14年くらい前、土地付き中古住宅を買った。
家屋としての価値はなく、土地代だけの価格で。
とは言え、故郷ではない街に、20代後半のボクが17年ローンを組んで家を買うってのは一大決心である。
民間福祉職のボクが貰う給料は、安定こそしてるけど決して高くない。
義父の協力もあってリフォームした家はずっと住むつもりだった。
一生ローンに縛られる様な人生はイヤだ。
ほぼ同い年の家を直しながら大切に長く住めば良い。
そもそもボクはこの街にずっと住むのか?
この仕事は、この職場は一生をかけるだけの価値があるのか?
分からない。
ひとまず17年はこの地で頑張ろう。
そんな風に思っていたし、そんな人生プランだった。
だがしかし!
思い描いた様にいかないのが人生である。
川沿いに建つこの家には足が沢山あるヤツが現れた。
ある夜には、天井からコキータくんの坊主頭に落下して刺す、という事件も起きた。
古い、狭い、暑い、寒い家に対して増していく家族のストレス、不満。
周りが新築していくコトへの羨望。
そんなストレスや羨望が溜まり、溢れ始めたのである。
仕方ないでしょ!
家が狭いんだから!
色々な言い合いの最後にはそんなセリフが飛び交う様になった。
家問題が家族のストレス要因になっていたのである。
いつ家建てるの?
○○さんち家建てるんだって。
○○さんちオシャレでステキだった。
聞き流していた家トークや家質問に応えざるを得なくなった。
むむむー。
イマイチ気が乗らないまま、建て替えに向けて行動するコトに。
そんなテンションの時に、とりあえず話を聞いてみようと思って、一人で入ってみたのが、とある近所の工務店。
元コンビニのその建物に、まさにコンビニに入るような軽い感覚で足を踏み入れた。
そこで迎えてくれたのは、ボクより少し歳上の社長Sさんと感じの良いスタッフさんたち。
簡単に契約しちゃう手軽な客ではありませんよー
そんなオーラを必死に醸し出そうとしながらその場を後にした数日後…
彼らは、ボクの心境や状況を理解した上で、ワクワクするような設計を提案してくれた。
こんな家に住んでみたい。
ボクの中の「家建てたい」スイッチが押され始めたのである。
伝えたいこと、聞きたいこと、してもらいたいこと、家造りとは関係ないこと…とにかく何でも話した。
Sさん達に家を建ててもらいたい。
そう素直に思えた。
設計の正式契約を結ぶ前、ボクは聞いた。
ボクの家を建てたいですか?
こだわり強くちょっと変わったタイプのボクを満足させる家を作りたいかどうか確認したのである。
そりゃ「建てたくない」とは言わないだろうけど、ボクの言いたいコトを理解した上でSさんは「ハイ」と笑顔で答えてくれた。
Sさんが率いるこの工務店を信頼し、ボクの人生をかけようと決めた。
仕事や職場については何年か前に覚悟を決めていた。
今の職場をベースに、傷ついた子ども達のために尽力しよう。
この街で生きよう。
ボクを、ボクの活動を支えてくれている家族を大切にしよう。
天国に旅立った親父の影響もある。
生まれ育った街ではなくて故郷から遠く離れた街で、家を建て、地域や家族に幸せを届けた。
その地で沢山の人に愛された親父。
そんな親父の影響…というか最後の後押となり…
沢山の決心の末、ボクは契約書にサインした。
それから半年程経ち、ほぼ同い歳の家とお別れする日を迎えるコトに。
家族のストレス要因となっていた家だけど、子ども二人にとってはまさに生まれ育った家。
そらネェは全ての部屋にメッセージを残した。
@物で溢れて狭かった居間
@昔ながらの深い湯船
@冬は寒くカビだらけだった浴室と脱衣場
@左官職人の親戚が塗り直してくれた廊下の壁
@客間から初めてそらネェの自室になった部屋
そんな姉を真似して、コキータくんもトイレの扉にメッセージを…
うんちさせてくれてありがとう@トイレ
(笑)
その後、コキータくんは泣きながらお別れした。
そんな二人の姿を見て、ここから失くなるこの家を愛しく思った。
それから二週間後…
そこにあったボクたちの家は…
跡形もなく…
…失くなった。
14年間、ありがとう、さようなら。
つづく…

とは言え、故郷ではない街に、20代後半のボクが17年ローンを組んで家を買うってのは一大決心である。
民間福祉職のボクが貰う給料は、安定こそしてるけど決して高くない。
義父の協力もあってリフォームした家はずっと住むつもりだった。
一生ローンに縛られる様な人生はイヤだ。
ほぼ同い年の家を直しながら大切に長く住めば良い。
そもそもボクはこの街にずっと住むのか?
この仕事は、この職場は一生をかけるだけの価値があるのか?
分からない。
ひとまず17年はこの地で頑張ろう。
そんな風に思っていたし、そんな人生プランだった。
だがしかし!
思い描いた様にいかないのが人生である。

ある夜には、天井からコキータくんの坊主頭に落下して刺す、という事件も起きた。
古い、狭い、暑い、寒い家に対して増していく家族のストレス、不満。
周りが新築していくコトへの羨望。
そんなストレスや羨望が溜まり、溢れ始めたのである。
仕方ないでしょ!
家が狭いんだから!
色々な言い合いの最後にはそんなセリフが飛び交う様になった。
家問題が家族のストレス要因になっていたのである。
いつ家建てるの?
○○さんち家建てるんだって。
○○さんちオシャレでステキだった。
聞き流していた家トークや家質問に応えざるを得なくなった。
むむむー。
イマイチ気が乗らないまま、建て替えに向けて行動するコトに。
そんなテンションの時に、とりあえず話を聞いてみようと思って、一人で入ってみたのが、とある近所の工務店。
元コンビニのその建物に、まさにコンビニに入るような軽い感覚で足を踏み入れた。
そこで迎えてくれたのは、ボクより少し歳上の社長Sさんと感じの良いスタッフさんたち。
簡単に契約しちゃう手軽な客ではありませんよー
そんなオーラを必死に醸し出そうとしながらその場を後にした数日後…
彼らは、ボクの心境や状況を理解した上で、ワクワクするような設計を提案してくれた。
こんな家に住んでみたい。
ボクの中の「家建てたい」スイッチが押され始めたのである。
伝えたいこと、聞きたいこと、してもらいたいこと、家造りとは関係ないこと…とにかく何でも話した。
Sさん達に家を建ててもらいたい。
そう素直に思えた。
設計の正式契約を結ぶ前、ボクは聞いた。
ボクの家を建てたいですか?
こだわり強くちょっと変わったタイプのボクを満足させる家を作りたいかどうか確認したのである。
そりゃ「建てたくない」とは言わないだろうけど、ボクの言いたいコトを理解した上でSさんは「ハイ」と笑顔で答えてくれた。
Sさんが率いるこの工務店を信頼し、ボクの人生をかけようと決めた。
仕事や職場については何年か前に覚悟を決めていた。
今の職場をベースに、傷ついた子ども達のために尽力しよう。
この街で生きよう。
ボクを、ボクの活動を支えてくれている家族を大切にしよう。
天国に旅立った親父の影響もある。
生まれ育った街ではなくて故郷から遠く離れた街で、家を建て、地域や家族に幸せを届けた。
その地で沢山の人に愛された親父。
そんな親父の影響…というか最後の後押となり…
沢山の決心の末、ボクは契約書にサインした。
それから半年程経ち、ほぼ同い歳の家とお別れする日を迎えるコトに。

そらネェは全ての部屋にメッセージを残した。





そんな姉を真似して、コキータくんもトイレの扉にメッセージを…

(笑)
その後、コキータくんは泣きながらお別れした。






