見つめるべきは「子どもの目」、向き合うべきは「子どもの姿」
教育ママゴン脱出作戦第二回です。ぜひ子育ての参考にしてください。教育ママゴンの堅い殻を脱ぎ捨てましょう。
「子育て」でたいせつなのは、一面的で一方的な「情報」ではありません。子どもを育てるのは人間です。血の通った父であり、母です。日々子どもと向かい合う親です。親と子の交流です。
頼りになるのは「子どもを見つめる自らの目」と「心の余裕」です。「他人の情報ではなく、自ら子どもと正しく向き合い手に入れる情報」です。
「IT利用で最新の成績報告を受信して・・・というのが信頼できる最高の指導・・・」。実は、そういう感覚こそ脱却しなければならない「トラウマ」であることに気づく人たちが増えることを願ってやみません。
偏差値や月間・週間順位などの数値だけを信奉する中途半端な似非科学志向が素晴らしい子どもを育てるのではありません。一時的な情報に惑わされ、振り回されている間に「失なわれていくもの」がどんどん増えていきます。
それは、「自らの心で子どもを見る目」であり、「親子で一緒に過ごす時間」であり、「子どもをきちんと見ることができているという安心感」です。
すべて失われていきます。
古来から最新・最高の子育て法は「子どもにちゃんと向き合うこと」です。「機械的!惰性的」に進んでいく「子育て」の日々に、「愛という『くさび』を打ち込める」唯一の方法です。血が通う究極の養育法です。
質問ー益川さんは、「人間の能力には大きな差があるとは思えない」とおっしゃっていますが、ご自分のことを「天才」と思うようなことはないですか?
益川 絶対に、そんなことは思いません。ふつう、ちょっと良くできる人を「天才」といういい方 をしますが、ぼくの考える天才はかなり狭くて、どこかで常軌を逸したところがないと天才ではないと考えています。だから、ぼくの考える「天才」は、ほとんどいません。たとえば、大変尊敬 している南部陽一郎先生(二〇〇八年、益川さんと同時にノーベル物理学賞受賞)も、ぼくが考える「天才」では)ありません。じゃあ、益川が考える天才は誰だといわれたら、たとえばアメ リカのファインマン(一九六五年、朝永振一郎らとノーベル物理学賞受賞)は天才だと思う。凡人とは発想法が違うんですね・・・。
(「益川博士のロマンあふれる特別授業」益川敏英著 朝日学生新聞社)
素晴らしい能力の持ち主であるはずのノーベル賞学者の多くを天才とは認めない益川氏が天才だと認めるファインマン。彼を育てたのは、受験情報や受験塾・有名な先生たちの指導ではなく、セールスマンだった父です。
同じく天才エジソンを育てたのは頭の固い学校の先生ではなく、お母さんです。天才に育つ基盤を培ったのは、子どもにきちんと向き合ったお父さん・お母さんの「アナログ指導」です。
お父さん・お母さんは「成績管理のアイパッド」を手にしていたわけではなく、「子育て仲間」もいませんでした。二人が備えていたのは「子どもをしっかり見つめる目」と「先を見通す冷静さ」、そしてあふれんばかりの愛情でした。
ファインマンのお父さんは、週末になると避暑地で林の中に入って、自然界のさまざまなおもしろいできごとを話しました。やはり避暑に来ている家族の母親たちがそれを見て、同じように息子たちを林に連れ出すよう父親連中をさかんに説得しますがうまくいきません。そこで仕方なく、ファインマンのお父さんに「一緒に連れていってくれ」と頼みますが、きっぱり断られます。
お父さんは二人だけで森に入り、森での指導や語らいをつづけたのです。「自分たちだけのスローシンキング」の関係を築きあげたかったからです。
つまり、今の「子育て」の風潮とは逆に、まわりの父母たちとは距離をおいたとも言えます。たいせつな週末の休暇を子どもとの「森歩き」に使うお父さん、さらに何よりも二人での語らい(後日触れます)を大切にしたいという思いがひしひしと伝わります。ファインマンを科学者にしたいと考えていた(だろう)お父さんは、これ以外にも、小さいころから、自然や読書に興味をもたせるよう、さまざまな働きかけをしました。
子どもたちを育てるためには「誰が何をするのが、より効果的なのか」が、十分想像できると思います。力を与えられるのはお父さんやお母さんをおいて他にありません。(なお、後日「夢の教科書を求めて」で、その方法と効果をくわしくたどってみます)
さて、この稿はまだ続きますが、次週はひとつ話を挿みます。「お母さんの役目を果たしている森」のエピソード、「森の音は賢母の声」です。
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