中国国籍の方の生活保護集団申請について
2011年4月26日
ページ番号:86531
本市では、生活保護行政に対する市民の皆様の信頼を得るため、積極的に生活保護の適正化に向け取組みを進めています。
中国国籍の方の生活保護集団申請
この度、中国国籍の方が入国し、外国人登録が認められた直後に生活保護申請を集団で行うという事例が発生しました。
所定の手続きを経て入国し、定住が認められた外国人については、国の通知により、生活保護法を準用する制度になっています。
当初の段階では、すでに入国管理局が入国を許可し、形式的に要件が整っている以上、保護決定をせざるを得ない状況にあると考えられたことから、本市としては、申請のあった事案について、保護決定を行いました。
しかしながら、本市としては、次の「基本的認識」に示すとおり、入国管理法の運用や生活保護制度の準用に問題があるのではないかとの認識から、入国管理局他、関係先に対して申し入れ等を行うとともに、同様の生活保護の申請は受付を保留し、厳正な対応を行っていくこととしました。また、今回の事実を平成22年6月29日に公表し、問題提起を行いました。
基本的認識
・入国管理法では「生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」は入国を拒否することとなっているにも関わらず、今回のケースでは日本に入国してすぐ生活保護を申請している。このことから、法の趣旨を大きく逸脱した、在留資格の審査がなされている可能性がある。
・厚生労働省の通知では、形式的に在留資格を得ているだけで、生活保護制度を準用することになっている。
・結果的に、本市に何の裁量権もなく、生活保護法を適用しなければならないというのでは、市民の理解は得られにくく、また、4分の1の財政負担を余儀なくされる大阪市としても納得できるものではない。
・人道上の観点から、中国残留邦人の子孫の方たちの処遇をどう考えるのかという問題は国の責任において、別の制度、施策を設けて対応すべきものであり、生活保護の準用の是非という観点だけで本市に判断を委ねるのは大きな問題である。
その結果、平成22年7月21日、厚生労働省より今回の件について、身元保証人による保証の実態がないなど、結果的に生活保護目的の入国とみなさざるを得ない場合は、生活保護を準用しない旨の回答を受けました。
この厚生労働省の回答を受け、現在の状況では、生活保護を準用することはできないと判断し、平成22年8月以降の保護費の支給を保留するなどの措置を取りました。
その後、平成22年9月10日までに、今回集団で申請を行った16世帯46人全員から生活保護の辞退および申請の取り下げがありました。
しかし、すでに受給済みの方について保護決定を過去に遡って取り消すのかどうかなどの問題も残っていましたし、いったん生活保護を辞退することによって、「国または地方公共団体に負担をかけない」こととし、一定の期間が経過した後に再申請することも懸念されました。
そのため大阪市としては、入国管理局の再調査の結果に関する見解や、関係資料をもらったうえで最終的な意思決定を行うこととしました。
その後、大阪入局管理局から、平成23年4月19日になって、この方々の在留資格の更新申請にあたっては、これまでの「定住者」資格ではなく「特定活動」資格に限って許可し、生活保護準用の対象とはしない方針であるとの説明がありました。
一方、厚生労働省の通知に基づいて大阪市が平成22年7月23日に照会した「入国在留中の一切の経費を支弁することができることを証する文書」等については明確な回答がありませんでした。
以上の経過を踏まえ、大阪市では、平成23年4月26日に開催した第18回「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」委員会において、次のとおり最終的な方針を決定しました。
大阪市としての対応
・大阪入国管理局から、入国時の雇用予定先について、入管法上の不実記載があったとの事実を背景として、在留資格の更新にあたって、「特定活動」に資格の変更を行い、生活保護準用の対象としない方針であるという申し出があった。
・平成22 年7 月21 日の厚生労働省の通知における「入国在留中の一切の経費を支弁することができることを証する文書」等について、平成22 年7 月23 日に大阪入国管理局に照会を行い、身元保証人についての「身元保証書」のみを得たが、身元保証人が存することは確認できるものの、46 人の身元保証人が2 名であり、対象者に対して事実上生活費の支援を行った形跡は認められない。
・また、大阪市の調査では、上陸から生活保護相談までの日数が平均9 日と非常に短く、提出された「資産申告書」には預貯金等がすべてなしと記載されていた。また、「扶養義務者申告書」には、仕送りなどの援助ができる親族の記載はなかった。さらに、保護申請書の申請理由が「仕事がないから生活に困窮する」との記載であった。
・以上のことから総合的に判断して、今回の対象者は、生活保護目的の入国と見なさざるを得ず、本来、法の準用の対象ではないと認められるため、生活保護法の準用を取消し、支給した保護費の返還を求めるものとする。
なお、大阪市では、平成22年8月31日の第10回生活保護行政特別調査プロジェクトチームで、過去に今回と同様のケースがなかったか調べるため、平成17年度から平成21年度の5年間に、外国籍の方が入国から3ヶ月以内に生活保護を申請した事案について調査を行うことを決定し、現在、調査を進めています。(中間報告を第12回、第14回、第18回のプロジェクトチームで発表済み)
その後の国の対応
平成23年8月17日付で、厚生労働省より「外国人からの生活保護の申請に関する取扱いについて」が各自治体あてに通知されました。入国後間もない外国人から生活保護の申請があった場合、生活保護の実施機関は、申請者に対して入国管理局へ提出した資料(入国在留中の一切の経費を支弁することができることを証する文書等)の提出を求め、申請者が理由なく提出を拒む場合は生活保護の申請を却下できるという内容です。
また、厚生労働省の通知に先立ち、法務省からも各地方入国管理局に対して、入国を求める外国人が「生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」でないかを一層厳正に審査するよう通知が出されています。
今回の件に関して、大阪市が事実を公表し、国に問題提起したことにより、外国人への生活保護の準用だけでなく、国の入国管理の厳正化にもつながったことは、大きな成果です。
大阪市では、今後も、生活保護行政に対する市民の皆様の信頼を得るため、積極的に適正化の取組みを進めていきます。
これまでの経過
平成22年5月20日
区より、集団で中国人が生活保護の相談に来ていると健康福祉局へ報告があった。
・相談に来たのは、10世帯で25名。
・いずれも入国許可の関係書類は持っており、外国人登録はこれから行う。
・加えて、まだ中国に関係者で入国許可が出ているものが14名いるという話であった。
・マンションの1室に全員でいるとのことである。
・不動産業者が付き添って申請に来ている。
平成22年5月24日
中国人より、区へ申請書が提出され、区から健康福祉局へ問い合わせがあった。
健康福祉局からは、この時点では、在留資格が生活保護の準用可能な資格であり、個別に要保護状態と判断されたものは保護せざるを得ないのではないかと説明を行うとともに、かなりの人数が申請を行っているので、家系図などを確認し、詳細を報告してほしいと区へ依頼。
その後、区では保護開始時に行う家庭訪問や資産調査等の後に、要保護状態と判断せざるを得なかったため、保護開始の決定を行った。
平成22年6月7日
健康福祉局より、弁護士にこの件についてメールで概要と質問事項を送付した。
平成22年6月14日
健康福祉局が弁護士事務所へ行き、相談の回答をいただく。(弁護士によるリーガルチェック)
・すでに入国してしまっている場合、本市のとりうる方策はなく、要保護状態と判断されれば、保護せざるを得ないとの意見であった。
平成22年6月24日
健康福祉局から入国管理局に対し、申し入れ。
・ 入国管理法では、「生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」は上陸を拒否するとなっており、入国時に生活の基盤を確認することとなっている。
・今回のように入国後、すぐに生活保護を申請したケースは、その生活の基盤の前提を再度、厳格に審査すべきではないか。
平成22月6月29日
厚生労働省から報道内容の事実確認があり、情報提供を行うとともに、今後の対応について相談を行った。
平成22年6月30日
入国管理局から健康福祉局へ電話での回答があった。
・今回の在留資格は身分に基づくものであり、入国後の生活の基盤については主要な要素とは考えていない。
・生活の基盤についての申請、今回の場合は身元引受人の扶養が虚偽であったとしても、さかのぼって入国許可を取り消すことは考えていない。
平成22年7月1日
市長が定例記者会見の場で、入国管理局からの見解を報告するとともに、入国管理法で「生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」は上陸を拒否するとあるにもかかわらず、身元引受人等、生活基盤にかかる審査を厳格に行っていないことについて、改めて疑義を呈した。
平成22年7月2日
入国管理局の担当者が健康福祉局を訪問し、回答した。
・法務省と協議のうえ、今回の中国国籍の方の集団申請事案に関する方々の在留資格の調査を改めて行うこととなった。
平成22年7月13日
健康福祉局より厚生労働省に対し、今回のようなケースに対する生活保護の準用の是非について正式に照会した。
平成22年7月14日
入国管理局の担当者が健康福祉局に来訪。
・平成22年7月16日の(生活保護)決定期限については留意しているが、現在、鋭意精査を進めているところであり、まだ結果をお示しする段階にはなく、しばらく時間を要する旨の説明があった。
平成22年7月15日
市長が定例記者会見の場で、保護決定期限が平成22年7月16日に迫っている2世帯6人の対応方針について次のとおり表明した。
・入国管理局の再調査の結論が出ていない段階で軽々に判断できないため、申請者に趣旨を説明し、決定を保留する。
・本市としては、平成22年7月中に整理することが望ましいと考えており、平成22年8月分の保護費の支給手続きの日程を考慮し、原則として平成22年7月23日には最終的な判断をしたい。
平成22年7月21日
平成22年7月13日の本市からの照会に対して、厚生労働省より文書回答(全文は第9回「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」委員会の追加会議資料)があった。内容は次のとおり。
・生活保護制度における外国籍を有する方の取り扱いについては、厚生労働省通知のとおり取り扱われるべきだが、「ただし、当該外国籍を有する方について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第三の定住者の項に掲げる入国在留中の一切の経費を支弁することができることを証する文書、当該外国人以外の者が経費を支弁する場合にはその収入を証する文書、本邦に居住する身元保証人の身元保証書その他参考となるべき資料に照らし、入国在留中の滞在費についてこれら資料に記載された実態がない、又は身元保証人による保証の実態がない等、生活保護の受給を目的とした入国であることが明らかである場合(種々の事情から、結果的に生活保護の受給を目的として入国したと見なさざるを得ない場合も含む。)は、この限りではない。」
平成22年7月22日
生活保護行政特別調査プロジェクトチームの第9回委員会の場で、厚生労働省からの回答の報告と本市の対応方針について議論があり、本市の今後の取り扱いを次のとおり確認した。
・今回のケースについては、入国直後に生活保護を申請しており、現に、身元保証人による保証の実態がないことは明白であることから、基本的に生活保護法は準用できないと考える。
・しかしながら、厚生労働省回答の入国審査関係書類等を改めて入国管理局に照会するとともに、入国管理局の入国審査にかかる再調査結果を待ち、本市として最終的に判断を下すこととする。
・生活保護を申請中の人については、現時点では、決定を保留する。
・現在、生活保護を認定している人に対する8月分の生活保護費の支給は保留する。
平成22年7月23日
市長が定例記者会見の場で、厚生労働省からの回答を踏まえ、プロジェクトチームの第9回委員会で確認した本市の今後の取扱い等について報告するとともに、人道上の観点から、中国残留邦人の子孫の方たちの処遇をどう考えるのかという問題は、国の責任において、別の制度・施策できちんと対応すべきものであるとの認識を改めて示した。
平成22年7月21日の厚生労働省の回答における「入国在留中の一切の経費を支弁することができることを証する文書」等について、大阪入国管理局に照会を行った。
平成22年8月4日
市長が、厚生労働省及び法務省に対し、中国残留邦人の生活保護申請に関する取り扱い並びに入国審査についての要望を行いました。要望の趣旨は次のとおり。
(厚生労働省)
「中国残留邦人の生活保護申請に関する取り扱いについて」
1.中国残留邦人の2世、3世に対する支援のあり方について
2.今回の事案に対する人道的観点からの配慮
3.生活保護の準用に関する全国的な取り扱い
(法務省)
「入国審査について」
1.中国残留邦人の2世、3世に対する支援のあり方に関する方針の策定
2.入国管理法の趣旨を踏まえた厳格な運用の徹底
≫要望の詳細についてはこちら
平成22年8月5日
市長が定例記者会見の場で、平成22年8月4日の厚生労働省及び法務省に対する要望について報告した。
平成22年8月25日
平成22年8月25日の時点で大阪入国管理局より再調査に関する回答がないので、引き続き、平成22年9月分の生活保護費の支給及び申請中の生活保護の決定を保留した。
平成22年8月31日
生活保護行政特別調査プロジェクトチームの第10回委員会の場で、平成17年度から平成21年度の5年間に、入国から3ヶ月以内に生活保護を申請した外国籍の生活保護受給者について、今回のケースと同様の事例がなかったか調査を行うことを決定した。
平成22年9月8日
平成22年6、7月分の生活保護費を支給したが、平成22年8月分以降は保留していた6世帯15人から、辞退届けの提出があった。
平成22年9月10日
保護決定を保留していた1世帯2人から、申請の取り下げがあった。これにより、今回集団で申請を行った16世帯46人全てが辞退および取り下げとなった。
現状(平成22年9月10日現在) 当初 辞退・取り下げ 現在
世帯数 人数 世帯数 人数 世帯数 人数
6、7月分の生活保護費を支給したが、8月分は保留している者 10 26 10 26 0 0
生活保護を決定したが、生活保護費の支給は保留した者 3 6 3 6 0 0
生活保護の申請はあったが、未決定の者 3 14 3 14 0 0
計 16 46 16 46 0 0
平成22年9月21日
入国管理局の担当者が健康福祉局を訪問し、次の趣旨の説明を行った。
・今回入国した全ての中国国籍の方について、在留資格の取消しについて定める「出入国管理及び難民認定法第22条」に基づき、意見聴取の手続きを開始する。
・意見聴取に際しては、あらかじめ期日、場所等を指定し、出頭を求めることとなるが、本日以降、通知書を送付する予定。
・具体的な日程は定まっていないが、全ての聴取を終えた後、大阪入国管理局の見解を取りまとめ、法務省とも協議し、大阪市に対して説明をする。
平成22年10月19日
第12回「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」委員会において、平成17年度から平成21年度の5年間に、入国から3ヶ月以内に生活保護を申請した外国籍の生活保護受給者に関する調査の状況(中間報告)を発表した。
平成22年12月20日
第14回「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」委員会において、平成17年度から平成21年度の5年間に、入国から3ヶ月以内に生活保護を申請した外国籍の生活保護受給者に関する調査の状況(2回目の中間報告)を発表した。
平成23年4月19日
入国管理局の担当者が健康福祉局を訪問し、平成22年9月21日に説明のあった、在留資格の取消しについて定める「出入国管理及び難民認定法第22条」に基づく意見聴取手続きの結果について、次の趣旨の説明を行った。
・過去に遡っての在留資格の取り消しは行わない。
・在留資格の更新申請にあたって、これまでの「定住者」資格ではなく「特定活動」資格に限って許可し、生活保護法準用の対象とはしない方針とした。
・入国時の在留許可に何らかの瑕疵があり、本来であれば、在留許可が認められるべきものではなかった、という考え方には立っていない。
翌日に、入国管理局より「雇用予定先となっていたところに、一人も雇用の実態がなく、結果として、入管法上の不実記載に該当する事実が認められている」との補足説明があった。
なお、平成22年7月23日付で大阪市から入国管理局に照会した文書について、平成23年4月26日時点で「身元保証書」以外の回答はない。
平成23年4月26日
第18回「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」委員会において、大阪市の調査結果も踏まえ総合的に判断を行い、「今回の対象者は、生活保護目的の入国と見なさざるを得ず、本来、法の準用の対象ではないと認められるため、生活保護法の準用を取消し、支給した保護費の返還を求めるものとする」という大阪市の方針を決定した。
生活保護特別調査プロジェクトチームの会議内容はこちらのページからご覧いただけます。別ウィンドウで開く
国会国立図書館が保存したページです。ページ右上にある「保存日」を変更するとさらに古いページをご覧いただけます。別ウィンドウで開く
探している情報が見つからない
情報が見つからないときは
このページの作成者・問合せ先
大阪市 福祉局生活福祉部保護課適正化グループ
住所:〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所2階)
電話:06-6208-8022
ファックス:06-6202-0990
メール送信フォーム