認知症予防の第一人者、朝田隆・筑波大学名誉教授は、自身が経営する東京都内の認知症クリニックを発信拠点に、YouTubeなどインターネットを通じてデイケアサービスを提供する「どこでもデイケア」を4月中旬、スタートさせた。患者は家にいながらスマートホン片手に絵画、音楽療法や筋トレ指導などのサービスを受けられる。新型コロナウイルスが猛威を振うなか、感染を懸念して通院を避ける患者らに従来の治療メニューを継続して受けてもらう狙いがある。
朝田教授は東京都文京区で「メモリークリニックお茶の水」を、茨城県取手市で「メモリークリニックとりで」をそれぞれ開設している。
両クリニックのデイケアでは軽度認知障害(MCI)の人らを対象に、医師だけでなくプロの芸術家も指導する絵画や音楽療法を取り入れているほか、筋力トレーニング、脳活・認知トレーニングなど五感を刺激し、脳の活性化を図るためのメニューを多数提供している。
ところが、3月に本格化した新型コロナウイルスの感染拡大によって、通院患者は急減。せっかくデイケアの効果が出てきたのに、ケアの中断によって症状が進行しかねない人も増え始めた。
そこで朝田教授は「テレワーク」ならぬ「テレケア」を発案し、日ごろのメニューをネットを通じて配信することで患者に引き続きサービスを受けてもらえないかと考えた。元々、両クリニック間では相互にネットを活用した遠隔ケアをしており、ノウハウはあったという。
メニューの配信は毎日30分。パーソナリティーが生番組を進行し、患者は自宅でパソコンやタブレット、スマートホンで配信を受ける。曜日によってメニューが異なり、例えば音楽では、同時に複数の曲を混ぜて流し、それぞれの曲名を聞き分けてもらったり、講師と複数の患者が一緒に歌ったりしている。また、自分の描いた絵などをメールやFAXでクリニックに送信すると、作品はボードに張り出され、講師は画面を通じて講評をする。インターネットの特性を生かした「双方向性」と、体操系だけでない芸術系を含めた多彩なプログラムが特徴だ。朝田教授は「画像配信による芸術系のケアは全国初ではないか」と言う。
クリニックでは、「どこでもデイケア」を新型コロナウイルスの感染終息後も続けることを模索している。日頃のデイケアは医療保険の適用対象なのに対し、遠隔なら保険外となる。当面は利用者に自己負担を求めないものの、今後は有料化も含めて検討する。
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