<新型肺炎の全国的蔓延の原因は習近平政権当局による言論統制か>
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2020.2.20(木)
福島 香織
プロフィール
(ふくしま・かおり)
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て
2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。
2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『中国絶望工場の若者たち』(PHP研究所、2013)、『中国「反日デモ」の深層』(扶桑社新書、2012)、『潜入ルポ 中国の女』(文藝春秋、2011)、『習近平王朝の危険な野望 ―毛沢東・鄧小平を凌駕しようとする独裁者』(さくら舎、2018)などがある。メルマガ「中国趣聞(チャイナ・ゴシップス)」はこちら。
中国絶望工場の若者たち
中国「反日デモ」の深層
潜入ルポ 中国の女
習近平王朝の危険な野望 ―毛沢東・鄧小平を凌駕しようとする独裁者
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一方で、中国の知識人たちは、今年の全人代に中国版グラスノスチ(情報公開)に踏み切るための議論を期待していた。
清華大学の許章潤教授らは李文亮医師の死に際して、公開書簡に書かれた五大訴求を連名で発表した。そこでは、全人代を予定通り開いて、憲法に従った言論の自由の権利について討論するよう求めている。
李文亮は、新型肺炎の危険を12月30日にSNS微信で発信したことを“デマ”とされ、武漢警察に“社会秩序擾乱”の罪に問われて訓戒書を書かされた後、新型肺炎に罹患、2月6日に死亡した(公式発表による死亡日時は2月7日だが、実際の心停止は2月6日であり、2月7日までの延命措置は政治的パフォーマンスだとみる人々は李文亮死去の日は2月6日だと主張している)。彼のSNSでの発信が阻まれなければ、人々はもっと早く感染に気付き、感染防止策がもっと早くとられたかもしれない、と多くの人が考えた。
許章潤ら知識人は公開書簡で、新型肺炎の全国的蔓延の原因は当局による言論統制のせいであるとして、李文亮医師の死亡日である2月6日を言論自由日にすべし、と要求していた。五大訴求を改めて羅列すると以下のとおりである。
(1)2月6日を国家言論の自由日(李文亮日)と制定せよ。
(2)憲法第35条が付与する言論の自由の権利を実施せよ。
(3)国家機関は即刻ソーシャルメディアに対する検閲や封鎖を停止せよ。
(4)武漢と湖北籍の公民への平等な公民権利、医療救助を保障せよ。
(5)全国人民代表大会の緊急会議招集、今年の定例会議の中止を避け、公民の言論の自由を即刻保証するにはどうすればいいかを討論せよ。
(1)2月6日を国家言論の自由日(李文亮日)と制定せよ。
(2)憲法第35条が付与する言論の自由の権利を実施せよ。
(3)国家機関は即刻ソーシャルメディアに対する検閲や封鎖を停止せよ。
(4)武漢と湖北籍の公民への平等な公民権利、医療救助を保障せよ。
(5)全国人民代表大会の緊急会議招集、今年の定例会議の中止を避け、公民の言論の自由を即刻保証するにはどうすればいいかを討論せよ。
許章潤はほかにも「憤怒の人民はもはや恐懼しない」という格式ある政権批判文をネットに掲載し、政府の情報封鎖、欺瞞の報道、隠蔽がこの感染症災害を引き起こしたとして政権の責任を問うている。許章潤はこうした政権批判ともとれる文章をネットに出したためか、今、軟禁状態に置かれているという。
全人代延期が、習近平政権の今後にどのような影響を与えるのかは未知数ながら、デマと真実の情報が混在して権力闘争と責任のなすり合いが続けば続くほど、中国の感染封じ込め工作は長引き、中国経済・社会はカオスに陥る。
全人代でなくてもいいが、どこかのタイミングで緊急幹部会議を招集して、本気の中国版グラスノスチについての討論を行うことが、中国人民にとっては一番望ましい展開であろうと思う。
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