://lettertobaghdadi.com/
1.イスラーム法の見解を出す事が許されるのは、イスラーム法基礎学の文献で述べられている「ムフティー(イスラーム法学の見解を出すため、イジュティハードが可能な者)の条件」を満たす者だけであり、それ以外の者は勝手にイスラームの名のもとに見解を出してはならない
また、クルアーンやスンナ全体を考慮せず、クルアーンの一節或いはその一部を単独で根拠に引用し、独自の見解を出してはならない
2.イスラーム法的見解は、アラビア語に精通している者しか出す事は出来ない(訳注:アラビア語話者と言うだけでは不十分で、アラビア語学の専門的知識が必要)
3.イスラーム法を安易に考え、イスラームの専門的知識の無い者達に任せてはならない
4.イスラームにおいては、ムスリム社会に住む者なら誰でも知っている様な根本的な事以外においては、学者間の意見の相違が許される余地がある(訳注:自分達の意見のみが正しいイスラームで、他の意見は間違っていると見なしてはならない)
5.イスラームにおいては、法的見解を出す際に、適用対象の「現状」を考慮する必要がある
6.イスラームでは、無実の人を殺す事を禁じている
7.イスラームでは、(訳注:例え敵であろうと)使者を殺す事を禁じている。ジャーナリストや援助団体の職員たちは使者と見なされるので、殺してはならない(訳注:使者のみならず、戦いの際でも敵方の非戦闘員を害する事は禁止)
8.イスラームにおいて、「ジハード」は防衛的なものであり、且つ、イスラーム法に沿った原因、方法、目的を満たさなければならない
9.イスラームでは、明らかに不信仰な言動を行った者以外は、不信仰者と見なす事を禁じている
10イスラームでは、啓典の民に、害を加えてはならない(訳注:啓典の民のみならず、宗教を理由に、無実の人を害してはならない)
11.ヤズィーディー教徒は、啓典の民と見なされるべきである
12.イスラームにおいては、イスラーム学者達が一致してその放棄を認めた奴隷制を、復活させてはならない
13.イスラームにおいては、宗教の強制を禁じている
14.イスラームでは、女性の権利を尊重しなければならない
15..イスラームでは、子供の権利を尊重しなければならない
16.イスラームでは、刑罰を適用する前に、公正さと慈悲を保証する正当な手続きを経なくてはならない(訳注:専門知識があり、公正で慈悲に満ちた見解を出せる裁判官の裁定なくして刑罰は実行されない。イスラームの刑罰は、少しでも疑わしい所があれば実行されない)
17.イスラームでは、人々を拷問にかける事を禁じている
18.イスラームでは、死体を痛めつけることを禁じている
19.イスラームでは、自分が行った悪事を至高なるアッラーのせいにする事を禁じている
20.イスラームでは、預言者様達(彼らの上にアッラーの祝福と平安あれ)やサハーバ(彼らの上にアッラーのご満悦あれ)の御墓等を破壊する事を禁じている
21.イスラームでは、統治者が人々の礼拝を許している限り、明確な不信仰の言動以外の理由で、統治者に謀反を起こす事を禁じている
22.イスラームでは、イスラーム共同体の合意(イジュマーウ)なくして、カリフを宣言してはならない
23.自分の祖国に属する事は、イスラームにおいて合法である
24.イスラームでは、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の亡き後、必ずしも全員がヒジュラをしなければならないわけではない
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これをお読みになられて、「えっ、テロするやつって、ムスリムじゃないじゃん?」って思われた方もいるかもしれません。実際、テロをする人達が、イスラームの教えに背いていることは確かです。
ただ、彼らのことを、ムスリム(イスラーム教徒)ではない、と断言することは誰にもできません。ここが、日本人にわかり難い点だと思いますが、テロをしている人達を、なぜイスラームの権限のある学者達が、「彼らはムスリムではない」、と断言しないのか、と不思議に思われるでしょう。
それができない理由は、イスラームでは、信仰は心の中のことで、他人が外面だけを見て、判断することではない、と考えるからです。
「俺はアッラーを信じているんだ!!!」と言っている人が、殺人を犯していても、テロをしても、どんなひどい犯罪をバンバンしていようと、他人が、「あなたはムスリムではない」、と言うことができないのは、「あなたは心の中で、イスラームを信じていない!」と判定すること自体が、人間には不可能だからです。
その人が、どんなにイスラームで禁じられていることをしていても、心の中を、切り裂いて見ることができない限り、「ムスリムではない!」判定は、嘘になってしまいます。それができるのは、神のみ、人間がすることではない、とイスラームでは考えるのです。
しかし、この書簡をお読みになられた方はお分かりになられたと思いますが、テロをする人達には、ムスリムとして、圧倒的に足りないモノがあります。
そうです、それは、イスラームの知識です。イスラームを知らない!!ということが、テロを生み出しているのです。
イスラーム世界の本当の問題は、ムスリム達の、自分の宗教に対する無知や無学です。
ムスリムであっても、クルアーンを読んだことがない、イスラームの教えを学んだことがない、という人たちが、イスラーム世界に大勢いること、が、テロを生み出す土台となっています。
信じられないですよね、私も最初は、えっ、ムスリム(イスラーム教徒)なんだから、イスラーム教のこと知ってて当然でしょ、と思いました。でも、シリアにいた時に、先生方が口を酸っぱくして繰り返し言っていたのが、
「医者の子どもが全く医学を勉強せずに、医者になれますか?
親がムスリムだからと言って、イスラームのことを勉強せずに、本当のムスリムになれるわけないでしょ。」
という言葉です。なるほど。
テロと戦う本当の武器は、「教育」です。正しいイスラームを知ってもらうこと、これに尽きます。
この書簡によって、間違った主張に騙されるムスリムの若者たちがいなくなりますように。
世界中のムスリム達がイスラームの正しい教えを学び、テロから救われますように。
偏見や誤解によって、ムスリムの子どもたちに、憎しみや差別が向けられることがありませんように。
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