昨日のブログで花売りとかマッチ売りとか書きましたが、あっ、思い出します、あの人たち。20年以上も昔、30歳代の私は繁華街松山で飲み歩き、若いホステス方面とうひひな日々。松山の酒場での都市伝説で「小人の写真屋さん」「花売りおばちゃん」というのがあり、両者とも自家用車はベンツ(それだけ儲かっているとの噂)なんです、凄いねとか話題になっていました。(その後、両方とも原物を見ましたが真相不明)
で、今回の話は松山ではなくて、同じ頃の栄町での出来事です。あの頃の栄町、古い市場、怪しい酒場、立ちん坊が主体で今日の様な安くて安心できる場所ではなかったのです。滅多に行かない場所の、たしか「スナック久米島」とか店名は忘れましたが女友達の忍改め香ちゃんと飲んでいました。突然の訪問者は「流しの歌手」
「あの~3曲で千円です、いかがですか?」と少しオドオドしながら、こちらの様子を伺います。歳は40歳前後(もしかして私と同じぐらいカモ)童顔で髪は五分刈り、黒ズボン、白いシャツで地味、ガットギターにハーモニカホルダーを首から下げ、でもハーモニカではなくて大学ノートに手書きの歌詞を書き込んだやつを乗せて歌うスタイル。
「どんな曲でも歌います、お客さんも歌えます」というので、「ジャア、3曲ね」と千円前払い(後払いは問題が起こりやすいと彼のお願いに答えて)で、何をリクエストしょうかな?と考えていたら、こちらの様子を見透かすように「このノートに100曲書いてあるので、その中から選んで下さい」とか言いやがるので(何でも歌えないジャン、こら)と思いつつ適当に青い山脈などオーダーし、演奏が始まる。
ギターをみた瞬間から嫌な予感がしていました。ド(C)のフレットだけがやけに凹むほど酷使された跡があるのです。で、単音での出だしのテーマが始まり、いよいよ歌に・・・普通は歌が入ればコードでバッキングして時々カウンターメロなど入れて雰囲気を作りますが、奴の演奏一から十まで単音・・・歌とユニゾン、君、演歌のジョージ・ベンソンか?それも思いっきりド下手にした・・・「チョット止まって、別の曲も」とあわてて別の曲に差し替え(その時奴は少し寂しそうな顔をした)ても同じ結果。判った事(1)コードが弾けない(だから歌詞本にコードの書き込み無し)(2)どの曲でもド(C)の音から始まる(3)間奏、歌のバッキング、全て「単音」・・・苦笑いの僕ちゃん&香ちゃん。(一応、バンドマンの私ですので、実に楽しく、こんなミュージシャンも居るのねと別の意味で感心しました、それと100曲丸暗記にも)
「演奏はもういいから、お金もあげるから、チョット話していい?」「はい」
「あんた、時々お客さんに死なされないか」「よく、死なされます」「仕事替えた方が良いと思うけど」
「そろそろ、止めようと思っていました」「うん、長生きしたければ、その方が幸せね」
その後、流しの歌手のお兄さんを見かける事は二度と有りませんでした。目出度し。目出度し。
喉かに池を見て、のほほんしていると足元では食い物が貰えそうだと鯉の皆様浅ましく場所取り合戦。これ、我ら人類も同様な人生かもね。
ロビーでボケッとしているとスタッフの有本さんから声を掛けられ、ああ、とか言いながら(医療関係のユニフォームが意外と似合うね)と思います。
よんでくれてありがとうございます