課題学習への提言
ここで、ぼくが日ごろから疑問に思っている、学校や私立進学校の課題学習の問題点について少し触れます。まず、小学校の漢字学習帳(漢字ドリル)についてです。
熟語の形ではなく、ひとつの漢字だけを何回かくり返し書くような体裁のものが、よく採用されています。しかし、たいていの場合、漢字は文脈の中で「熟語」の形で使います。この方法は漢字を最初に覚えるための便法なのかもしれませんが、熟語で使ってはじめて、漢字そのものがもっている意味が「体感」できるのではないでしょうか。
ちなみに、団の課題演習は、必ず文の中で熟語で使われている問題集を使用します。子どもたちは、漢字を文脈の中での使われ方とともにノートに解答しているあいだに、意味と使い方を覚えていきます。単文中での使われ方の書き取りをする方が、「記述になれる」など、様々な意味において、はるかに効果的だと思います。
さて、これは本題から少しはなれますが、中学校以上の課題(宿題)についても疑問をもっています。
私立進学校(特に中・高)では日々の課題を問題集に直接書き込む形で提出する場合が数多くあるようです。しかし、術語や解答を「一度書き込ませるだけ」で、うまく記憶に定着することは考えられません。授業中に「ほとんど同じ板書をノートさせる」などの工夫をしていれば別ですが、「一度だけの演習」ではあまり意味がありません。記憶は「同一対象に対するくり返し」で効率よく定着します。
たとえば参考書や教科書を何回もくり返し学習していると、記憶に残っているあるイラストから「答を思い出した」、「答えのヒントがつかめ、解答が導き出せた」というようなことがよくあります。また「学習回数を重ねる度合いによって、学習内容相互の関連が生まれ、新しい問題でも総合判断で正解できる」ということもよくあります。
生徒のことをほんとうに考えるのであれば、「ノートを使って何回もくり返すという方法」、一見手間がかかる「古典的な」方法に見えますが、その方がより効果的で効率的な方法だと考えます。
実施に際して多少の障害や抵抗があり、またチェックする際の煩雑さがあったとしても、ノートを使って複数回くり返し提出させる方が生徒のためです。
漢字学習と計算演習のたいせつさ
さて、本題に戻ります。団では先の要領で四年生から計算演習と漢字の習得を日々の課題にしています。その理由です。
ちょっと写真をご覧ください。これは小学生用の科学啓蒙書(「おもしろ理科こばなし」宮内主斗編著 星の環会)の一ページです。
四年生以上で習う漢字を●で隠してみましたが、「本を読んでいるとき見慣れない漢字を見ている感じは●を見るのにやや近い」のではないでしょうか。
ふりがなが振ってあっても、「読解のポイントになる熟語が理解しづらく読みにくいこと」、「意味が分かりにくく、嫌になるだろうこと」がよく分かると思います。
「うちの子は本を読まない」という話をよく聞きますが、本を読むには漢字になじみがなければなりません。漢字が苦手だと「読むことができません」。「本を読む・読まない」という以前に、例のように、「漢字になじみがないと本が読めない」のです。
ふつうは「本を読むから漢字を覚えるのでは」と考える人が多いと思いますが、実は逆に、「漢字が分からないから本を読むようにもなれない、したがって、さらに漢字が分からなくなる」のではないかと思っています。読書習慣を身につけるためにも漢字はたいせつです。
そして、やはり読むことができないと、どの科目の勉強もできるようにはなりません。「漢字の習得は早い時期ほど、そして習得量が多いほど、学習を有利に進めることができる」と考えています。
算数の計算演習も、九九ができないと、かけ算はもちろん、わり算にも大きな影響が出ます。「意識せずとも数字が頭の中で動く状態」が理想です。できるようになるには練習しかありません。計算できず、漢字がわからないと考えていくことができません。考えていけなければ学習は決しておもしろくなりません。四年生から漢字と計算の宿題を出していくのはこういう理由です。
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立体学習を実践 学習探偵団 http://www.gakutan.com/
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