人生誰もが、ある日、自分探しの旅にでる。
湯川さんと、後藤さんは、イスラム国に拉致された。
そして今、その交渉期限を迎えた。
…
メデイアは、後藤さんばかりを詳しく報じる。
そりゃそうだ。
後藤さんには、報道に値する、立派な背景がある。
外国人記者クラブで会見をした、後藤さんの母親は、インテリそのもの。
凛々しい会見だった。
か細く小さな声の湯川さんのお父さんは、どこにでもいる、小さな善人だ。
だから、ニュースにならない。
あまりにマヌケな湯川さんは、外務省からもマスコミからも、そのまま、マヌケとして扱われてきた。
だから、どんなニュースにも飾りがつかない。
愚か者だと、誰もが嘲笑する。
しかし、僕らは、大切なことを忘れている。
湯川さんは、人生を賭けた、男の旅にでたのだ。
男なら、理解すべきだ。
こんなドラマチックな男を、ちゃんと見届けてあげよう。
人生平等。
イスラムの神様は、どう大岡裁きをされるだろう。
…
まるで、はだしのゲンを彷彿させる、父と子のクロスロード。
父、湯川正一さんは、長く絶縁していた大バカ者の息子を、誰よりも愛していた。
その息子が、人生復活を賭けた命がけの、シリア渡航する日に、成田空港へ息子を見送り、"腹をくくって行け"と送りだした。
湯川さんは、ここで、はっきりと、誓えたに違いない。
人生を失敗し、夜逃げしても、あれを切りとっても、死に切れず、オカマにもなれず…。
全てをなくした。
それでも生きるのだと、自分をささえた妻までを病気で失う。
湯川さんは、誓いを口ずさんだ。
湯川さんは、ぶよぶよの体を、ありったけ着飾って、シリアの戦場に立っていた。
湯川さんは、神の前に、仁王立ちしたのだ。
僕は、今時どこにもいない、そんな大バカ野郎に、エールを贈りたい。
Rock 'n' Roll
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