2022/02/17(木) 18:06
吉田 哲
吉田 哲 (ヨシダ サトル)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。
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ハイブリッド戦」という言葉があります。「ハイブリッド」は、複数の仕組みを組み合わせたもの、という意味です。筆者の手元にある1990年に出た辞書には「ハイブリッド」の記載はありませんでした。古くから使われていた言葉ではなく、比較的、新しい言葉だと言えます。
先月、米国政府は、ロシアが映像を作成したと報じました。その映像には、ウクライナ軍が国境を超えてロシアを攻撃し、ロシア側で民間人の死傷者が出ている模様が含まれていた、とのことでした。
この映像について、米国政府は、ロシア国民の反ウクライナ感情をあおる宣伝活動(プロパガンダ)だとの認識を示しました。
先月、米国政府は、ロシアが映像を作成したと報じました。その映像には、ウクライナ軍が国境を超えてロシアを攻撃し、ロシア側で民間人の死傷者が出ている模様が含まれていた、とのことでした。
この映像について、米国政府は、ロシア国民の反ウクライナ感情をあおる宣伝活動(プロパガンダ)だとの認識を示しました。
映像の性質から、ロシアによる「ハイブリッド戦」の一つだと言えそうです。(ロシアがウクライナに侵攻するきっかけをつくるための自作自演の映像)
「ハイブリッド戦」は、「見えにくいリスク」「ステルスリスク」を生じさせる、やっかいな存在だと、筆者は考えています。
「ハイブリッド戦」は、「見えにくいリスク」「ステルスリスク」を生じさせる、やっかいな存在だと、筆者は考えています。
実は「ハイブリッド戦」という言葉は、「防衛白書(日本の防衛の現状、課題、取り組みなどが書かれている。毎年刊行)」でも大きく取り上げられています。(防衛白書では「ハイブリッド戦」と記載され、戦い方の一つとして述べられています。いくつかの報道では「ハイブリッド戦争」とされ、戦いそのものを指している場合があり、区別が必要です)
防衛白書は同省のウェブサイトで閲覧できます。電子化されているため、キーワード検索ができます。年度を指定した検索もできます。
これによれば「ハイブリッド戦」が初めて防衛白書に登場したのは、2015年度版でした。ロシアによるウクライナに対する現状変更(クリミア併合)への試みが記載されている箇所です。
「(ロシアが)外形上「武力攻撃」と明確には認定しがたい方法で侵害行為を行う「ハイブリッド戦」を展開している」と、今よりも簡易的に記されています。
また、その後の版で「(NATO(北大西洋条約機構)やEU(欧州連合)は、ハイブリッド戦に対応するため)既存の戦略の再検討や新たなコンセプト立案の必要に迫られている」(2016年度版)、「(ハイブリッド戦は)経済、情報作戦、外交などが混合した複雑さを持っている」(2017年度版)、という記載が確認できます。
この点から、2015年度以降、日本政府はハイブリッド戦に対し、複雑なため既存の戦略が通じない、対応には分野・組織を横断した考え方が必要、などの認識を強めたことがうかがえます。
そして、令和2年度以降の防衛白書では、ハイブリッド戦は第1部第1章の1で解説されるようになりました。同白書全体を網羅する重大テーマとなったわけです。
これはハイブリッド戦が、日本を含む世界規模の脅威となり、程度の差はあれども無関係でいられる人がほとんどいなくなったことを示唆していると言えるでしょう。「ハイブリッド戦」は、もはや他人事ではないわけです。
現在、ロシアがウクライナに対して以前と同様、軍事作戦と並行して水面下でハイブリッド戦を用いて主張を強い、それが一因で原油価格が上昇しているとすれば、今、わたしたちは、ハイブリッド戦の影響を受けていることになります。
近年、ハイブリッド戦が世界規模に拡大した背景には、インターネットの拡大、デバイスの高機能化、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の急速な普及、多分野の同時グローバル化、独裁的なリーダーとそれに盲従する市民の誕生などが挙げられます。
インターネットと深く関わりがあることから、誰しも当事者になり得ることや、目に見えにくく、事態が進行していることを認識しにくいことなども、拡大した要因に挙げられるでしょう。
防衛白書は同省のウェブサイトで閲覧できます。電子化されているため、キーワード検索ができます。年度を指定した検索もできます。
これによれば「ハイブリッド戦」が初めて防衛白書に登場したのは、2015年度版でした。ロシアによるウクライナに対する現状変更(クリミア併合)への試みが記載されている箇所です。
「(ロシアが)外形上「武力攻撃」と明確には認定しがたい方法で侵害行為を行う「ハイブリッド戦」を展開している」と、今よりも簡易的に記されています。
また、その後の版で「(NATO(北大西洋条約機構)やEU(欧州連合)は、ハイブリッド戦に対応するため)既存の戦略の再検討や新たなコンセプト立案の必要に迫られている」(2016年度版)、「(ハイブリッド戦は)経済、情報作戦、外交などが混合した複雑さを持っている」(2017年度版)、という記載が確認できます。
この点から、2015年度以降、日本政府はハイブリッド戦に対し、複雑なため既存の戦略が通じない、対応には分野・組織を横断した考え方が必要、などの認識を強めたことがうかがえます。
そして、令和2年度以降の防衛白書では、ハイブリッド戦は第1部第1章の1で解説されるようになりました。同白書全体を網羅する重大テーマとなったわけです。
これはハイブリッド戦が、日本を含む世界規模の脅威となり、程度の差はあれども無関係でいられる人がほとんどいなくなったことを示唆していると言えるでしょう。「ハイブリッド戦」は、もはや他人事ではないわけです。
現在、ロシアがウクライナに対して以前と同様、軍事作戦と並行して水面下でハイブリッド戦を用いて主張を強い、それが一因で原油価格が上昇しているとすれば、今、わたしたちは、ハイブリッド戦の影響を受けていることになります。
近年、ハイブリッド戦が世界規模に拡大した背景には、インターネットの拡大、デバイスの高機能化、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の急速な普及、多分野の同時グローバル化、独裁的なリーダーとそれに盲従する市民の誕生などが挙げられます。
インターネットと深く関わりがあることから、誰しも当事者になり得ることや、目に見えにくく、事態が進行していることを認識しにくいことなども、拡大した要因に挙げられるでしょう。
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