田舎 山口「つけびの村」事件

2019年10月26日 | 事件


山口「つけびの村」事件、噂話の数々が人々を殺したか

10/21(月) 11:00配信

NEWS ポストセブン
山口「つけびの村」事件、噂話の数々が人々を殺したか

この張り紙は大きな話題になった(時事通信フォト)

 6年前に山口県の限界集落で起きた連続殺人放火──人々の記憶からも薄れつつあった事件を取材した『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)という本が、発売早々増刷を重ねる異例のベストセラーとなっている。話題になっているのは、村の住人たちが著者に語る、真偽不明の“噂話”の数々。この不気味な噂こそが、事件の核心なのだという。同書の著者でノンフィクションライターの高橋ユキ氏がレポートする。

【写真】現場検証のため行方不明の男の自宅に入る捜査員

 * * *
 2013年7月21日、山口県周南市の山間部、わずか12人が暮らす集落で突如、2軒の家が燃えた。焼け跡から70代の男女3人が遺体で発見された。さらに翌日昼、同じ集落から80代男性と70代女性がそれぞれ自宅で殺されているのが発見される。5人は全員撲殺されており、連続殺人放火事件とされた。

「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」

 その頃、集落に住むひとりの男が、事件発生当時から姿を消していた。これは、男の家のガラス窓に貼られていた自筆の川柳だ。

「放火をほのめかす貼り紙」
「不審なメッセージ」

 事件発生当初から、メディアはこのように報じ、警察は男の行方を追っていた。

 だがこの貼り紙は、事件に関する男の決意表明でも、犯行予告でもなかったことが、のちの取材で明らかになる。

◆「犯人は違うと思っている」

 事件発生数日後にその川柳の作者、保見光成(69)は山中に潜伏しているところを機動隊員に発見され、逮捕に至る。のちに非現住建造物等放火と殺人の罪で起訴され、今年8月に死刑が確定した。私が初めてその集落に取材に訪れたのは、事件から3年半が経とうとする、寒い冬だった。

 半数以上が高齢者のいわゆる限界集落。事件でさらに人口が減り、数えるほどしか人が住んでいない。一軒一軒まわり話を聞くと、こんな声が聞こえてきた。

「うちの後ろに火をつけられたことがある。その2、3日後に貼っちょったね」
「貼り紙はだいぶ前に、あそこの家の風呂が燃えたあとに貼られた」



 事件が起こる前に不審火があり、川柳はその後に貼られたのだという。だが、「思うに、その(不審火の)犯人は違うと思うんや」――皆が口を揃え、こう言うのだった。そのうえ、「何回かあったらしいよ」と、不審火は何度かあったとも。

 多くのメディアは誤解していたが、この川柳は「犯人による犯行声明」ではなかった。ある村人の家で不審火が起こったあとに貼られたものであり、しかもその犯人は保見ではない、というのである。

 こうした情報に触れ、私には“村での噂”をさらに取材したいという気持ちが湧き起こった。その後、周南市を度々訪れた。

 保見は、逮捕後に行なわれた精神鑑定を根拠に、事件当時『妄想性障害』にあったが、完全責任能力を有していたとして、死刑が言い渡されている。

「近隣住民たちが自分の噂や挑発行為、嫌がらせをしていると思い込むようになった」

 判決ではそれらはすべて妄想だと認定された。たしかに、いくら取材を重ねても“挑発行為”や“嫌がらせ”は確認できなかった。むしろ、妄想性障害を発症した保見は、村人たちに「俺の家のものを盗んだだろう」「俺は薬を飲んでいるから人を殺しても死刑にはならない」などと食ってかかるようになり、村人たちを怖がらせていたフシがある。

 ところが“噂”に関しては、保見の妄想ではなく本当に存在した。保見についてはかねて村中で“父親が泥棒だった”と言われていたようだ。

「今なら笑えるものを盗りよったらしいよ。まあ洗濯物とか、カボチャとかやね」
「米も洗濯物も盗られる。盗んで着るんじゃから、すぐわかるよ」

 噂の対象は保見だけではない。わずか12人の集落で、村人全員の噂や悪口が飛び交っていた。

「あいつも泥棒じゃった」
「役場に勤めていた時から嫌われちょった」
「原発に反対しとるくせに、電気をたくさんつけとる」
「偉そうじゃから、話さんほうがええ」

 なかでも村人たちが先の不審火の犯人と名指しする人物は、驚くことに今回の事件の被害者だった。にもかかわらず何人もの村人が、「保見が飼っていた犬や猫をその人が殺した、だから恨まれていたのだ」──次々にそう口にするのだ。

携帯電話も通じず、近代的な娯楽といえばテレビ程度。そんな環境で、村人たちは、保見だけでなくあらゆる噂話に興じていた。

◆「噂話ばっかし、噂話ばっかし」

 集落で“盗人の息子”だと囁かれていた保見は、中学までこの地で育ち、卒業後に上京。左官として働いていたが、40代の頃、両親の面倒を見るためにUターンしてきた。その時に自力で建てた新宅には、カラオケやバーカウンターなどが作られていた。ここで保見は村おこしの意味も込めて『シルバーハウスHOMI』という便利屋をやろうとしていたのだ。

 だが、便利屋は軌道にのらず、開店休業状態に。村に馴染めず、次第に集落のもやい仕事にも参加しなくなり、回覧板を受け取ることもなくなった。両親が亡くなったあとは完全に孤立し、あらゆる噂が蔓延するなか、ネガティブな思い込みをさらに深め、事件は起こった。

「噂話ばっかし、噂話ばっかし。田舎には娯楽はないんだ、田舎には娯楽はないんだ。ただ悪口しかない」

 事件後に山中から発見されたICレコーダーにこう吹き込んでいた保見は、広島拘置所で接見した私に、「村人に犬猫を殺された」といった噂話を繰り返し語った。

 事実として保見が5人を殺したことは間違いない。しかし、噂が5人を殺したのか? この問いに対する答えは裁判では結局示されなかった。最高裁では『妄想性障害』という単語すら出てこない。いわば司法は動機を確立することを避けたのだ。

 誰が殺したのかではなく、なぜ事件が起きたのかを知るためには、噂そのものを主人公にするしかない。

【PROFILE】たかはし・ゆき/1974年生まれ。福岡県出身。女性による裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」としてさまざまな裁判傍聴記を発表、その後フリーライターに。主な著書に『木嶋香苗 危険な愛の奥義』『暴走老人・犯罪劇場』など。

※週刊ポスト2019年11月1日号



ひでkad***** | 5日前

保見は殺されかけたし、犬猫は殺されるし、悪口は言われるし、精神がおかしくなってもしょうがない気もする。医療刑務所の方が良いように思うけど。

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K6 | 5日前

母も田舎で噂に苦しんでいた。
半分は世間が狭い故の妄想だったが、半分は本当に噂されているものだった。
他に気が紛れるものがあれば、無視もできるが、それもなく、外に出て新しいコミュニティに入るのも、としをとると億劫になる。この人も若い時出て行ったのは、いい判断だったと思う。でも、時間が経って、もう状況が変わっていると思ったのが失敗。世代交代もなく、人の流入のないところは、価値観も変わりにくい。私は絶対に帰らない。

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guu***** | 4日前

多分、都会とか転勤など人の出入りがある程度ある所にしか住んだ事が無い人は田舎の閉鎖的な雰囲気は理解出来ないでしょうね。

余所者は受け入れない、受け入れられたと思っても些細なきっかけで村八分になる、本当に中学生みたいな嫌がらせが日常的。
元々の住民ですらそうなる事もある。

引退後の余生を田舎で、なんて甘い考えでいると本当にキツイ日々が待ってますよ。
田舎に引っ越すなら、元々そういう目的で造られた場所にするか、何回か足を運んで下調べをした方が良い。

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ovg***** | 4日前

田舎は恐ろしいよ。鵜の目鷹の目で人をみている。姿見られたら次の日には隣の家の人から言われる。家なんかすごく離れているのに、人の顔を知っているのには驚いた。接点ないのに。人の不幸は蜜の味を地でいってる。人の家に上がり込んで何時間も噂という悪口をいう。他人の事知っているわけだわ。高校落ちたら悪口大会。皆知っている。大きい都市なら人の事は、あまり立ち入らないからホットする。人付き合いは六分目がいいよ。詮索大好きな田舎はもうたくさん。

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tak***** | 4日前

都会から定年後に田舎暮らしをなんて考えていい物件があるからとこんな集落に行ったら悲惨な余生になると思う。田舎暮らしは町をあげての別荘地でもない限り余所者は受け入れられないと思う。そもそも歳を取れば取るほど都心の便利さが身に染みる。

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fuk***** | 5日前

保見は年収500万はあったんだから東京に両親を呼べばよかった
過疎化が進む故郷をおれがなんとかしてやるという使命感で帰郷したかもしれないけど過疎化の根本原因は、変化を望まない住民そのものだった
ボタンの掛け違いではないが、双方の考え方が少しづつずれていた
ズレに気が付かないまま時間だけが過ぎ、ひずみになり、溝になった
溝は刺傷事件で決定的な奈落になり、事件は起きた

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han***** | 5日前

広島拘置所で接見した私に、「村人に犬猫を殺された」といった噂話を繰り返し語った。
↑これは噂なのですか?それとも事実なのですか?
何か「噂」に焦点を合わそうとするあまり、事実が見えない記事ですね。
こんなよくわからない記事を書いてもいいの?

何年も村人や拘留中の犯人のところに通いつめて書かれた記事を読んだことがあるけど、そちらはよく検証された記事だと思った。

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jfr***** |4日前

hanさんやsumさんが読まれたのはnoteの「つけびの村」という記事でしょう。
その記事が最近籍化されて、その本の宣伝に書かれたのがこの記事です。
噂が事実か保見死刑囚の妄想かあえて書かず、知りたい人は本を買ってねというわけだけど、なぜか本の宣伝が抜けているから事実が見えない記事になっています。
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sum***** |4日前

私もその記事読んだ覚えがある。

今回の記事は薄っぺらい
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yuz***** |4日前

人の注目を集められるなら、事実なんかどうでもいいのがマスコミだよ。正しさ否定して、今日も明日もフェイクニュース。
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匿名 | 4日前

田舎の人はあったかくて優しいというのは、妄想です。田舎の人は陰湿で無口で、腹の中で何考えているか分からない。そして他人が入ってくると異物のように攻撃する。これが本当の田舎者の姿。

私は逆に、いざとなった時に助け合えるコミュニティ能力がある、都会暮らしの人のほうがずっと根は優しいと思ってます。

これが、田舎を捨てて上京して、田舎に住んでいた年月より東京に住んでいる年月のほうが長くなった私の正直な感想です。

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cho***** | 4日前

田舎といっても色々あるわな。
閉鎖的な田舎は人口が減っても何もしようとしないところだと思う。
うちは田舎だが移住者にはオープンだし、何とか住民の流出を防ごうと色々がんばっている。
一方、山を越えた地区は何もしていないし、人口が減ることに無関心。
そういうところは移住には適さない閉鎖的な田舎なんだと思う。

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mar***** | 4日前

自分も田舎に住んでるが

田舎者の差別意識は
都会人より強く感じる。


それから
◯◯さんが◯◯スーパーで
買い物カゴにどんな商品を入れてたとか。

わざわざ
他人のそういう事まで
話のネタにするような所です。


プライバシーなんてほとんどありません。




消火器 | 4日前

このような例は実際に存在します。千葉県のとある町でもあります。私も変な噂を流され庭に育ててはいけない植物を育てているそうだと疑われ、実際に警察が来たりもありました。町の集まりにも声がかかったので支度していけば、お宅はよそ者だから来なくていいとか。罪にならず、のうのうと生きてることにさえ私からしたら強い怨みなど普通にあります近年では村八分くらいがちょうどよく、関わらない楽さを知りました

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mou***** | 4日前

農機具壊された、村の人間にケガさせられたかつをに同情した覚えがあるがなんで触れてないんだ?
ケガさせられたのに大したことないような事言ってた老婆にムカついた記憶もあるけど?

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sak***** |4日前

酒の席で刺された、って驚愕の出来事あったはず
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agi***** |12時間前

本当に、変な村だと思いました。
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uvz***** |1日前

老婆は笑っていたよ。
酒の席ではよくあること、だったかな?
そんな刺すとかじゃなく刃先がチョンと当たった程度、とかなんとか。
田舎の酒の席は刃物を持ち込むのか。
あの薄ら笑いの老婆にも恐怖を感じた。
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やまとしずく | 5日前

この保見って人、死刑にしたらダメだろ。
それこそ迷宮入りする。
厄介なのは、この人が統合失調症ってところか。

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h_m***** | 4日前

田舎っていうのは地元生まれ・地元育ち・地元大好きな人間が
先祖代々議員や公務員になってその土地を牛耳ってるから
自分達の価値観がおかしいことも、なんで人が出て行くのかもわからない。どんなに異常でも自分達には住み心地がいい土地だから。

トンチンカンな過疎化対策をしていても気付かない。
(若者に来てほしいのに年寄りのための街づくりやイベントしかしない等)

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返信1
rsf***** | 3日前

田舎は会合だの役員だので町や近所との接触がかなり多い。人間付き合いが苦手で億劫な人が田舎に住むにはそういう所を覚悟した方が良い。意外と金も掛かるし、みんなが良い人とは限らない。移住ブームは良いけれど田舎の悪い面ももっと見るべき。自分は人も町も都会の方が住みやすかった。

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hos***** | 4日前

名張毒ぶどう酒事件も全く同じ構図でしょうね。
真犯人は不明ですが、美男子だった奥西氏を周りが嫉妬し、彼を犯人に仕立てておけば様々な面でその後の村の都合が良かったのでしょう。
田舎すぎる田舎には法すら凌駕する湿った因習があり危険です。

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kee***** | 4日前

この村今でも噂話で成り立ってるんだろうな

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返信2
riv***** | 4日前

山口だけに限らず、中国地方の山間部の田舎は恐ろしいくらいに閉鎖的だからなぁ。子供の頃は気づかなかったけど十数年間大阪で暮らして広島に帰ってみるとこんなにも排他的な街だったのかと驚かされる。島の方とかに行くとまただいぶ違う感じなんだけどね。八つ墓村のモデルになった岡山・津山の30人殺しも結局は中国地方特有の強い村八分精神が生んだ悲劇だったもんね。




cha***** | 4日前

逮捕された保見さんが可哀想すぎます。
彼は、両親の面倒を見るため戻ってきたし、村起こしをしようとその地に貢献しようとしたし、噂話しに翻弄され、犬や猫も殺され。
あまりにも環境がひどすぎませんか?
人を病むまでの噂 = いじめがあったってことですよ。
保見さんは最初、誰よりもまともで、逆に周りの田舎者たちが低次元で頭が悪く、新しいものを受け入れることが出来ない頑固者集団。の、くせに小心者だから、噂話しで仲間を募る。
周りも罪に問われてもいいのでは?

無差別殺人や私利私欲での殺人、レイプではないです。
今はそっちの方が刑が軽いと思う。
こいつらは、出てきたら怖いから一生刑務所にいろよ!って思うけど保見さんは怖く感じません。
彼の刑が軽くなることを信じ祈ります。

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水虫戦隊カユインジャー | 4日前

犯人が一番悪いのは言うまでもないが、ここの集落の連中もとてもタチが悪い。
どっちもどっちという事だ。

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xp1***** | 4日前

田舎にジブリの世界が広がっていると思ってる人間が一定数いるけど、完全な誤りです。あの光景に住んでいるのは大体とんでもなく陰湿でしつこく、分かり合えない人たちです。
私が住んでるのは東海地方の人口15万人都市ですが、合併した端っこの方はいまだ台風でもない限り雨戸を閉めて眠ると「近所を泥棒扱いしている。変わっている。何だあの一家は?」と言われ、根も葉もない噂を延々と流し続けられます。
さらにその噂に尾ひれがついてそれが事実として流通するようになるから恐ろしい。狂っているけど、噂が事実がないのも知っているけど面白半分でそれを流し続ける近所の人間たちがいる。
この事件のように暴れれば何とかなるのか?というとそうではなく、加害側の村人は自分たちの非を棚に上げてまた噂を流し続ける
どこが頭でどこがしっぽか分からないのが田舎
村八分に対する地域住民へのきびしい罰則は必要だと思います

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quark***** | 4日前

親の実家が似たようなド田舎だが、都会の人間が田舎に憧れる気持ちがサッパリ分からない。

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hon***** | 4日前

田舎暮らしがほどほどに好きな人でも、この人の気持ちはわかると思うし、田舎暮らしを他人に強く勧めないと思う。

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yok***** | 3日前

この事件もっと掘り下げないといけないと思う。
相当な嫌がらせもされているし
前にルポ読んだけど陰湿に延々と続くイジメに
背筋が冷たくなった。
この人は、情状を汲んであげたくなる部分が多い。

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ume***** | 4日前

これがど田舎の実情ですよ。高齢者の皆さん、理解できてますか?

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shi***** | 4日前

何故か田舎の集落は変にプライド高くて噂話程度でも、これ見よがしに現実的な話をする人がいる。
余所者が入るのが嫌なら独立国宣言でもして、勝手に自国運営してりゃなぁ。

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bel***** | 4日前

自分は田舎生まれ田舎育ちで数年間、仕事の関係で都会で暮らしたことがある。いい意味で、都会のあの無関心が気持ち良かったなあ

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jun***** | 4日前

田舎は怖いよ。
一皮剥けばね。
無論良いところもあるよ。
環境に馴染むことが出来ればの話だけど…



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