2020年3月12日
テスラを阻むのは販売競争か電池供給かそれとも環境団体か
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山本隆三
常葉大学経営学部教授
住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。
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3月上旬のGMのEV戦略発表時には、電池製造についても発表が行われた。現在のリチウムイオン電池で最もコストが高い原料はコバルトだが、使用量を70%カットしたアルチウム電池を製造する。
50-200kWhの能力があり、航続距離は400マイル、コストはkWh当たり100ドル以下とされている。現在欧米メーカが使用している電池価格はkWh当たり200から250ドルと言われており、実現すれば大きな価格競争力を持つことになる。
LG化学と共同で生産するため、既にオハイオ州で工場用地を買収しており起工式は今春、投資額は23億ドル。
今年2月、テスラは中国プラントでの製造用に、中国CATLからコバルトを使用しない価格競争力のあるリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)を購入する協議を行っていると報道された。
今後のEV生産を左右するのは競争力のある電池の確保と見られている。
世界最大のEV供給を狙っているフォルクスワーゲンも韓国サムソンSDI、LG化学、中国CATLなどからの供給に加え、スウェーデンの電池メーカ・ノースボルトにも10億ドルの出資を行った。
大手自動車メーカがこぞってEVに進出し競争が激化することに加え、電池供給はテスラの将来を脅かすことになるかもしれないが、
さらに目の前に問題が起こった。テスラは初の欧州工場建設のためベルリン近郊に土地を手当てしたが、環境団体が工場建設により森林破壊が生じるとして工場建設を差し止める訴えを起こしたのだ。
EV製造により、大気汚染、温暖化問題の解消に寄与することになるが、訴訟を起こした環境団体には森林破壊のほうがより重要な問題のようだ。
裁判所は一旦立木伐採禁止の仮処分を出したが、結局取り消し伐採は可能になったが、工場建設許可発行はこれからであり、まだ紆余曲折がありそうだ。