時は夜明け頃
所は川辺の雑木林
今朝もまた彼女さんはお天道様の光を一身に浴び、川面が照り返す黄金色の輝きに見入っています
この川辺にはいろいろな鳥さん達が集い、食し、寛いでいますけれども、わざわざ人間である彼女さんに近づいてくれる鳥さんというのは…実のところとっても少ないのです
そもそも危険を犯してまで、おっかない人間と近しくするよりも、先ずは自分達の生活、そして安全を優先させることの方がどんな動物にとっても大切なことです
しかし何事においても例外というものがあります
その例外を犯し、この川辺で彼女さんの間近にいらっしゃった最初の鳥さん、それがこちらのアオサギさんです
彼女さん (゜o゜;) ……ハワワ!
普通は動物達の方が人間を恐れます
そして大抵の場合は動物達は逃げるか、あるいは威嚇してくるのですが‥このアオサギさんは大変落ち着いているようでした
なんといってもこの風貌、この大きさです
彼女さんは今でこそ…アオサギさんの頭から目尻にかかる黒い羽毛はまるで武士の月代みたいだし、翼はまるで新撰組や五右衛門(ルパン3rd)の羽織のようで…ようするに[キャー!カッコイイー♪]などと、内心で思っていますけれども…
この時は逆に彼女さんの方がハワワ!と、ビビっていらっしゃいました
すると‥
アオサギ「卒爾ながら…いいものでござるなぁ‥夜明けは」
彼女さん「……は、はい!‥左様でござる‥?」
アオサギ「ふっ…あはは。いや、これは失礼した。何せ戯れに口を利いてはみたものの、まさかに返答があるとは思わなかったのでなぁ」
彼女さん「…いえいえ、此方こそそのようなお気遣いを頂けるとは、思ってもみなかったわよー、コホン‥でござる」
あれれ?彼女さんは時代劇がお好きなのでしょうか?‥お年頃の娘さんのわりに、女子力はともかく武士力はずいぶんお高そうなご様子ですね(笑)
アオサギ「この処、毎朝、拙者とお主様のみがこの場でお天道様に見入っておった故‥な」
彼女さん「これは‥如何様、やっぱり御来光は[浴びて]こそですものね♪」
アオサギ「然り。まったくその通りでござるな」
彼女さん (^^)「はーい♪」
アオサギ「あはは‥では拙者はこれにて朝餉に向かうが、お主様はゆるりとして参られよ」
彼女さん「はいはい♪ではまた明日でござる♪」
アオサギ「応とも、ではまたな」
このようにして始まった彼女さんとアオサギさんの、淡く爽やかな交流はしばらくの間つづきました
しかし大雨や台風などを間に挟んで以降、顔を合わせることも…三日に一度、週に一度と減り続け…ここ半年ほど老剣客然としたアオサギさんと彼女さんは会えていません
このアオサギさんは今にして思えば…(ずいぶん御高齢だったよね‥)と、彼女さんは思います
餌捕りにしても、イーグレット様達や川鵜さん達のように、自らが積極的にお魚さんを追ったりする事は全くありませんでした
いつも身動ぎ一つせず、己が足下にお魚さんが来た時にのみ、とても自然な振る舞いで、その長い首を鞭のようにしならせ見事にお魚さんを捕っていました
正に居合い斬りの達人のようでした
最初はアオサギさんとは皆がこのように達人の如く振る舞っているのか…と、彼女さんは思っていましたが、やがて若いアオサギさんの餌捕りを見るや自分の勘違いに気がつきます
若いアオサギさんなどは他の水鳥さん達と同じく、ドタバタとお魚さんを追いかけていたからです
だから彼女さんは思うのです
彼女さん (あのアオサギさんはお年だったから、もうお魚さんを追いかけることが出来なかったのかしら?)…と
確かに老アオサギさんのお魚を捕る瞬間の動きは達人のそれに見えるのですが、トータルで見ると他の水鳥さん達が5~6匹のお魚を捕る間に、いつもせいぜい1~2匹しか捕れていないようでした
今、彼女さんの30m程前にいる若いアオサギさんは、一心に川面を見つめ…お魚さんを探しているようです
彼女さん (‥元気…かな……)
今朝も川辺にはおだやかな風が吹いています
どうぞよい一日を
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この一枚↓は昨年の冬に、木陰で私が腰をかけていたその真上(私から3~4m程)の枝に止まりに来たアオサギさんを真下からスマホのカメラで撮った画像です
この後しばらくの間、アオサギさんと私は一本の木の上と下から一緒にお天道様を眺めて、その後何日か同じようなことが続きました
アオサギさんはこの川辺で見かける鳥さん達の中でも、ずば抜けた粘り強さをお持ちしているようにお見受けしています
他の水鳥さん達は一カ所で2~30分ほどお魚を探して、待って、見切りをつけて移動しますが、アオサギさんは30分以上、時には一時間以上川面を見つめていることも間々あります
まだ若いアオサギさんにおいても他の鳥さん達に比すると落ち着いてはいますが、やはり年を重ねる事で出てくる泰然自若さは見るべきところがありまくりました
しかし同時に、アオサギさんは同種間での縄張り意識がとても強いという一面もお持ちです
遠くから他のアオサギさんが自分の方向に飛んでいるところを発見すると、自分が後ろを取れるタイミングを計った上で間髪を入れずにモビング(つきまとい、追い払う)行動を行います
恐らく単独生活が主になる為でしょうか、アオサギさんは他のアオサギさんを追い払う時の雄叫びと、びっくりしたときの悲鳴?ぐらいしか鳴き声を上げる事を私は聞いたことがありませんでした
今回のお話の老剣客然としたアオサギさんは、昨年の夏から半年ほどの間、川辺にて私とつかず離れずの距離を置いて一緒に御来光を眺めていたアオサギさんをモデルにしています
そしてこのアオサギさんはちょくちょく私に向かって(多分ね)鳴き声を上げていることがありました
その鳴き声の響きには、私を威嚇するような鋭さはなく、何かにびっくりしたような激しさもなく……まるで何か、気軽な世間話でも私に話しかけているような感じがしていました
それに比べて(笑)最近の若いアオサギさん達は…私が彼らの方に近づいて来ると見るやいなや!
(゜Д゜;)!!「うわあ!おたすけー!!」
と、ばかりに恐竜チックな鳴き声を上げて逃げて行きます‥
その度に、ちょっとした寂しさを感じては‥かつてのおだやかで気さくな‥老剣客然としたアオサギさんの事を思い出してしまいます
また会いたいな…と
230 拝