野口はワイル病の病原体としてのレプトスピラの形態の研究をしており、それを「野口英世はなぜ間違ったのか(5)」に紹介した。
今回の論文「第Ⅵ報 Leptospira icteroides の培養、形態学、毒性及び生物学的特性(1919年5月2日受付)」は黄熱病の病原体としてのレプトスピラの形態学等の研究に関するものである。
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論文の要旨
好気性と嫌気性の両方の微生物、特にスピロヘータに属するものの生育ができるように工夫された方法の採用により、その形態学的特徴からレプトスピラ属に分類されている繊細な微生物の純培養を得ることができた。
黄熱病の11症例のうち3症例において、その微生物は直接培養された。
これらの3株はモルモットで試験したとき特有の症状と傷害を起こすことが分かった。
この微生物は Leptospira icteroides と命名された。 Leptospira icteroides は黄熱病に罹った患者の血液又は臓器懸濁液を接種して感染させたモルモットの血液からも純培養で得られた。
これらの培養液も感受性のある動物で試験したとき、毒性があることが分かった。
その微生物の形態学的特徴といくらかの生物学的特性を詳細に研究した。
その微生物は透照法ではでは見えなく、殆どのアニリン色素で染めるのは難しい。
その微生物は細菌の存在に非常に敏感で、他の細菌が存在する培地中では急速に死滅する。
血清(人、羊、馬、ウサギなど)の存在は、その生育に必要欠くべからざるように見える。
それは約25~26℃の温度で良く増殖する。そして37℃で、より早く増殖する。しかし後者の温度では数週間以内に死滅する。
25℃の好ましい条件と適切な培地中では数ヶ月、毒性を失わず、生残る。
Leptospira icteroides は横分裂により増殖する。
いくつかの株が持っている毒性は、培養液の0.00001ccでモルモットに典型的で致死的な感染を起こすことができる。
モルモット間では Leptospira icteroides に対する感受性にかなりの変動がある。
その微生物は55℃の温度で10分以内に殺される。そして完全な乾燥又は凍結融解によっても死滅する。
胆汁と胆汁酸塩は、ある濃度でその微生物を溶解するがサポニンでは溶解しない。
Leptospira icteroides はBerkefeldフィルターVとNの穴を通り抜ける。
そして、ある条件下で粒子状になる可能性がある。(以上)
野口はワイル病の病原体としてのレプトスピラの形態学的研究で、アメリカ、日本及びヨーロッパ株間には何らの違いも見つからなかったと述べている。しかし、ワイル病病原体のレプトスピラと黄熱病病原体のレプトスピラとの形態学的違いについては全く触れていない。
この時点で野口は同じ形態のレプトスピラがワイル病と黄熱病の両方の病気を起こすと考えていたことになる。
しかし、同じ微生物が二つの病気を起こすことに全く疑問を持たなかったとは考えにくいことから、それを口にできない何らかの事情があったのではないだろうか。
レプトスピラが濾過器を通り抜けることは、私も確認したことがある。レプトスピラの大きさは少なくとも10μはあるが、確かに0.25μのフィルターをすり抜ける。ある時、雑菌の混入した培養液を、このフィルターを通して新しい培地に接種すると、時間はかかったが雑菌の増殖はなくレプトスピラだけが増殖してきた。
また、過酷な培養条件下ではレプトスピラは球状体を形成することは私も確認したことがあるが、当時、野口がその可能性について気がついていたことは、野口の観察力の高さを示すものであろう。
今回の論文「第Ⅵ報 Leptospira icteroides の培養、形態学、毒性及び生物学的特性(1919年5月2日受付)」は黄熱病の病原体としてのレプトスピラの形態学等の研究に関するものである。
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論文の要旨
好気性と嫌気性の両方の微生物、特にスピロヘータに属するものの生育ができるように工夫された方法の採用により、その形態学的特徴からレプトスピラ属に分類されている繊細な微生物の純培養を得ることができた。
黄熱病の11症例のうち3症例において、その微生物は直接培養された。
これらの3株はモルモットで試験したとき特有の症状と傷害を起こすことが分かった。
この微生物は Leptospira icteroides と命名された。 Leptospira icteroides は黄熱病に罹った患者の血液又は臓器懸濁液を接種して感染させたモルモットの血液からも純培養で得られた。
これらの培養液も感受性のある動物で試験したとき、毒性があることが分かった。
その微生物の形態学的特徴といくらかの生物学的特性を詳細に研究した。
その微生物は透照法ではでは見えなく、殆どのアニリン色素で染めるのは難しい。
その微生物は細菌の存在に非常に敏感で、他の細菌が存在する培地中では急速に死滅する。
血清(人、羊、馬、ウサギなど)の存在は、その生育に必要欠くべからざるように見える。
それは約25~26℃の温度で良く増殖する。そして37℃で、より早く増殖する。しかし後者の温度では数週間以内に死滅する。
25℃の好ましい条件と適切な培地中では数ヶ月、毒性を失わず、生残る。
Leptospira icteroides は横分裂により増殖する。
いくつかの株が持っている毒性は、培養液の0.00001ccでモルモットに典型的で致死的な感染を起こすことができる。
モルモット間では Leptospira icteroides に対する感受性にかなりの変動がある。
その微生物は55℃の温度で10分以内に殺される。そして完全な乾燥又は凍結融解によっても死滅する。
胆汁と胆汁酸塩は、ある濃度でその微生物を溶解するがサポニンでは溶解しない。
Leptospira icteroides はBerkefeldフィルターVとNの穴を通り抜ける。
そして、ある条件下で粒子状になる可能性がある。(以上)
野口はワイル病の病原体としてのレプトスピラの形態学的研究で、アメリカ、日本及びヨーロッパ株間には何らの違いも見つからなかったと述べている。しかし、ワイル病病原体のレプトスピラと黄熱病病原体のレプトスピラとの形態学的違いについては全く触れていない。
この時点で野口は同じ形態のレプトスピラがワイル病と黄熱病の両方の病気を起こすと考えていたことになる。
しかし、同じ微生物が二つの病気を起こすことに全く疑問を持たなかったとは考えにくいことから、それを口にできない何らかの事情があったのではないだろうか。
レプトスピラが濾過器を通り抜けることは、私も確認したことがある。レプトスピラの大きさは少なくとも10μはあるが、確かに0.25μのフィルターをすり抜ける。ある時、雑菌の混入した培養液を、このフィルターを通して新しい培地に接種すると、時間はかかったが雑菌の増殖はなくレプトスピラだけが増殖してきた。
また、過酷な培養条件下ではレプトスピラは球状体を形成することは私も確認したことがあるが、当時、野口がその可能性について気がついていたことは、野口の観察力の高さを示すものであろう。