<近江商人がモデルか>
:::::
磯崎功典
1953年神奈川県生まれ。77年慶応大経卒、キリンビール入社。99年ホテル・ホップインアミング総支配人、2001年広報部担当部長、04年サンミゲル社副社長、10年キリンホールディングス常務、12年キリンビール社長を経て15年から現職。
1953年神奈川県生まれ。77年慶応大経卒、キリンビール入社。99年ホテル・ホップインアミング総支配人、2001年広報部担当部長、04年サンミゲル社副社長、10年キリンホールディングス常務、12年キリンビール社長を経て15年から現職。
■人生に無駄なことなどない
――自らの経営にも生かされていますか。
「社長として必要な力量は3つあると考えています。ものをよく考える洞察力を磨くこと、もうひとつは楽しく、夢のあるストーリーを語り共感を得ること。そして最も大事なことは人間力です」
「人間力とは、本気度と誠実さ。それに加えて、それまで積み重ねてきた足跡だと思います。私が人間力が高いと思う経営者は2人いて、まずファンケルの創業者、池森賢二さんです。
人々の『不安、不満、不便』を解消するため、無添加化粧品で事業をおこした。子供のころ父を亡くして、中学卒業後に様々な職業を経て起業するなど激動の人生を送っています。もう一人はニトリホールディングスの創業者、似鳥昭雄さん。あらゆる困難を乗り越えて、しびれるような経験を積んだことで成功にたどりついた。言葉に説得力がありますよね」
「このお二方とは比べようもありませんが、私も青年期に少し苦労しました。父は日本専売公社(現日本たばこ産業)で働きながら、兼業でミカン畑をしていました。それが脳梗塞を患って後遺症が残ったため、私もミカン畑を手伝うことになったのです。神奈川県立小田原高校という進学校に通っていたのですが、父の代わりに地元の専売公社に就職する話も出ていました。なんとも言えない気持ちになりながら、急斜面の畑で草刈りをしたり、籠に入れたいっぱいのミカンを運んだりしていました。精神的に追い詰められましたが、神様はいるのですね。懸命にリハビリを続けた父から『学校に行っていいよ』と言われ、大学に進学することができました。私の原体験になっていると思います」
「社員の中には、やりたい業務につけずに思い悩んでいる人もいるかもしれません。でも、人生を振り返ると無駄なことはないし、どんな経験も絶対に意味があると言い切れます。人生で簡単なコースを選ぶと、いつまで立っても、しびれるような経験は身につかない。苦労を経験することで人の優しさも身に染みて感じることがあるんです。人に寄り添うことも、共感することもできるようになります。社員には、特に若いときにしびれる体験をしてほしいですね」