花の写真を撮っていると、よく「何の花ですか」と聞かれる。
そんな時、私は相手を見て知っている花ならば教えるのだが、相手によ
っては「さぁ何の花でしょうね」と惚けることもままある。花に限らず
動植物の名前を知ることはその生き物を知るための入口となる。
名前を知らずして(勿論、自己流の名前でも良いのだが)その世界を
知り深めることはできない。別に宗教だけではない、はじめに言葉ありきなのだ。
でも人によっては花の名を知ることで満足してその世界を訪れることなく
出て行ってしまう。そういう人(私から言わせると大半そうなのだが…)には。
名を知ることがその世界からの出口となってしまう。レッテルを張ることで
その中にある豊穣な世界をシャットアウトしてしまうのだ。
さて、多磨霊園に隣接する武蔵野の一角に浅間山公園がある。4月下旬ごろから
この公園ではニッコウキスゲ(正式名はゼンテイカ)が咲き始める。
今年訪ねたのは4月下旬、キスゲに先駆けてキンランが見ごろを迎えていた。
この時期に限らず、武蔵野の面影を豊かに残すこの公園では一年中自然に
包まれた静かな時間を過ごすことが出来る。
林床に咲き誇っているのはキンラン、ムサシノキスゲの花は見当たらない。
木漏れ日を浴びて輝くキンラン
株によって一花だけの若いものや、たくさんの花株をつけたゴージャスなものもある。
並んで咲いたり、家族のように寄り添って咲いたり見ていて飽きない。
キンランより少し遅く咲くギンランも咲いていた。
正式にはササバギンランという名だ。
こちらのより小さい花がギンラン
しばらく歩いていたらやっと開花しているムサシノキスゲに出会えた。
開花しているのは全体の数パーセント程度。
いつもは5月中旬ごろに見ごろを迎えるので春の早い今年とはいえ
訪ねる時期がすこし早かったようだ。
この時期は木の花も多く咲きだす。クサギ、ニセアカシアと白い花が
多いが、目についたのはサワフタギとコゴメウツギ
足もとにはまだ緑色のホウチャクソウ
ヤマユリやイチヤクソウ、トンボソウも見かけたが花はもう少し後になってから。
キスゲが見頃を迎える時には花を見ることが出来るかもしれない。
ゆっくり公園を一周しても一時間ほど。ベンチに腰を下ろしてニセアカシアと
フジの花の混じった甘い香りに暫く酔った。
お終いはキスゲの花を探していて見つけたウラシマソウ
この辺で。