「不法就労する外国人」激増させた日本の大失態

2020年06月14日 | 政治社会問題
「不法就労する外国人」激増させた日本の大失態

6/10(水) 5:35配信
東洋経済オンライン

近年、「外国人労働者の不法就労」が急増する理由とは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

コロナショックは全国の飲食店に甚大な被害を与えた。また“ステイホーム”中の物流を支えた運送業者も人手不足で疲弊しきった状態だ。その裏で、国策により、飲食店や運送業者に追い打ちをかけるような施策が実施されているのをご存じだろうか。何と、ある日突然、国から300万円の納付を求められるのだ。その原因は、さまざまな業界にはびこる“制度疲労”にあった。

【写真】出来の悪い偽造カード

■「技能実習生の失踪」という日本社会の闇

 現在、日本の産業の多くは、少子高齢化による深刻な人手不足に陥っている。これが海外――おもに発展途上国からの「留学生」と「技能実習生」によりまかなわれてきたことはなかば常識と言っていい。

 しかし話を少し巻き戻すと「留学生」「技能実習生」という呼び方に違和感はないだろうか?  彼、彼女らは実質的には労働力である場合が多い。なのに、日本で働く時は「留学生」「技能実習生」という立場でなければ在留許可を得られない。

 このズレの原因は、日本の入管法(出入国管理及び難民認定法)にあった。この法は“専門的知識、技術的知識を持つ外国人材だけを専門的な職業で受け入れる”と定めている。逆に言えば、法は“肉体労働や単純労働とみなされる職種では外国人を受け入れない”と言っているのだ。

 実質的に労働力は足りない、しかし肉体労働や単純労働の現場では外国人を雇用できない。ならば留学生、もしくは“日本の国際貢献として発展途上国の若者に農業や漁業や機械加工を教える”という大義名分の元に与えられる「技能実習生」という資格で来日してもらい、現実的には働いてもらおう、というわけである。

 これぞ「建前」だと感じないだろうか。そして国家は、この「建前」による弊害をすべて、貴重な労働力であるはずの外国人の方、さらには労働力不足に悩む現場に押しつけてきた。

 前提を整理したい。日本学生支援機構の発表によると、2019年5月1日時点で留学生の数は31万2214人。ちなみにこの層は語学力も高いためコンビニなどで働くことが多い(そう、コンビニで複雑なオペレーションをこなせる外国人の方たちは“労働力”としての価値が非常に高い方たちなのだ)。次に厚生労働省の発表によると、2019年10月末時点で、技能実習生は38万3978人いる。

 では、留学生や技能実習生は「建前」によってどう苦しんでいるのか。


まず、個人では日本の複雑な制度に対応できず、多くが現地のエージェントに高額な料金を支払って在留許可を取得することになる。さらに、留学生は「就労時間は週に28時間まで(夏休みなどは1日8時間まで拡大される)」という制約を課され、技能実習生は、実質、来日後に実習先を変えることはほぼ不可能、という状況に置かれる。

 実習先が倒産した場合などに、複雑な手続きを経れば実習先を変えることはできるが、実質的には、来日後、どれだけハードな労働を課されても“転職”は不可能だ。

■偽造カードのブラックマーケット

 もし、こうした状況に直面したら、どうするのか?  話すのは、外国人労働問題に詳しい、ワンチェック株式会社の山田貴裕社長だ。

 「留学生は偽名を使って2つ目のアルバイト先を探します。コンプライアンスが厳しいアルバイト先では本名で働き、地場の家族経営のような建築業者では偽名で働くのです」

 より深刻なのは技能実習生だ。

 「こちらは、年間なんと3%もの方が失踪します。失踪の理由は“労働が厳しすぎる”“もっと給与がいい仕事に誘われる”などさまざまです。38万人ですから、約1万人もいなくなっています。厳しい条件で働く技能実習生をそそのかし、別の会社に“売る”ブラックマーケットも存在するんですよ。

 さらには、これらの外国人が身分を偽れるよう、ニセの在留者カードを製造・販売するマーケットまで形成されています。私はカードの製造元にも行きました。1枚2万円程度で取引されており、非常によくできています」

 ちなみに「ワンチェック」は偽造カードを見抜く機械を販売している企業。山田氏いわく「ニセのカードをつくる側も必死で、ホログラムまで精巧に再現されていて目視ではまずわかりません」という。

 要するに、肉体労働を行う外国人は入国できない、とする「建前」のせいで、エージェント(中には詐欺同然の手口で途上国の若者を日本に送り込む業者もある)、さらにはブラックマーケットの人間がトクをし、そのツケは現場の留学生、技能実習生に押しつけられてきたのだ。


■「知らなかったでは済まない」罰金300万円

 この状態をクリーンにすべく国は動いた。しかし、今度はこのツケを雇用する側に払わせようとしている。

 2019年4月1日、入国管理局は「出入国在留管理庁」へと格上げされた。その背景には、五輪開催の年から2025年の万博まで海外からの入出国が増え、国内の労働者も今より足りなくなる、という事情があり、組織は人数、予算共に大幅に拡充された。

 そして、拡充された組織は「特定技能」と呼ばれる在留資格をスタートさせた。簡単に言えば、介護、建設、漁業など14の業種で、幅広く外国の人材を受け入れていく、と決めたのだ。

 ところが、これが「滑った」。さらには暴走した。

 まず、外国人が集まらない。5年で最大34万5150人の受け入れを目指すとしているが、2019年4月の制度開始から半年後、ビザが交付されたのはたった732人という滑りっぷりだ。この原因を山田氏が話す。

 「途上国のエージェント、さらには日本で働きたいと思う外国人の方への告知がまったく足りていないのです」

 その原因は、政治家のセンセイ方の事情だ。産業界・財界は人手不足に悩み、突き上げを続けていた。一方、政治家は選挙をにらんで強制送還も「国民の血税」、票田、献金の確保のため、急遽この法改正を実現する必要に迫られ、2018年12月8日に法改正を実現し、なんと2019年4月1日にスタートとした。これでは告知の時間もない。

 しかもこの法案の一部を厳格に適用し始めた。入管法には「不法就労助長罪」があり、密入国者・不法残留者など、在留資格を持たない外国人を雇用すると300万円の罰金を科せられる。

 以前は「働きたい」「雇いたい」というニーズの合致があったためあまり問題も起きず、罰金の件数も少なかったが、入国管理局が出入国在留管理庁になると摘発が急増した。

 法律は「知らなかった」では済まない。そしてこれが、コロナショックで大きな被害を被った飲食店や運送業などの現業に追い打ちをかけているのだ。

 ある建設業者の実例だ。出入国在留管理庁の職員がやってきて、外国人労働者全員の在留カードの確認を求められた。建設業者は在留カードを確認して雇ったが、それは例のブラックマーケットでつくられたニセのカードだった。

 山田氏が話すとおりよくできていて、雇用者はカードを偽造と見抜く術はなかった。なのに「法を知らなかったでは済まない」とばかりに300万円もの罰金を科せられるのだ。

 上の建築業者の話だ。

 「偽造のカードがあるなんて知らなかったから悔しいですよ。もし厳格に法を適用するなら“あなたの会社で働いている外国人は大丈夫ですか?”といった告知がほしかったし、偽造を見抜けるツールもほしかった。捕まった子は食事も自宅で一緒にとるような間柄でしたが、強制送還されていきました。私も“何かおかしい”と思いながら罰金を払いました。ちなみに強制送還の“旅費”も国民の税金ですよ」

■今こそ“制度疲労”を正せ

 筆者は考える。この不幸の元はすべて、外国人労働者を奇妙な「建前」で日本に招いたことだ。そもそも2019年に始まった「特定技能」のような制度を実施し、正々堂々とビザを発給していれば、ブラックマーケットも失踪者も生まれず、業者も300万円払わされることもなく、我々の税が浪費されることもなかったのだ。

 現実に即さない法があれば、人が抜け道を探すのは当然だ。倫理的な是非は置き、現実に風俗営業、遊技場の営業など「抜け道」に頼っている産業は多い。今こそ、政治家・官僚は現実に即しさまざまな法を積極的に改正し、細やかに告知する時期ではないか。

 逆に、コロナ禍のさなかには、厚労省、総務省消防庁、国税庁が法を弾力的に運用し、酒造メーカーが「消毒にも使えますよ」と飲用のアルコールを販売している。経産省も持続化給付金を異例の速さで給付した。関係者の努力は高く評価されるべきだ。そしてこれだけのことができるならば、その他の現実にあわない法も続々と改正すればよいはずなのだが……? 

夏目 幸明 :経済ジャーナリスト


abc***** | 4日前

不法就労の人達が働く場所に日本人の働き手がなかなかいないと言うのは、本当に少子高齢化だけが、理由なのだろうか。
今の日本では、多くの労働力を一部の金持ちがひどい搾取をしている。
働いても働いても、そのような一部の金持ちを中心に生活水準だけ上げられてしまっている日本で、しかも何においても同調を要求される日本において、周囲と同じようなスタイルで生活や仕事のできないような給料しかもらえなかったら、働く気も失せるのではないか。
生活水準の低い国の人達は、そちらの国の基準を念頭に働いているから、まだ我慢もできるのではないか。

返信1

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jks***** | 4日前

経団連の圧力によって安倍政権は、粛々と法改正を行い、外国人労働者の受け入れを猛烈に進めてきました。当時から、単純労働者の移民を受け入れているのなんて、全世界を見ても日本だけでした。1年以上定住すれば国際的な基準によればそれはもはや移民です。

外国人労働者を受け入れても、犯罪の増加や貧困、治安維持の費用等公的部門に大きな負担がかかるだけです。

国内での有休労働力の活用から着手するべきだったのに、それをしなかった安倍政権は日本国内の治安の悪化、テロリストの入国、生活保護費を含む社会保障費の支出増加など、どうしてくれるのでしょう。

当時から大変不安に思っていたのですが、単純労働者の外国人受け入れは本当に愚策だったと思います。

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ayu***** | 4日前

技能実習生制度は、元々、小企業を中心に単純労働力を確保する為に開始。しかし、中小企業では、外国人を招く手続きが出来ずに、それらの業務をまとめる協会と招待する実務が技能実習生制度とマッチしているかの確認=実質的な許可を出す監理団体という構造がある。

更に大企業が海外の現地法人の社員を研修の為に招く大企業型。

しかし実態はどうだ?厚生労働省が委託している監理団体のお粗末さ。派遣会社が招待出来ないはずなのに堂々と連れて来て請負なら派遣じゃないという理論で現場で働かせている。

普通にHPにも出ているのに、そこを全く取り締まらない矛盾。協会型も大企業の子会社が協会員になって、実際に実習生を使っている。摘発を真面目にする気は全くないだろう。一度実習先を辞めて、他の会社で偽造カードで働いている以外は。

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ooi***** | 4日前

先日も入管において派遣会社の大規模な不正が発覚した
留学生といっても実際は専門学校と派遣会社が組んだ出稼ぎ労働者で、例えばホテルと牛丼屋の掛け持ちなどで、28時間法なんて機能していない
これに加え、留学生全てに10万支給せよ、と新たに複数の人権団体が発足し利権を分け合う

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sop***** | 4日前

なし崩し的に移民となった人とその子孫との
社会的、文化的対立が深刻化する日は近い。
人を貪ろうとした報いを受けるのが制度を
作った者でなく、子々孫々であることが
悔しい。

返信2

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今昔 | 4日前

「制度疲労」と表現していますが、直接的に問題になっているのは近年になって制定した新法の方ですよね。もちろん旧法の弊害も修正した方が良いのですが、新法に基づき素人目には判別のつかない偽造カードによる不法就労をもって罰金を課すというのは、必要悪を超えているように思います。

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kam***** | 3日前

世の中のバカな母親たちが、大学さえ出れば現場作業しなくていい仕事に就けると勘違いしたから、F級大卒だらけになった。
うちの町にあった名門の工業高校は母親たちの請願運動で普通高校に変わった。だからと言って国公立や一流はおろか二流大学に入るレベルになる訳では無いから、自然、F級に行くことになる。就職にしても、現場作業はないが、暑い時期でも背広を着て外回り営業するような職種しかない。
以前は地域の工業高校として、大手メーカーの現場作業員として採用されていたのに。最近の製造ラインは外より涼しくて快適だ。

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jgp***** | 2日前

ちょっと待て。そもそも就労目的の技能実習生や学生を国内に呼び寄せる企業に問題はないのか。国の政策ではなく、民間に問題はないのか。問題があったから政策が改められたとしても、それ以前に生じた問題は、どう考えても法律違反が原因だぞ。鷹揚経済は話題性だけで公平性に欠ける独りよがりの記事が多くて、信頼感に乏しい。

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cho***** | 3日前

日本語学校に入学してそのままどっか行っちゃう人も多いって聞くし、、。
不法就労で日本に居ついて、その子供がきちんと学校に通うことができず、就職できずギャング化してるという記事も読んだ。
そんな彼らに、警官が職質で失敗すると、人種差別だなんだと訴えられる社会になるのかな。。(あのクルド人がギャングって意味ではないです)

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m | 3日前

だからと言って建て前では移民は日本は認めない方針なんだし厳格に遵守して欲しい。
それとも皆さんが住むところにどんどん外国人コミュニティーが出きるのを正直嬉しいですか?と問いたい。嫌がるでしょ普通の日本人なら。
人手不足は賃金を上げたがらない企業が外国人なら来てくれると見込んでるから一向に日本人の賃金が上がらないんだよ。

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