ふくらく通信

東北人が記す、東北の良さや震災の事、日々のなんだりかんだり。
他所で見る東北の足跡や繋がり、町の今昔や輝きを発信。

繋がった線路、新しい踏切(石巻線):2013年2月19日の記録

2017-09-24 17:26:54 | 東北被災地の歩み:南三陸・石巻

石巻の沿岸を通る石巻線は、渡波駅を出て沢田駅あたりから万石浦に沿って進む。

渡波から浦宿までの区間で、ずっと運行再開に向けて復旧の努力がなされてきたが、いよいよ再開予定の2013年3月16日まで1ヶ月をきった。


前年は、折立踏み切りで線路を取り外して工事しているのを見たが、今は、もっと明るさを増した光景がそこにある。

(↓2012年7月折立踏切:線路が切れている)

 

新しい砂利が盛られ、新たに線路や踏み切りが設置されていた。

(↓2013年2月:沢田側から見た折立踏切)


なんだか、新しい命が吹き込まれたみたいだ。


(2012年7月折立↓)

(2013年2月↓)

 

折立辺りでは、道から所々で万石浦が見えるが、その銀色の水面を背後に、線路の脇には土嚢が積まれている。

今後は、海面基準から2.6メートル高い堤防が作られる予定だ。


寒風の中、線路内で作業員の方々が働いている。

きっと、日々の暮らしや仕事や旅など、いろんな人生の一場面を乗せて走る列車と、乗客を思いながら尽力しているのだろう。

いろんな努力が集まってできる鉄道。

再開が楽しみだ。


少しずつ変わる石巻市街:2013年2月19日の記録

2017-09-24 15:13:04 | 東北被災地の歩み:南三陸・石巻

かつて、葛西清経が城を構えたという石巻の日和山。

如月の風はさすがに冷たく、市街地にあれども海と川を眼下にした山であることを思い知った。

日和山公園の展望場所に立ち、かじかむ手で写真機を構える。

昨年は、桜の頃にここから海と町を眺めた。


昨年4月と比べて、大きく変わったわけではなく、やはり傷んだ海岸沿いの寒々しい風景が広がる。

(2012年4月日和大橋付近↓:右端の白い建物は石巻私立病院)


(2013年2月↓)


それでも、町全体を一つ一つ良く見ると、少し違っているのが分る。

北上川方面を見ると、対岸の川口町は、工場や魚類冷凍冷蔵庫などの間にいくつか残っていた住宅が無くなっていた。解体が進んだのだ。

(2012年4月:川口町鈴木造船所辺り↓)


(2013年2月19日↓)

 

鈴木造船所の近く、青い囲いと川ふちにある「震災廃棄物仮置き場」だが、前年はまるで造成地のように積まれていたものが、その10か月後には随分減っている。

(2012年4月↓)


(2013年2月19日↓)

 

 

川を左手に右側へ目を移すと、石巻湾に沿った南浜町が見える。今では空き地だらけだ。

昨年残っていた茶色い屋根の2階建てと、青い屋根の3階建ての集合住宅も解体されていた。

(2012年4月↓)


(2013年2月↓)

 

に沿って、長く堤防のように積まれていた町の破片が、今は片付いている。

変わって、護岸のために白い土嚢が積まれているのが見えた。

(2012年4月石巻湾沿い↓)

 

(2013年2月↓)


少しずつ、少しずつ、新たな町へと向かって動いている。


春を待つ雄勝の石に花の菓子:2013年1月の記録

2017-09-24 14:53:26 | 東北被災地の歩み:南三陸・石巻

2013年1月27日の仙台は雪景色。

前日の日差しに、だいぶん雪が解けたと思いきや、翌日はまた真白な綿のように雪が敷き詰められていくこの頃。

新たな雪は柔らかい。小さく軽やかな雀も、舞い降りた先の足元が柔らかく、さすがに埋まってしまった。

めんこいめんこい。 


暦は、あと七日もすれば節分で、その翌日に立春を告げるのだが、こちらで野に花が咲くのはもっと先のこと。

雪明りが美しいとはいえ、時々花の彩も恋しくなって春が待ち遠しくなろう。


そんな時に、馴染みの店で季節の花を楽しむ。

ただし、その店は和菓子屋だ。

職人の手業で咲く、小さな甘い花々も心を和ませる。

先日は、凛として力強さや明るさを漂わせる、水仙と寒牡丹を求めた。


この菓子の花々を、より美しく咲かせる器がある。

「雄勝石」の銘々皿だ。


雄勝は、津波で多くを失った町。

あの日、普段は穏やかで美しい雄勝湾が暴れ、町が飲み込まれた。

住む場所も仕事場も、数分で押しつぶされていく恐ろしさ、それを目にした人々の心を思うと、むせぶほど切ない。

(↓2012年7月4日の石巻市雄勝町) 


そこは、海の幸と玄昌石が豊かな町であった。

雄勝の石は、漆黒の美しさが活かされ、昔は硯で有名だった。

今、津波からの再起を目指す中で、雄勝石は硯だけでなく、様々な器としても活用されている。


手にした銘々皿は、黒地に柔らかな光沢があって、縁ふちの割り模様は岬の岩を思わせ、石肌がさざ波のように見える。


そこに花の菓子を乗せると、良く引き立ち、一層鮮やかになった。

雪解けの始まった丘に咲くようだ。


寒牡丹は厳しい寒さを受け止めて咲き、水仙は雪中にも咲き始めて春を知らせる。

被災地で努力する人々の姿も、寒中の花に似る。


菓子の花を乗せ、雄勝の石に宿った春を見ながら思う。

この明るさが、きっと雄勝にも広がっていくようにと。