≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

浜松市楽器博物館へ行った。その3(弦楽器2など)

2022-06-19 18:11:00 | 音楽
浜松市楽器博物館へ行った。その2(弦楽器1) よりつづく

↓ラベリート(メキシコ) 可愛い小さな楽器だ。背景のマス目の数をまえの記事のバイオリンとかと比較するといかに小さいかが分かる。ここで話はヨーロッパから広がる。
優雅な輪郭のバイオリンとか凝った形のバリトンとかを見たあとだととても素朴に見える。とはいっても3Dの曲線がうねうねしていないだけで、よく見れば丁寧に作られている。
ラベリートを軽く検索かけたがちっともヒットしない。スペイン語で語尾に -ito をつけると「小さい」という意味が加わるそうで、それなら、と -ito を外した Rabel で検索したら見つかった 。膝の上に立てて構えて弓で鳴らしている。素朴なスペインの民俗楽器で、中世ヨーロッパの レベック が元となっていると考えられている。ちなみにレベックにも元ネタがあって、アラブの ラバーブ を元にスペイン経由で中世中期にヨーロッパに広まったとされている。ラベル、レベック、ラバーブはみな小型の弓奏楽器です。
アラブからヨーロッパへ、そして中南米へ、人と一緒に楽器も伝えられるんだなあ。

↑このラベリートは、メキシコがスペインの植民地になった際に入ってきたものが土着化・小型化したものと思われる。
ラベリートではなくラベルの動画なのだが、チリのチロエ島で撮影されたものがヒットした。 陽気な中にも優しさの含まれる民俗楽器の味わいだ。スペインのカンタブリア州の動画 もあった。スペインの方はアラブの味が濃いなあ。
ラベリートはこれより小さいから、膝の上ではなく左腕にのせて弾くんじゃないかな。

話が一気に中南米に行ったので、バロック時代にスペインから持ち込まれた音楽と楽器が植民地で土着化するとこうなる、というギタリスト笹久保伸氏の動画つきツイート 。バイオリンです。多分ペルーのアヤクーチョのお祭りじゃないかと思うんだけど、スペイン語が分からない。この動画のバイオリン、楽器の顎当てのついていない側を顎で挟んでいるんだよな。

ここで弓奏楽器から離れるとしよう。しかし弦楽器の話はまだつづく。こんどは弦楽器のうちの撥弦楽器です。

笹久保伸氏を登場させたらギターの話をしないのは失礼でしょう。南米のギターの演奏スタイルにバロック音楽が残っている、というツイート
ペルーのアヤクーチョの例を笹久保氏がギターで再現している動画つきツイート 、それを詳しく解説した5つの動画つきツイート 1 2 3 4 5
アルゼンチンやボリビアの例の動画つきツイート 。フラメンコのスタイルはそこまで古くないよね、というツイート
バロックスタイルを残しつつ先住民族の音楽と混ざりながら変容し土着化した演奏動画つきツイート 。しっとり素敵です。
なんでやたらと笹久保伸氏のツイートのリンクを貼ったかというと、一発でたどりつけるまとまったサイトを見つけられないから。やたらと貼る価値のあるものだよ。2022年1月2日から8日にいくつもツイートしておられる。

話がギターにシフトしたのでギターの起源について検索してみたのだが、似たような違うような話がいくつもあってどれを推すべきか迷いまくる。ネット上のあれこれを読み漁って唸っていたが、Classic音楽,リュート,宇宙「ギターの系譜」が記事として新しいしまとまっていてよいと思った。そこには
「ルネサンス期のスペインには4コースのルネサンスギターと6コースのビウエラがあった、ビウエラには優れた作品が多く書かれ、6コースのルネサンスluteと同じ調弦でレパートリーを共有できるものだった」とある。
コースというのは 一緒に鳴らす同じ音の複数の弦 のこと。マンドリンなんかは複弦だな。(私家版楽器事典「復弦 と コース」。「複弦」は「副弦」「復弦」と書くこともあるそうだ)
それで現在の一般的なギターは6弦なんで、4コースのルネサンスギターと6コースのビウエラ、一体どちらがギターの祖先なのか !? という疑問がずっとあるわけだ。

現在のギターが6弦なんだから6コースのビウエラが元なんじゃないの?と思いたいところだが、上記のとおり6コースのビウエラの調弦はルネサンスリュートに同じで、現在のギターとはちょっと違うんだよな。ギターの3弦のG3を半音下げてF#3にして第3ポジションにカポをはめるとビウエラ/ルネサンスリュートの調弦になるらしい。(弦楽器工房 CRANE「● Hyper Lute 教室 ● 第3章:調弦・各部名称について」
ルネサンスギターとビウエラ、見た目もよく似ているし、なんとかどちらかを選んで決着をつけようとか思わなくてもいいんじゃないかな、と数日唸った結果 思った次第。似ている楽器が同時代に存在するっていえばヴィオール属とバイオリン属もそうだったし、現在なら同じ音域のトランペットとコルネットとフリューゲルホルンは普通に使い分けるし、いろいろあった方が楽しいよ。

で、そのビウエラなのだが、「世界に4つだけ存在する、16世紀に制作されたビウエラであると信じられている楽器」のうちひとつがエクアドルの首都キトにあるという。(西野 潤一氏「キトのビウエラ カルロス・ゴンザレス レクチャーレポート」)また新大陸です ( 遠い目 .... )


ところでさっきビウエラ/ルネサンスリュートの調弦で引用した 弦楽器工房 CRANE 鶴田氏は、インターネット普及初期から 18世紀~20世紀初頭のギターの修理・復元/修復 ・調査・レプリカ製作・図面配布、ならびに情報公開等々なさっている方で、ポルタティーフオルガンは作られていないものの、自分で楽器をいちから作ってみようと思うわたしや夫のような人間には大変たーいへん有難い存在なんである。氏にお世話になった人たちは世界中に沢山いる。こういう善意に支えられた文化がある。尊い。


楽器博物館から脱線して新大陸を回ってきたが、博物館にもどって撥弦楽器ラストです。いちおうね。
煌莫高窟壁画に描かれた楽器の復元。向かって左から花弁五弦阮、阮、琵琶、五弦琵琶 だそうだ。2019年10月にトーハクで正倉院展 を観たときに螺鈿紫檀五絃琵琶や螺鈿紫檀阮咸のレプリカもあったのを思い出した。
左の二つはフレットが歯抜けだ。クロマティック(半音階)ではなくダイアトニック(全音階)なのか? と思ったが、間隔はクロマティックな気もするし、一体どんなスケールなんだろう?

この展示のほかに、ウード というアラブの弦楽器が西に行くとリュート、東に行くと琵琶、というのをユーラシア大陸の地図の上に展示されているものもあったのだが、それの写真は撮りそびれてしまった。その代わり 私家版楽器事典「 バルバット・・・東へ西へ」 のリンクを貼る。
長い時間をかけてユーラシア大陸の各所で育まれてきた楽器が 大航海時代にユーラシア大陸から新大陸へ飛び出していき、むしろそちらで古い形が残っていたりするんだなあ。ロマンだ。ちょっと物悲しい弦楽器のしらべを想像した。


さてお次は鍵盤のついた楽器の変わりダネ。鍵盤を指で押し下げることで音程を選んで鳴らして演奏する楽器という意味なので、弦が鳴ったり笛が鳴ったり 音の出る原理はなんでもありなんである。

↓打弦鍵盤付きイングリッシュ・ギター ロングマン&ブロードリプ 1780頃。ハンマーは響孔を通り下から打弦。商品名「ピアノフォレルテ・ギター」。 とキャプションにあった。
私家版楽器事典 鍵盤付きのイングリッシュギター にもうちょっと分かりやすい説明があった。丸いサウンドホールに金色の素敵な透かし(ローズ)が嵌っているけれど、よく見るとそれぞれの弦(コース)に当たる部分に指輪のような丸い輪が斜めに並んでいる。そこからハンマーが出てくるのだろう。それで音を鳴らすにしても音程を選ぶ左手の仕事はなくならないし、ハンマーより普通に右手で弦を鳴らす方が多彩に表現できると思うから、普及しなかった と私家版楽器事典にあるのは納得。
軽く検索をかけたがその様子の分かる動画は見つからなかった。ハンマーが出てくるのは面白そうなのに。


↓オルガン付きハーディー・ガーディー。
ハーディー・ガーディー というのはなかなか興味深い楽器だ。思いのほか起源が古く、バイオリンのように弦をこすって音を出す楽器なのだが、弓を往復させるのではなくハンドルをぐるぐる回すことで松脂を塗った円盤が回って弦をこする。つまり擦弦楽器なんである。
鍵盤で操作する旋律弦のほかに鍵盤で操作しない鳴りっぱなしのドローン弦がある。動画  ひしゃげた音色の鳴りっぱなしの音の上に物悲しいテーマがリズミカルに乗る感じがバグパイプを思い出させ、バイオリンとは一味も二味も違う、味わい深い楽器だ。

そのハーディー・ガーディーに小さなパイプオルガンがくっついているらしい。一体どういう仕掛けで音が出るのだろう?
ハーディー・ガーディーとオルガンのくっついている下の箱がウィンドチェスト/風箱なのかな? ふいごを動かす操作もハンドルで行えるのだろうか? パイプオルガンの一種であるストリートオルガンは直接の操作はハンドルをひたすらぐるぐる回すだけなので、ハーディー・ガーディーと合体させるには親和性がよいのかもしれない !? などと疑問は尽きないが、軽く検索しても動画が見つけられなかった。面白そうなのに。


↓鍵盤付グラスフォーン。 これはガラスの鉄琴のような楽器で、鍵盤を押すとハンマーが叩く仕様なのだろう。3オクターブあるね。
軽く検索したが全然ヒットしなかった、残念。どんな音なんだろうな?



    浜松市楽器博物館へ行った。その4(アコーディオンのなかま) へつづく


 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 浜松市楽器博物館へ行った。... | トップ | 浜松市楽器博物館へ行った。... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

音楽」カテゴリの最新記事